2022年02月16日

読書ファイル2021 その1【哲学・ノンフィクション・歴史】

 困ったとき、迷ったとき、本でなにかが見つかるときがあります。ほんとうにあった話、昔の人の話に勇気をもらったり、励まされたりすることもあります。

『おおきな木』
『The Giving Tree(Bilingual edition)』
『木を植えた男』
『サリバン先生とヘレン ふたりの奇跡の4か月』
『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』

おおきな木The Giving Tree (Bilingual edition)木を植えた男

サリバン先生とヘレン―ふたりの奇跡の4か月ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂


読書探偵の読書ファイル2021

 このコーナーでは、「読書探偵作文コンクール2021」の応募者のみなさんが読んだ本をジャンル別にご紹介します。
 お好みのジャンルのページで、それぞれの本の画像をクリックしてごらんください。
 Amazon.co.jpのサイトで詳しい情報がごらんになれます。
※Amazon.co.jpで現在取扱いのない書籍につきましては、書誌情報を掲載しています。

その1【哲学・ノンフィクション・歴史】
その2【宇宙・科学・さがし絵】
その3【暮らし】
その4【冒険】
その5【ミステリー・ホラー】
その6【昔話・民話・童話】
その7【学校・友情(1)】
その8【学校・友情(2)、家族・きょうだい】
その9【ファンタジー(1)】
その10【ファンタジー(2)】
その11【動物(1)】
その12【動物(2)】
その13【動物(3)】

2022年01月25日

2021年会計報告

2021年1月〜12月の収支報告をいたします。

<収入の部>
 
 前年繰り越し
142,529円
 カンパ金
120,620円
 出版にともなう収益
1,780円
 小計
264,929円
 
 
<支出の部>
 
 企画諸経費
18,135円
 賞品関連経費
75,365円
 通信費、振込手数料等
29,388円
 小計
122,888円
 
 
総計(残高/2021年12月末)
142,041円

※カンパの詳細についてはこちらをご覧ください。
あらためまして、みなさまのご協力に感謝いたします。

2022年01月18日

読書探偵作文コンクール2021 最優秀賞 全文掲載

 最優秀賞を受賞なさった川上莉央さん、波多美理愛さん、棚瀬準三さんの受賞のことばと作品全文をご紹介いたします。
 なお、選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。
読書探偵作文コンクール2021 最終選考結果発表!

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

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◎最優秀賞
川上 莉央さん(小5)

読んだ本――『星の王子さま』 サン=テグジュペリ作 三田誠広訳 講談社
星の王子さま
星の王子さま

【受賞のことば】
 ある日、家にいると、お母さんがにこにこしながら電話をしていました。
そして、
「おめでとう」
と言ってくれました。うれしかったです。
 この作文を書く時は、こんな感じかなというのは分かるけど、その気持ちを言葉にできなくて何度も何度も読み返しました。なので、書けた時は達成感でいっぱいでした。また、このコンクールに応募してみたいと思っています。

【作品】
「かんじんなことは、目では見えない」


 私は小学三年生の時にも『星の王子さま』を読んだことがあります。その時は絵がとてもかわいくて、どんなお話なんだろうと読みすすめましたが、読み終わったあとなんだか変な感じがしたのを覚えています。読んだのにどんなお話かよく分からない、楽しかったとか悲しかったとか、そういう感想も特にない不思議なお話でした。その後は一度も読んでいませんでしたが、私も五年生になったから、少しは分かるかもしれないと思い久しぶりに読んでみました。
 今回読んでみて思ったことは、なにかを好きになること、大切に思う気持ちは、目には見えないけれど、とてもすてきなことなんだよということを、サン=テグジュペリは私達に伝えたいんじゃないかということです。
そして、その気持ちは、すぐに簡単につくられるものではなくて、話をしたり遊んだり、お世話をしたり、時にはケンカしたりしながら、一緒の時間をすごしていくなかで時間をかけて生まれてくるものなんじゃないかということです。その気持ちは人間に対してだけではなく、私が飼っていたペットが他の犬や猫とは全く違う特別な存在であると感じるのも、そこに私の気持ち、想いがあるからだと思います。他の人からみたら、たくさんいる人の中のひとり、たくさんいる動物の中の一匹にすぎなくても、私にとっては大切なかけがえのない存在になる、それが愛するということなんだと思います。うまく説明できないけれど、好きよりはもっと強い、深い気持ちだと感じました。
 その愛する気持ちは、キツネが「自分に《なついて》くれたもののことは、いつまでたっても《なつかしい》はずだ。」と言っているように、姿かたちが変わっても、天国へ行ってしまっても、ずっと忘れることはないのだと思います。
 今回約二年ぶりに『星の王子さま』を読んでも、よくわからなかったことがあります。それは、どうして王子さまは死んでしまったのかということです。しかも自ら毒ヘビにかまれることを望んでいます。キツネの「あんたはあんたの花に《つぐない》をしなければならない……。」という言葉がなんだかとても気になりますが、今の私にはどういうことか理解できませんでした。
 またいつか私は『星の王子さま』を読むと思います。何年後になるかはわかりませんが、王子さまの死について理解できる日がきたらまたこの続きを書きたいと思います。

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◎最優秀賞
波多 美理愛さん(小5)

読んだ本――『木を植えた男』 ジャン・ジオノ作 寺岡襄訳 あすなろ書房
木を植えた男
木を植えた男

【受賞のことば】
 昨年の優秀賞に続き、今年は最優秀賞をいただき、おどろきと喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。この本をきっかけに、こ独ということやもくもくと一つのことを続ける意味について考え、今の自分と向き合うことができました。私は本を読んだり映画のDVDを観たりすることが何よりも大好きです。これからも外国の物語もたくさん読んで、色々なまなざしに出会いたいです。大人になって11才の私をふり返った時、最優秀賞をいただいたことがすてきな思い出として残っているはずです。

【作品】
「心の世界―『木を植えた男』を読んで」


 不毛の地に木を植え続ける。ブフィエの信念だった。私は、このもくもくと、とほうもないことをやり続けながらも、たんたんとしているブフィエのすがたにひかれてしまう。何もできないと悲しむより、何かできることを実行していく、やりぬくしかない、そんな思いにさせられる。
 一人息子をなくしたブフィエは何か世の中の役に立つことがしたいと思い、来る日も来る日も一人で木を植え続けた。第一次世界大戦の時も、第二次世界大戦の時も変わらずに。でもたった一人でどんぐりを植え付けたとしても、見わたす限りのこう野が一体どうなるというのか、私は思わず本に問いかけてしまった。ブフィエは家族を失って、こ独の世界に入ったと思う。もしかしたらその土地は、ブフィエの心の世界だったのかもしれない。あれた心の地に命の種を植えようとしていたのかもしれない。何万本もの木を植えたいという願いの中には、ブフィエの意思だけではなく、そうしなければいられなかった思いもあったのではないだろうか。
 ブフィエは戦争中も木を植え続けた。一人のこ独な老人がせっせと続けた行いが、世界を変えていく。長い年月が過ぎこう野は木でいっぱいの豊かな土地になり、そこでくらす人はみんな幸せになった。一人ができることは限られているかもしれない。でも強い心を持ち続け、こつこつと最後までやり通せば、大きなことができると私の心は勇気づけられた。神のみわざのような行いは、あきっぽい私には想像もつかなかった。私は自分の思いにちゅう実に、そしてそれをやり通すなんてことは全然できない。勉強もピアノも体そうも、自ら進んでやることができない時もある。けれど、この本を読んで考え方が変わった。小さなことを積み上げていけば、いつかは大きなものとなる。ブフィエが不毛の地を木々でいっぱいにすることを思いついたように、私も何かに一生けん命取り組みたい。人の行動は、人の心が作り上げるのだと気づいた。
 ブフィエはいつも一人でこ独に見えた。でも本当にそうだったのだろうか。こ独な心は、だれもがどこかで持っている感情だ。こ独には色々ある。人の中にいてもこ独を感じる時がある。悲しみの中のこ独もある。一人でいるこ独よりも、もっとつらいこ独もある。ブフィエは一人だったが、自分のやっていることに確信を持つことで、むしろこ独ではなかったのだと思う。だから私はこの本を読んでいても、不思議なくらい悲しみを感じることがなく、逆に力強さを感じることができたのだ。
 逆境の中でも立ち向かっていく強い心は、試行さくごのくり返しの中で身に付いていった。失敗してもあきらめずに乗りこえていく力の大きさを知り、私はしばらくこの本からはなれることができなかった。

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◎最優秀賞
棚瀬 準三さん(小4)

読んだ本――『ぼくのあいぼうはカモノハシ』 ミヒャエル・エングラー作 はたさわゆうこ訳 徳間書店
ぼくのあいぼうはカモノハシ
ぼくのあいぼうはカモノハシ

【受賞のことば】
 今年も最優秀賞に選ばれて、びっくりしました!とてもうれしいです。この本を読んで、カモノハシの特徴を調べてみました。調べてみたら、ほにゅう類なのに卵を産んだり、毒があったり、色々面白いことがわかって、しかもそれを作文に生かせたので、よかったと思います。ぼくは生きものが大好きなので、これからも面白い生きものの本をたくさん読みたいです。ありがとうございます。

【作品】
「ぼくらは無二の生きものだ」


 カモノハシ(Platypus)は猫くらいの大きさをした、平らなくちばしが特徴のふしぎな生き物だ。
 ほ乳類なのに卵を産み、くちばしと水かきをもつ。くちばしは、やわらかいかと思えば、電気センサーがついていて、真っ暗な水の中でも魚をしとめてしまう。
 こともあろうに、オスの後ろ足からは毒まで出せてしまうという、まったくもって学者泣かせの生き物だ。
 人間が乱かくしたことが原因で、今では、オーストラリアにしか生息していない。
 
 「キュウウウ」
 主人公のルフスが、かなしそうにないているシドニーと出会ったのは、サッカーの練習試合の後のこと。 シドニーは、人間の言葉がしゃべれる、おしゃべりでとっても変なカモノハシだ。
 「カモノハシは幸運をもたらすといわれています。ぼくがいっしょなら、わるいことは、おこりません」
 なんとあやしい、カモノハシ!
 木にのぼりたいシドニーは、ルフスにつれていってとせがむ。とっても不安そうなルフスにシドニーは、「あぶない? いやいや、ぼくがついてます。カモノハシは木のぼり名人ですよ」「そもそも、コアラに木のぼりを教えたのはカモノハシですよ」なんて、むねをはっておきながら、最終的には、木からおりれなくなり、助けてくれたおとなりのベルガーさんに、「カモノハシもわるくないが、こんど木にのぼるときは、ヤギに教わるといいぞ」なんて、いわれる始末。
 なんとたよりない、カモノハシ!
 シドニーは、「カモノハシは作戦なんて立てませんから」といいつつ、この後もどんどんへんてこな作戦を立てていく。
 例えば、「バスを手に入れましょう」とルフスにいって、いっしょにオーストラリアへ行こうとさそう。
 ぼくが持っているおもちゃそっくりのバスを見て、「よくできた仕組みですね。考えだしたのは、まちがいなく、カモノハシでしょう」といっては、鼻高々。かと思えば、大あわてで走り出し、勝手に危険な行動にでる。
 なんとおっちょこちょいな、カモノハシ!
 そうはいっても、シドニーとルフスの関係は、すごくいい。たったひとりで心細かったシドニーが、ルフスにだかれて、「いい気持ち……あったかくて、オーストラリアにいるみたいだ」と思えたことや、「ぼくが、力になれると思う?」と自信がなかったルフスが、「なれるかどうかじゃないんだ。あなたしか、いないんです!」というシドニーの言葉にハッとして、「まだ子どもだけど、きっと力になれる。いっしょに世界の果てまでだって行けるはずだ」と、勇気がわいてきたところなんか、すごくいい。
 シドニーは、カモノハシについての紹介をする時に、「ほんとうの名まえは、ちょっとちがうんです」「ほんとうは『美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの』といいます」といっていた。おっちょこちょいでたよりないシドニーだったけど、ルフスと出会ってはじめて、真のカモノハシ、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれたんじゃないかな。
 もしかすると、だれもが、自分にぴったりのあいぼうと出会った時に、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれるのかもしれない。
 ぼくも、ルフスとシドニーのような、『ぼくのあいぼうは〇〇』という本が書けるくらいの出会いをして、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になってみたくなった。

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 最優秀賞を受賞なさった3人のかたには、賞状と5000円ぶんの図書カードをお送りします。
 あらためて、おめでとうございます!

2022年01月12日

読書探偵作文コンクール2021 優秀賞・ニャーロウ賞 全文掲載

 優秀賞を受賞なさった中込恵楠さん、杉本善々さん、三原舜一朗さん、ニャーロウ賞を受賞なさった大北隼矢さんの作品全文をご紹介いたします。
 なお、選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。
読書探偵作文コンクール2021 最終選考結果発表!

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。なお、Amazon.co.jpで現在取扱いのない書籍につきましては、「読んだ本」に書誌情報のみを掲載しています。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎優秀賞
中込 恵楠さん(小5)

読んだ本――『ぼくのつくった魔法のくすり』 ロアルド・ダール作 宮下嶺夫訳 評論社
ぼくのつくった魔法のくすり
ぼくのつくった魔法のくすり

【作品】
「ぼくの願うくすり」


「いいきみだ!」
 ジョージの作った薬を飲んで、ひょろひょろと二階建ての家よりも背が高くなったジョージのおばあさんは、家に入ることができなくなった。しかたなく、ねずみたちといっしょに干し草置き場でねることになったグランマのことを、ぼくはそう思った。
 この本の作者はロアルド・ダールだ。以前、『こちらゆかいな窓ふき会社』を読んだ。それは、とても想像をふくらませ、楽しくさせてくれる話だった。だから、『ぼくのつくった魔法のくすり』は飲めば何でも願いがかなう薬だと想像して、読みたくなったのだ。
 主人公は八才のジョージとそのおばあさんのグランマ。グランマはいつも、文句やわがままばかりジョージに言っている人。ぼくは、楽しい話を想像していたのに、ジョージのことがかわいそうになり、グランマが憎らしく思えてきた。そしてぼくは、数年前にある生徒が、先生をこまらせたり、友達にどろだんごを投げていやがらせをしていたことを思いだした。そのことが今でもはっきりと目にやきついている。人をこまらせて平気でいる人や喜んでいる人がいるなんていやだ。その時の気持ちが重なって、ぼくもグランマをこらしめられる薬を作ろうと思ったほどだ。
 この本を読んだ後、ぼくの気持ちにはもやもやが残った。最後にグランマが消えていなくなって良かったと思う気持ちとこれはやりすぎだと思う気持ちがぶつかっていたから。初めは、グランマのことが憎らしく感じていたのに。それから、「パパ」はちっとも悲しくなっていない。「ママ」はしばらくするとおちついた。
 でも、ジョージはどう考えればいいか分からずふるえるような気分だった、と書いてある。すると、この本を読んだあとのぼくの気持ちとジョージの気持ちは近いのではないか。「くすりって人間をよくするはずのものだ」とジョージは考えている。
 ぼくも考えてみた。
 グランマに飲ませる一番いい魔法のくすりってどんなものだろう。
 もしぼくがナンバー5の薬を作るとしたら、グランマが一言も文句が言えない薬を作ろうか。それとも、誰からも好かれるような別の人に生まれかわる薬を作ろうか。でも、グランマはよろこぶだろうか。ぼくもうれしいかな。
 いろいろ考えてみるけれども、やはりぼくの心の中はもやもやしたままだ。
 ジョージの考える「魔法の薬」って作れるものだったのかな。自分の思い通りの薬は作れないのかな。
 だったら誰もが喜ぶ「飲めば何でも願いがかなうくすり」が作れればいいのに。
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◎優秀賞
杉本 善々さん(小4)

読んだ本――『八つの犯罪』 ルブラン作 南洋一郎訳 ポプラ社
八つの犯罪
八つの犯罪

【作品】
「怪盗ルパン『八つの犯罪』を読んで」


 母がぼくと同じ年の頃、怪盗ルパン全集にハマッたと聞きました。さっそく同じシリーズの「怪盗対名探偵」を読んでみたら面白かったので、今回は「八つの犯罪」を選びました。
 表紙の絵を見た印象は、ルパンの髪型や服装が格好良いなということです。また、他の話にも若いきれいな女性が登場するのですが、今回の表紙にも居たので、ルパンは美少女が好きなのかなと思いました。それから、タイトルからは、「ルパンが八つも事件を起こすのか」というイメージを持ちました。
 実際読んでみると、この本ではレニーヌ公爵と名乗っているルパンが、両親を亡くしてつらい目にあっていた美少女オルタンスを助手にして、八つの難事件を解決する話でした。
 まずレニーヌ公爵として美少女オルタンスと出会い、@古塔で白骨を見つけてその犯人をこらしめる話、A無実の人が死刑になりかけたけれど、真犯人を見つけてその死刑を止めさせる話、B密室殺人を解決する話、C映画スターの秘密の恋を助ける話、D実の母が二人いる男の話、E頭文字Hの美少女を狙う殺人魔女の話、F父と息子の保険金さぎの話、Gオルタンスのお母さんの形見を取り返す話、以上八つの物語でした。
 ぼくが感動したのは、最後の事件です。一番目の事件の時に、ルパンと美少女は約束しました。古塔の大時計が三ヶ月後の同じ時刻に鳴るまでに、二人で残り七つの冒険をしようと決めたのです。
 八つ目の話では、オルタンスが一番ほしかった物、母から受けついだ宝石の付いたコルサージュを見事に取り戻しました。それと同時に大時計が鳴ったのです。約束を守った格好良さにしびれました。目的を果たすために自分の乳母を変装させていたと判る場面では、優しさを感じました。
 ルパンは、どれだけピンチでもあわてず、いつも冷静です。本当に頭の良い人だと思います。また、フランス人ですが日本の文化に詳しそうです。オルタンスを正気づかせたときに使ったのはジュウドウ(柔道)の活【ルビ:かつ】、狂女をはね飛ばす時もジュウドウの技を出しました。強くて賢いヒーローです。パリの人々に尊敬されるのも分かります。ぼくもあこがれます。
 「八つの犯罪」を読んで、ぼくはますますルパンのファンになりました。全集は三十巻あります。気になるタイトル、不思議なタイトルも多いので、がんばって読みきりたいと思います。
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◎優秀賞
三原 舜一朗さん(小2)

読んだ本――『がんばれ!小さいじどう車』 バーグ作 まえだみえこ訳 旺文社

【作品】
「はたらく小さい自どう車」


 むこうぎしにもどってきた小さい自どう車は、
「あーつかれた。」
と、つぶやきました。
「わしもつかれたあ。」
と、うんてんしゅさんもためいきをつきました。
「うんてんしゅさん、ぼく、とってもおなかがすいた。」
と小さい自どう車は言いました。うんてんしゅさんは元気のない小さい自どう車をのろのろ走らせながら、ガソリンスタンドを目ざしました。
「しかたがないなあ」
とうんてんしゅさんは言いながら、じぶんもあくびをしています。そして二人でそのままねむってしまいました。
「つめたーい」
小さい自どう車はさけびました。うんてんしゅさんはあわてておきて、小さい自どう車を走らせました。小さい自どう車は
「どこへ行くの?」
とうんてんしゅさんに聞きました。うんてんしゅさんは
「それはひみつだな」
と、にやりとして言いました。小さい自どう車はぐんぐんすすみます。
 うんてんしゅさんがきゅうブレーキをかけました。
「うわあー、なにするんだよ。」
と小さい自どう車はびっくりしてさけびました。
「すまん、すまん。にじがとってもきれいだったから。」
うんてんしゅさんはあやまりました。小さい自どう車が顔を上げると目の前には大きな大きなにじがかかっていました。小さい自どう車は思わず、
「わあーきれいい」
とさけびました。そして
「うんてんしゅさん、あのにじをわたってみようよ」
と言いました。
「それはいいね。」
とうんてんしゅさんもうれしそうに言いながら、アクセルをぎゅっとふみました。そして、二人はにじのてっぺんにたどりつきました。
「ねえねえ、うんてんしゅさんの言っていたひみつのばしょってにじのことだったんじゃないの。」
と、小さい自どう車は聞きました。うんてんしゅさんは、にやりとわらいました。

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◎ニャーロウ賞
大北 隼矢さん(小5)

読んだ本――『アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険』 トーベン・クールマン作 金原瑞人訳 ブロンズ新社
アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険
アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険

【作品】
「時をこえて」


 ぼくは、トーベン・クールマンのネズミの冒険シリーズが大好きだ。
 だから、今回も出版が決まったと聞いてから、ずっと楽しみに待っていた。
 初めて「アインシュタイン」というタイトルを聞いた時、彼のことは、理科で特殊相対性理論の人だと習って知っていたから、「おっ」と思った。
 サブタイトルの「時をかけるネズミの大冒険」は、「空、宇宙、海ときて、ついに時間が来たか!」と驚いた。
 表紙を初めて見た時は、「これまでは飛行機、ロケット、潜水艦があったけど、今度のは機械がない?」と、今までと違う雰囲気を感じて、ちょっとドキドキした。
 主人公の小ネズミは、待ちに待った世界最大のチーズフェアに間に合わなかった。日めくりカレンダーの十日目のところで、寝てしまって、めくるのを忘れてしまっていたからだ。
 そこから、時間をさかのぼる方法を探していくのだが、時間はエスカレーターみたいだ。
小ネズミを、何とかして大チーズフェアへ連れていってあげたいけれど、「もしも、過去に行けてしまうと、過去の自分が二人になるんじゃないかな? それって、危なくないのかな」と心配になった。
 調べてみると、ネズミの寿命は一〜三年だったので、複雑だけど、ほっとした。
 もしも、小ネズミのように過去に戻れたら、ぼくは、ジャンボ宝くじを何回もやる。当たったら、PS5を買いたい。
 そして、競馬の番号を見ておいて、お小遣いの中から出せる金額から始めて、資金を稼いで、億万長者になる。
 億万長者になったら、株を見て、大富豪になる。
 お金を使いきったら、また一円からスタートする。
 すごくいいアイデアだと思ったけれど、こんなことをぼくができる頃には、きっとみんなもできるようになっているだろうから、お金の価値はなくなってしまうかもしれないと思った。 
 もしも、時空間を移動する小ネズミが、我が家にきて、うちのトイプードルのわこと会ったら、どうなるだろうと想像したりもした。 残念ながら、わこの性格だと気付かずに、ぼくも気付かないまま、子ネズミは去ってしまうだろうと思うと、少し残念な気がした。
 さて。この本の一番の山場は、アインシュタインが足にインクを付けられ、居場所を知られるところだ。
 今回は、もし見つかったとしても、相手はアインシュタインだから、命が危ないということはないだろうけれど、好奇心旺盛な人だから、きっと、いろいろと研究されて、居心地の悪い思いをするだろう。
 実は、一回目に読んだ時は、小ネズミが、ただ時間の移動に失敗しただけだと思っていた。
 何回か読んでいくうちに、小ネズミは一日前に行きたかったけど、間違って八十年前の過去へ行き、その八十年前の過去から未来へ行けたことに気が付いた。
 ぼくは、時間移動は過去にしかいけないと思っていたから、「実はすごいことだったんだな」と、後からじわじわきた。
 もしも、いつか作者に会うことができたら、聞いてみたいことがある。それは、「主人公が最初に出会う太ったネズミは、自分自身ですか?」ということだ。
 ちなみに、ぼくが、ネズミの大冒険シリーズの中で一番好きなのは、『アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険』で、刑事に追われたり、何回も失敗しながらも成功していくところがいい。
 この文章を書き終えた今、全シリーズをもう一度、読み返してみようと思った。
 きっと、何か新しい発見があるにちがいない。おもしろい作品というのは、そういうものだから。
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 優秀賞を受賞なさったかたには賞状と1000円ぶんの図書カードを、ニャーロウ賞を受賞なさったかたにはニャーロウからの賞状とプレゼントをお送りします。
 あらためて、おめでとうございます!

2021年12月31日

読書探偵作文コンクール2021 最終選考会レポート&総評

 最終選考会のもようをお伝えします。

 今年もWeb会議ツールを使用して、オンラインで選考会をおこないました。例年どおり3名の最終選考委員が、1次選考を通過した15作品を1作品ずつ検討していき、話し合いを重ねた結果、最優秀賞3作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞1作品が選ばれました。
 入賞した7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載する予定です。
 最終選考委員のみなさんから、1次選考を通過した作品それぞれへの感想やアドバイスをいただきましたので、ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。

今林 玲奈さん(小2)
読んだ本――『魔女にとられたハッピーエンド』 キャロル・アン・ダフィ作 さわちかともこ訳 新樹社

魔女にとられたハッピーエンド

宮坂「2年生が読むには少しむずかしい話だと思いますが、作文からは、自分なりに作者がいいたいことを考えて、メッセージを読みとろうとした姿勢がうかがえました。そこがすばらしいと思います。文章もしっかりしていますね。おまけの絵からは物語のイメージが感じられて、参考になりました」
ないとう「この絵本、魔女がハッピーエンドをぬすんだせいで、昔話が不幸な物語になってしまい、魔女のぬすんだものをとりかえそうという話が、絵でも文章でも生々しく描かれています。しかも、書いたことが実現する魔法のペンをめぐって最後には作者が登場し、このペンでこの物語を書いているのだというオチまでついています。この複雑なお話を自分なりに把握してまとめ、感想も付け加えているのはすごいと思いました。最後の「この幸せな気持ちになれる本が世界の子どもたちに届けられるといい」という1文がすごく大人びていて、まるでレビューのようです」
越前「作文を読んで、もとの本を読みたくなりました。段落分けのしかたがうまく、筋のとおった読みやすい文で書けています。もうちょっと本の内容紹介があれば、もっとよかったかな。本を初めて読んだときに理解できなくて、1年たって読んでみてよさがわかったということですが、そういう姿勢がいいですね」


三原 舜一朗さん(小2)
読んだ本――『がんばれ!小さいじどう車』 バーグ作 まえだみえこ訳 旺文社

ないとう「二次創作ですね。この物語の世界を自分の言葉で書いてあります。小さい自動車と運転手さんが毎日車を走らせてる、そのほのぼの感みたいなものがそっくり再現されています。最後に虹をわたってみようという場面で終わるのもいい。じつはもとの物語に、小さい自動車が整備をしてもらったら空を飛べるようになったという話が出てくるんです。でもただ飛んで降りてきて、またいつものように地面を走り出すだけ。きっとそういうのが印象に残っていて、空を飛べたらいいのにという願望を虹の場面で表現しているんじゃないかなと思いました」
越前「作文から感じられる絶妙なゆるさが、もとの作品の雰囲気をよく伝えていると思います。おちがしっかりついているところもいいですね。独自の世界観が本の世界観とぴったりあっているようで、とても楽しい作文でした」
宮坂「二次創作ですが、もとの作品との大きなちがいは、自動車と運転手さんが会話できるところですね。会話ができたらどうなのかな、自動車が実際に空を飛んだらどうなのかな、など、自分がもっと読みたいと思ったところを書いてくれたのでしょうか。おまけの絵もかわいらしく、物語をまるごと受けとめて楽しんだことが伝わってきました」


りゅうせい さん(小3)
読んだ本――『ぬすまれた宝物』 ウィリアム・スタイグ作 金子メロン訳 評論社

ぬすまれた宝物

越前「Q&Aの形式で書かれた作文というのは、おそらくこのコンクールで初めてで、とても新鮮に感じました。質問がするどく、項目の立て方や自分なりの評価基準の根拠もしっかりしていて、わかりやすくいい作文だと思います。最後、王さまが悪者にされているけど、王さまの立場だったらやむをえずそうするんじゃないかな? そこはちょっと気になりました」
宮坂「作文をQ&Aで書いていくという形式はおもしろいですね。物語を読みこんで、要点を把握しているからこそできることだと感心しました。質問が本の筋にあっているので、あらすじもよくわかるし、もとの本のおもしろさも伝わってきました。自分の感想ももう少し書いてくれたら、さらによい作文になったと思います」
ないとう「わたしはミステリーを読むとき、いろんな謎や人物が頭のなかで錯綜したまま、とりあえずいきおいで読んでしまうことがよくあるんですけど、こういうふうに整理しながら読めば、頭のなかがすっきりするんだろうなとこの作品を読んで思いました。じつはこの物語のなかでは、無実なのに犯人にされてしまったガウェインをはじめ、信頼するガウェインをうたがってしまった王さまも、真犯人のネズミのデレックもみんな苦しい思いをしています。だれかひとりがいけないわけではなく、みんなが弱さをかかえている。そういうあたりもくみとっていくと、さらに物語がおもしろく感じられるかもしれません」


川島 栄輝さん(小4)
読んだ本――『最後の授業』 ドーデ作 南本史訳 ポプラ社

最後の授業

宮坂「戦争に負けたことによって、それまで習っていたフランス語が習えなくなるという理不尽さがきちんと伝わってきました。それから自分の立場におきかえて、もしこれが日本語だったら……と、改めて日本語を見直しているところもいいですね。少しわかりにくいところがあるので、段落分けの仕方や体裁を見直したら、さらによい作文になると思います」
ないとう「わたしはこの話が教科書にのっていた世代で(1985年以降のっていないそうです)当時は、この主人公がフランス語で生活していたのに、それを敗戦によってうばわれたという話だと思って読んでいました。今回何十年かぶりに読んでみて、あれ、この子はふだんフランス語で生活しているわけじゃないんだと初めて気づいてほんとうにびっくりしました。とくにヨーロッパの場合は、同じひとつの国のなかでもいろいろな言語が話されている場合がありますし、このアルザス=ロレーヌ地方というのは、ずいぶん複雑な歴史をたどってきたのだと今回知ることができました。ただ、この物語自体まぎらわしい書き方をしているので、母語をうばわれた話に見えるのも当然かなと思います。作文自体は、とても熱く、自分の想いをまっすぐに書いているところがすがすがしいですね。いきおいのある文章だと思いました」
越前「あらすじがしっかりわかりやすくまとめられていて、よく書けている作文です。感想の部分も力強い。作文のなかにある、もし授業についていけなくても積極的に手をあげて発表したい、という部分に、この作文の書き手の生きる姿勢のようなものが反映されているようで、おもしろく感じました」


杉本 善々さん(小4)
読んだ本――『八つの犯罪』 ルブラン作 南洋一郎訳 ポプラ社

八つの犯罪

ないとう「お母さんが子どものころ怪盗ルパンが好きで、それをきいたことをきっかけにルパンを読み始めてどんどんはまっていく……すごく幸せなルパンマニアの継承が行われる現場を見せてもらっているようで、もうそのことだけでにこにこしながら読みました。感想のなかの「ルパンは美少女が好きなのかな」というところで笑いました。大人になったらぜひオリジナル版も読んでみてください」
越前「ひとつの短編を1行で伝えるという簡潔なまとめ方がすばらしい。まっすぐにおもしろさが伝わってきました。本を読んで、その内容を自分の体験とむすびつけて書くのは読書感想文の常道だけど、この作文はひたすら本のおもしろさを伝えていて、そこがすがすがしいです。ぼくはこの本を小学4年生で読んで、その後ミステリーに何十年もはまったので、あなたもはまってください」
宮坂「文章がすごく上手ですね。読書量が多くて、文章も書きなれているのだろうと感じました。理路整然と述べられている文で、とてもわかりやすい。楽しく読んだことも伝わってきました。全集は30巻あるそうですが、きっと読破できるのでは? 読み終えたら、またぜひ感想を送ってください」


棚瀬 準三さん(小4)
読んだ本――『ぼくのあいぼうはカモノハシ』 ミヒャエル・エングラー作 はたさわゆうこ訳 徳間書店

ぼくのあいぼうはカモノハシ

越前「語彙が豊富で、独特のリズムをもった文章がすばらしい。もとの作品の雰囲気を凝縮させることができているんだろうな、と感じさせる作文でした。2ページ目で「ルフス」と書くべきところを「ぼく」と書いてしまったところが一か所だけあったのが惜しい」
宮坂「語り口がユニークで、ひとつの物語を読んでいるような楽しさを作文自体に感じました。カモノハシという生きものにも興味がわいたし、物語に出てくるキャラクターのおもしろさもよく伝わってきて、もとの本を読みたくなります。最後の考察もなるほど、と思わされ、物語のおもしろさと本を読む楽しみの両方がよく伝わってきました」
ないとう「自分で調べたカモノハシ豆知識から始まって語り口が秀逸で、こういうふうに原文に書かれているのかなって思ったらどれも独自の言い回しだったので本当に感心しました。で、リズミカルに進んでいって最後にちゃんと自分なりの考察がしっかり入ってるところも、やるなあという感じです。全体としては、とてもストレートに作品のことだけを語っているのですが、文体のひねりがきいていて、とても楽しく読みました」


鍋田 典秀さん(小4)
読んだ本――『新訳 ナルニア国物語 (3)竜の島と世界の果て』『新訳 ナルニア国物語 (4)銀のいすと巨人の都』 C・S・ルイス作 河合祥一郎訳 角川つばさ文庫

新訳 ナルニア国物語(3)竜の島と世界の果て 新訳 ナルニア国物語(4)竜の島と世界の果て

宮坂「いじめっこのユースタスに着目してくわしく書いているところに興味をひかれました。もし自分がナルニア国で冒険をすることになったら……という部分では、実体験からきている正直な感想が書かれていて、好感がもてました。とても楽しい作文です」
ないとう「内容紹介が手ぎわよく上手にまとまっていて、もう一度読み返してみたいという気持ちをそそられました。でも一番印象に残ったのは、じつは、ぼくはどれだけこわがりかという最後の告白です。冒険はこわいからあまり行きたくないんだけど、でもナルニアには行ってみたい、だからぼくは勇気を学べたらいいなということなんですが、こういうふうに自分の弱さを認める告白ができるということもひとつの勇気なので、勇気の形にはいろいろあるよという励ましの言葉を送りたいです」
越前「ナルニアの話をこのように読んで語るという目のつけどころがおもしろい。深く読みこんでいないとできないことだと思います。どこか大人びた視点から悠々と語っていて、表現力もすばらしいと感じました。自分を客観化した最後の部分はあまりにも正直でおもしろく、作文のおまけとしてぴたっとはまっています」


盛川 葵羽さん(小4)
読んだ本――『サリバン先生とヘレン ふたりの奇跡の4か月』 デボラ・ホプキンソン作 こだまともこ訳 光村教育図書

サリバン先生とヘレン ふたりの奇跡の4か月

ないとう「白杖体験や車椅子体験など、学校の授業を通じた体験の話がたくさん出てくるのですが、それが全部この本の内容とダイレクトにつながっていて、読書の中身がそのまま血肉となるような読み方をしています。とても幸福な読書だなと思いました。問題意識をはっきりもっていることが伝わってきて、とてもいいですね。作文としては、ひとつの話題をひとつの段落にまとめて全体を整理すると、すっきりするだろうと思いました」
越前「サリバン先生の長所がさまざまな角度からよく書けています。実体験と本の内容が行ったり来たりしているので、構成をもうひと工夫すると、より読みやすい作文になると思います。本の内容、実体験ともに、くわしく素直に書いているところがいいですね」
宮坂「本の引用から始まる冒頭からひきこまれました。読者への呼びかけなどもいれて、文章の書き方がじょうずです。ハンディキャップ体験の紹介にも興味をひかれましたし、絵とともにまとめたおまけも工夫が凝らされていてわかりやすかったです。同じ内容の文が繰り返されていることなど、気になる点もありましたが、熱い気持ちはよく伝わってきました」


大北 隼矢さん(小5)
読んだ本――『アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険』 トーベン・クールマン作 金原瑞人訳 ブロンズ新社

アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険

越前「このネズミのシリーズはコンクールでも毎年人気ですが、この作文からもシリーズの本が大好きなことがびんびん伝わってきました。目のつけどころがおもしろくて、もしも自分がタイムスリップしたらどうするかを考えたり、ネズミの寿命を調べたり、独特のセンスがありますね。構成にもう少し工夫がほしかったけど、本のおもしろさを伝える熱量は、今回送られてきた作文のなかで一番でした」
宮坂「「空、宇宙、海ときて、ついに時間が来たか!」という部分がいいですね。わくわく感がよく伝わってきました。表現が口語的なためか、ふだん話す声がそのまま作文から聞こえてくるようなおもしろさがあります。むすびの言葉もきまっていて、納得させられました」
ないとう「「彼のことは、理科で特殊相対性理論の人だと習っていたから、うわっと思った」って、すごいですね。理科で(名前だけにせよ、アインシュタインを)教わるんだということも驚きましたが、とてもわくわく感が伝わってきて、うれしくなりました。タイムマシンで戻ったら過去の自分が2人になるんじゃないかとか、タイムトラベルは過去に向かってしかできないと思っていた、などとさらりと書いてあって、いろいろタイムトラベルものを読んでいるのかなと思いました。競馬の番号を見ておいて億万長者になるというアイディアを思いついて、自分でつっこみをいれているのもおもしろいです。このへんはもう、ぜひ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見てくださいといいたいです(とくにU)。「面白い作品というのはそういうものだから」という最後の1文には、思わずマーカーをひきました。きまってます」


川上 莉央さん(小5)
読んだ本――『星の王子さま』 サン=テグジュペリ作 三田誠広訳 講談社

星の王子さま

宮坂「この本を2年ぶりに読み返してみて、なにかを好きになるのはすてきなことだと作者はいいたいのではないかと考え、「好き」という気持ちについて深く考えた様子がうかがえました。大人が読んでもむずかしい本ですから、まだ理解できていないところがあるというのは正直な感想だと思います。何年か後に読み返したら、またちがう感想をもつと思うので、ぜひ読み返してみてほしいですね」
ないとう「すごくじーんとくる作文でした。小学校3年生のときの「読んだのにどんなお話かよくわからない。楽しかったとか悲しかったとか、そういう感想がない不思議なお話でした」という体験から、初めて『星の王子さま』を読んだときってそうなるよねという感じがすごく伝わってきました。で、2年たって読み返して、ここまで読めたのはすごいなあと。しかも作中の言葉をぽんと抜き出すだけではなく、「話をしたり遊んだりお世話をしたりケンカしたりしながら一緒の時間を過ごしていくなかで時間をかけて生まれてくるもの」が愛情なんだとすごく具体的に書いていて、自分の頭でしっかりと考えてこの本を読んだことが伝わってきました」
越前「2年後に同じ本を読み返してみて、わかるようになった部分、わからない部分を明確にし、本といっしょに成長していく――。本と向き合う姿勢として理想的だと思いました。この作文を読んだ人は『星の王子さま』を読んでみよう、全部わからなくてもいいんだ、と思うのではないでしょうか。すばらしい作文です。理解にまよっているところは作品の肝になっている部分でもあり、深く読みこんでいることがわかります」


日下 小都姫さん(小5)
読んだ本――『12のバレエストーリー』 スザンナ・デイヴィッドソンほか作 西本かおる訳 小学館

12のバレエストーリー

ないとう「これも自分の体験が本の内容と直接に結びついています。最後の方に「私は、この本が恩人と言っても過言ではありません」とまで書いているんですよね。バレエをする子はこの本をこういうふうに読むんだなあと感銘を受けました。きっと新しい踊りを踊るたびにこの本を取り出してまたじっくりと読んで、それを自分の体験に生かしていくのでしょう。とても幸せな出会いをしたんじゃないかと思います」 
越前「読んだ本をほかの人にも読んでもらいたいという強い気持ちがしっかりと伝わってきます。構成もわかりやすく、自分自身のバレエの実体験とスムーズにつながっていると思いました。やや繰り返しが多く、長く感じられるので、本の具体的な内容や読みどころなどをもう少しメリハリをつけて書くと、もっとよく読者に伝わると思います」
宮坂「バレエの作品のもとになっている物語を読んでから実際にバレエを踊るというのが新鮮でした。物語そのものを楽しみながら、自分が習っているバレエに生かしたり、友だちへのバレエの紹介にも利用したり、この本を活用しきっている感じがします。読者に語りかけているところも、すごく気持ちが入っていてよかったです。〈すばらしい〉という言葉が何度か繰り返されるので、別の言い方で表現できたらもっとよかったと思います」


中込 恵楠さん(小5)
読んだ本――『ぼくのつくった魔法のくすり』 ロアルド・ダール作 宮下嶺夫訳 評論社

ぼくのつくった魔法のくすり

越前「本と向き合っていく姿勢の変化がよくわかります。実体験とうまく連動しているので、読んでいてすがすがしかったです。モヤモヤが残ったという自分の心のなかの葛藤が正直に書かれ、作文を読みながらこの本をいっしょに読んでいるような気持ちになりました。自分と主人公が重なりあうプロセスが見えてくるところにひきこまれますし、正直な心の動きが最後まで感じられて、とてもいいと思いました。どろだんごのエピソードはなくてもよかったかもしれません」
宮坂「「いいきみだ!」という自分の感想のセリフからスタートしているところがうまくて、ひきこまれました。とんでもない人たちばかり出てきて、この終わり方でいいのっていう感じで終わる本なので、モヤモヤが残った気持ちはよくわかります。このモヤモヤの正体はなんだろうって、自分の体験もふまえながら深く考えているところがいいですね。グランマがいなくなってよかったと思う気持ちと、これはやりすぎだと思う気持ちがぶつかっていたのがリアルで、そういうふうに自己分析ができているところがすごいと思います。自分だったらどういう薬を作ろうかと想像しているところも楽しかったです。全体的に素直な作文でよかったと思います」
ないとう「これ、ロアルド・ダールのなかでも一段とブラックなお話なんですよね。あらためて読んでみるとお父さんがもう完全にグランマを消そうとしてて――奧さんの母親ですね――で、奧さんも、そんなのダメダメって言いながら、最後本当に消えちゃったらまあいいかみたいな。一番呆然としているのは、くすりを作った「ぼく」なんです。だからこの作文を書いた子はまさしくその「ぼく」の気持ちをそのままなぞりながら読んでいって、モヤモヤを残したまま作文を書き終え、へんに結論を出してないところがすごくいい。そのモヤモヤをかかえていれば、ぜんぜん別の作品を読んだときにまた急になにか思い出したりするかもしれません。モヤモヤというのは読書をしていく上でひとつのアンテナになるんじゃないでしょうか」


波多 美理愛さん(小5)
読んだ本――『木を植えた男』 ジャン・ジオノ作 寺岡襄訳 あすなろ書房

木を植えた男

宮坂「書き出しが上手で、この本の一番大事なところをまず言うというのがすごいと思います。最後の言葉も余韻があってきまっていますし、「私は思わず本に問いかけてしまった」という表現は文学的でさえあって、全体的に書き方がうまくて感心しました。もくもくと木を植え続けた主人公の姿に感動して、大きく影響を受けたことがわかります。また、主人公の行為にただ感心するだけでなく、一冊の本からたくさん学んで吸収して考えている様子が伝わってきました」
ないとう「すごく深みのある作文です。この土地がブフィエの心の世界だったんじゃないか、妻も子どももなくして完全に孤独になってしまったその心の世界を、この荒れた土地が表しているんじゃないかという考察とか、そのあとの孤独の考察が本当にすばらしい。いろいろな種類の孤独があって、人のなかにいても孤独を感じることはある。でもブフィエは自分のやっていることに確信を持っていたから、ひとりぼっちでもむしろ孤独ではなかったんじゃないかというあたり、深い思索と感性が感じられて、とても感心しました。文章もしっかりしていて、全体がひとつのエッセイになっていますね」
越前「すごくリズムがいい作文です。本の内容と自分の感想が段落分けされていないのですが、そのふたつをらせん構造のように行き来しながら作品のイメージがだんだん形作られていくという不思議なつくりの作文でした。ひとつひとつの言葉の力強さとか深さみたいなものが関係しているのかもしれないですね。詩のような響きも感じられ、この作文自体がまるで文学作品のようで、とても味わいがあります。最初の文が現在形の「〜る」で終わり、次の文が過去形の「〜た」で終わるなど、バランスがいいのだと思います。文章がうまいですね」


丸山 朝光さん(小6)
読んだ本――『ぼくがスカートをはく日』 エイミ・ポロンスキー作 西田佳子訳 学研プラス

ぼくがスカートをはく日

ないとう「視点を変えて先生の側から書いている二次創作です。原作を読んでみると、先生のせりふはそのまま抜き出していて、その時先生が感じていたであろうことを自分の言葉で補って書いています。二次創作のひとつのスタイルをなぞってはいるのですが、それをとても上手にやっています。たとえば「ランデン先生とゆっくり顔を見合わせました。ランデン先生も『グレイソンがペルセポネに見えた。すばらしかった』というようなきらきらした顔をしていました」というあたりなどは、原文では単に「顔を見合わせた」とだけ記されているところなので、背景の想像力がすぐれていますね。とても楽しく読みました」
越前「作品の一部を選んで視点人物を変えるという独特の手法が斬新でおもしろかったです。描写がリアルで、心のなかの描き方も細やかなので、部分的に切り取っていても、作文を読んでいる読者が作品のほかの場面まで読みたくなると思います。カラーで解像度が高いというような印象を受ける作文でした。最後まで先生の視点で終わるので、本当の私(筆者)の視点に戻ってきてほしかったという気持ちも少しあります」
宮坂「心に残ったシーンを主人公ではなく脇役の視点から創作していて、こういう楽しみ方もあるのだなと思いました。本のセリフはそのまま生かしつつ、心理描写を想像で補っていますが、それは作品をよく読みこんで、状況を理解しているからこそできることですね。作品の魅力が伝わってきますし、主人公や脇役の人たちの性格も想像がつくので、ちゃんと作品紹介にもなっているように思いました。男の子が女の子を演じるということを素直にそのまま受けとめているところにも好感が持てます」


丸山 希泉さん(小6)
読んだ本――『モモ』 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳 岩波書店

モモ

越前「モモの20年後を想像して書かれた二次創作ですね。今の自分のまわりの日常に対する鋭い批判精神が創作の動機になっているのに無理矢理な感じがないところがよかったです。自分自身の足元を確かめるためにこの本を咀嚼しているところから始まっていますが、自分の歩みとあわせて作品をしっかり読みこみ、生かしているのを感じます。こういう二次創作は好きです。『モモ』をまた読みたくなりました」
宮坂「あんなに時間を大切にしていたモモがどこにでもいそうな忙しいお母さんになっていて、いい意味で予想を裏切られ、おもしろかったです。新型コロナウイルスやロックダウンという言葉が出てきて、一気にファンタジーから現実へ引き戻されるような気がしたのですが、かえって今の小学6年生のリアルな気持ちが感じられました。〈ファミリータイムチケット〉という発想がユニークですね」
ないとう「モモが話を聞くのが得意だから弁護士になったというのは、言われてみればあるかもしれないと思いました。全体的に夢があるのかないのわからない設定なのですが、すごくリアルにとらえているのがおもしろかったです。コロナで仕事が休みになったという現実世界の取りこみ方も興味深かったです。子どもの書いたコロナの物語みたいなものを読んでみたいですね。一番影響を受けているのは子どもたちかもしれません。10歳とか12歳ぐらいの人生のなかで2年ってものすごく大きいですから」

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【総評】

越前 「今年もすばらしい作文をたくさん読ませてくださって、ありがとうございます。今年は例年にも増して粒ぞろいの候補作がそろい、どれを選ぶかでとても迷いました。今回入選しなかった人も、ほんとうにわずかの差でしたから、ぜひ次回も応募してください。何年かつづけて応募してくれる人の成長ぶりを見るのは、選考委員としての大きな楽しみです」

ないとう「今回もたくさんの応募をありがとうございました。感想文、二次創作、レビューやエッセイに近いものなど形式はいろいろでしたが、どの作文からも、本をおもしろく読んだこと、読んで自分なりに考えたこと、そしてほかの人にもすすめたいという熱意が伝わってきて、胸が熱くなりました。賞にもれた人や一次選考を通過できなかった人も、がっかりしないでくださいね。思いはちゃんと届いていますので、またぜひおもしろい本をさがして、そのことをわたしたちに教えてください」

宮坂「今年もおおぜいの読書探偵のみなさんが外国の本と出会い、そのおもしろさや自分の考えをいろいろな形で伝えてくれました。本当にうれしかったです。たとえステイホームになろうとも、本を読むことは可能。いや、そんなときこそ、本の世界を自由に旅してほしい。みなさんが読書を楽しんでくれること自体が、本づくりにかかわる私たちにとっては大きな喜びです。来年もたくさんのご応募をお待ちしています!」
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s_books_2021.jpg
(一部の本は、応募者の方が読まれたものとは別の版を用いています)

 今年もすばらしい作品をおよせくださったみなさん、ありがとうございました。
 今後はこちらのサイトで、みなさんが読まれた本を順に紹介していく予定です。お楽しみに。
 また、中高生部門のサイトでも、コンクールの結果や入賞した作文の全文が公開される予定ですので、ぜひご覧ください。
 来年もたくさんのご応募をお待ちしております。

2021年12月15日

読書探偵作文コンクール2021 選考結果発表!

 お待たせしました! 読書探偵作文コンクール2021小学生部門の選考結果を発表いたします。

 今年は97作品の応募があり、第1次選考で15作品が選出されました。12月14日に行われた最終選考会で、選考委員の越前敏弥さん、ないとうふみこさん、宮坂宏美さんにじっくり話し合っていただいた結果、7作品が入賞作に選ばれました。
 入賞されたみなさん、おめでとうございます!

 以下に、入賞者ならびに第1次選考通過者のみなさんのお名前を掲載いたします。(ご本人の希望により、一部お名前をペンネームで記載してあります。)

★最優秀賞★ 川上 莉央さん(小5)
「かんじんなことは、目では見えない」

 読んだ本:『星の王子さま』
★最優秀賞★ 波多 美理愛さん(小5)
「心の世界―『木を植えた男』を読んで」

 読んだ本:『木を植えた男』
★最優秀賞★ 棚瀬 準三さん(小4)
「ぼくらは無二の生きものだ」

 読んだ本:『ぼくのあいぼうはカモノハシ』

☆優秀賞☆ 中込 恵楠さん(小5)
「ぼくの願うくすり」

 読んだ本:『ぼくのつくった魔法のくすり』
☆優秀賞☆ 杉本 善々さん(小4)
「怪盗ルパン『八つの犯罪』を読んで」

 読んだ本:『八つの犯罪』
☆優秀賞☆ 三原 舜一朗さん(小2)
「はたらく小さい自どう車」

 読んだ本:『がんばれ!小さいじどう車』

◎ニャーロウ賞◎ 大北 隼矢さん(小5)
「時をこえて」

 読んだ本:『アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険』

●第1次選考通過●
丸山 朝光さん(小6)
「フィン先生が思ったこと」

 読んだ本:『ぼくがスカートをはく日』
丸山 希泉さん(小6)
「モモの二十年後」

 読んだ本:『モモ』
日下 小都姫さん(小5)
「名作の魅力」

 読んだ本:『12のバレエストーリー』
川島 栄輝さん(小4)
「悲しい最後の授業」

 読んだ本:『最後の授業』
鍋田 典秀さん(小4)
「『ナルニア国物語』いじめっ子ユースタスの冒険と成長」

 読んだ本:『新訳 ナルニア国物語 (3)竜の島と世界の果て』
      『新訳 ナルニア国物語 (4)銀のいすと巨人の都』
盛川 葵羽さん(小4)
「サリバン先生の愛」

 読んだ本:『サリバン先生とヘレン ふたりの奇跡の4か月』
りゅうせい さん(小3)
「意外な犯人」

 読んだ本:『ぬすまれた宝物』
今林 玲奈さん(小2)
「ハッピーエンドをもう一ど」

 読んだ本:『魔女にとられたハッピーエンド』

 入賞されたみなさんには、賞状と副賞(最優秀賞受賞者には5000円ぶん、優秀賞受賞者には1000円ぶんの図書カード、ニャーロウ賞受賞者にはニャーロウからのプレゼント)をお送りします。
 また、残念ながら選にもれたみなさんにも、後日、参加賞と第1次選考委員からの個別コメントをお送りいたします。

 新型コロナウイルスの影響がつづくなかで迎える二度目の夏となりましたが、今年も各地からたくさんの作品が届きました。ご応募ありがとうございました。読まれた本のジャンルも、作文の形式もさまざまで、選考委員一同、楽しく読ませていただきました。
 本の作者や登場人物への熱い思いを感じてじんとしたり、ユニークな発想に驚いたり、鋭い指摘に感心したり、応募者のみなさんと本との出会いを通じて、わたしたちも毎年新しい発見をしています。惜しくも第1次選考を通過しなかったなかにも、心をつかまれる魅力的な作品がいくつもありました。
 これからもいろいろな本を手に取って、おもしろい本と出会ったら、ぜひその本のことをわたしたちに教えてください。自分のすきな書き方でかまいません。来年もたくさんのご応募をお待ちしています。

〈入賞者、第1次選考通過者のみなさんが読んだ本〉
※それぞれの本の画像をクリックしていただくと、Amazon.co.jpのサイトで詳しい情報がごらんになれます。
※Amazon.co.jpで現在取扱いのない書籍につきましては、書誌情報を掲載しています。

星の王子さま 木を植えた男 ぼくのあいぼうはカモノハシ

ぼくのつくった魔法のくすり 八つの犯罪

★『がんばれ!小さいじどう車』バーグ作/まえだみえこ訳/旺文社

アインシュタイン 時をかけるネズミの大冒険

ぼくがスカートをはく日 モモ 12のバレエストーリー

最後の授業 新訳 ナルニア国物語(3)竜の島と世界の果て 新訳 ナルニア国物語(4)竜の島と世界の果て

サリバン先生とヘレン ふたりの奇跡の4か月 ぬすまれた宝物 魔女にとられたハッピーエンド