2021年02月09日

読書ファイル2020 その1【昔話・民話・童話(1)】

 むかしむかし、不思議なことや、びっくりすることが、いっぱい起きましたとさ。

『アラジン』
『王さまのアイスクリーム』
『おすのつぼにすんでいたおばあさん』
『グリムの昔話〈1〉野の道編』より「白いへび」
『3びきのくま』
『イギリスとアイルランドの昔話』より「三びきのクマの話」

アラジン 王さまのアイスクリーム おすのつぼにすんでいたおばあさん

グリムの昔話〈1〉野の道編 3びきのくま イギリスとアイルランドの昔話

2021年02月08日

読書探偵の読書ファイル2020

 このコーナーでは、「読書探偵作文コンクール2020」の応募者のみなさんが読んだ本をジャンル別にご紹介します。
 お好みのジャンルのページで、それぞれの本の画像をクリックしてごらんください。
 Amazon.co.jpのサイトで詳しい情報がごらんになれます。
※Amazon.co.jpで現在取扱いのない書籍につきましては、書誌情報を掲載しています。

その1【昔話・民話・童話(1)】
その2【昔話・民話・童話(2)】
その3【ファンタジー(1)】
その4【ファンタジー(2)】
その5【冒険・ミステリー】
その6【宇宙・おばけ・科学】
その7【ノンフィクション・哲学】
その8【学校・友情・暮らし】
その9【家族・きょうだい(1)】

2021年02月07日

2020会計報告

2020年1月〜12月の収支報告をいたします。

<収入の部>
 
 前年繰り越し
132,501円
 カンパ金
96,000円
 出版にともなう収益
2,299円
 小計
230,800円
 
 
<支出の部>
 
 企画諸経費
25,875円
 賞品関連経費
47,000円
 通信費、振込手数料等
15,396円
 小計
88,271円
 
 
総計(残高/2020年12月末)
142,529円

※カンパの詳細についてはこちらをご覧ください。
あらためまして、みなさまのご協力に感謝いたします。

2021年01月17日

読書探偵作文コンクール2020 優秀賞・ニャーロウ賞 全文掲載

 優秀賞を受賞なさった森小久良さん、波多美理愛さん、三原真理愛さん、ニャーロウ賞を受賞なさった鈴木結菜さん、小八重琴子さんの作品全文をご紹介いたします。
 なお、最終選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。
読書探偵作文コンクール2020 最終選考結果発表!

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。なお、Amazon.co.jpで現在取扱いのない書籍につきましては、「読んだ本」に書誌情報のみを掲載しています。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎優秀賞
森 小久良さん(小6)

読んだ本――『月の光を飲んだ少女』 ケリー・バーンヒル作 佐藤見果夢訳 評論社
月の光を飲んだ少女
月の光を飲んだ少女

【作品】
「いつもとは違うこと」


 書店や図書館で読みたい本を見つける時、どうやって探していますか?宿題で読まないといけない本や、誰かが「面白かった」と言っていた本とか無くて、ただ「なんか新しい本が読みたいな♪」と思って図書館へ行った時のことです。たいていは、本棚にずらっと並んでいる、たくさんの背表紙をながめながら、気になる題名を探していきます。気になる題名を見つけると、取り出してパラパラと読んでみて、また本棚に戻したりカートに入れたりします。読みたい本を見つける手がかりは『題名』だけ。私は、『題名』から物語の内容を想像して読む本を選んでいました。
 そうして選んだ本を読んでみると、思っていたのとはちょっと違うお話や、中には「どうしてこの題名???」と思うものもありますが、ほとんどが読む前に想像していたような物語です。もちろん楽しく読んでいます。ということは……「いつも私は自分の好きなものしか読んでいないのでは?」と気づいたのです。
 そこで、この夏休みに読む本は、「題名だけではお話の内容が想像できない本」を選ぶことにしました。そんなつもりで本棚をながめていくと、意外と内容が想像できない本は少ない気がします。そして、この『月の光を飲んだ少女』を見つけました。
 毎年「いけにえの日」に赤ん坊を魔女に捧げる保護領と、ルナという少女を育てる人々の物語です。ルナは、いけにえにされた赤ん坊の時、魔女ザンに助けられたものの「月の光」をうっかり飲んでしまい魔法の力を持ちました。十三才までは魔法の力を使えないように、ザンや沼坊主グラークと竜の子フィリアンに守られながら過ごしていました。
 そんな日々に変化があらわれます。ずっとしきたりに従って過ごしている事に疑問を持つ人が出てくるのです。
 これまでのように、自由市で里親を探さずルナと家族になったザン。何も考えず、ただしきたりに従う事ができず、赤ん坊を想って狂った女。これまで、出て行った者は誰も居ない塔を出て行ったエサイン。しきたりについて考え行動を起こしたアンテイン。旅に出るグラークとフィリアン。いつもと違うことをするには勇気が必要です。私には、他の人と違うことをする勇気はありません。それぞれが希望に向かって行動できるのを、うらやましく感じます。
 場所も時代も違うお話が、いくつも同時に語られています。あとがきにも『読み手が誰に共感するかによって、主人公が変わってくる』とありました。私は、誰にも共感していなかったので、バラバラだと思っていた物語が、最後にはすべてつながって、ひとつの物語になっていったとき「そうだったのか!」と、何度も戻って読み返してしまうほど気持ちよく感じました。
 印象に残っているのは「悲しみを見せてはいけない」「悲しみは危険だ」という、魔法使いゾシモスがザンに忠告した言葉です。人の悲しみを喰らう魔女を倒すには、悲しまなければよいのです。「悲しみの代わりに希望を」「あたしの愛は、分けられない。増えるだけよ」というルナの強さと優しさに、私は「色んな気持ちでごちゃごちゃだよ!」と、フィリアンのようにとまどってしまいました。
 読み終えてみると『月の光を飲んだ少女』という題名は、物語の内容を完璧にあらわしていました。でも、いつも通りに読みたい本を探していたら、こんなにやさしい気持ちになる『月の光を飲んだ少女』を、私が手に取ることは無かったと思います。私も、いつもと違う行動が出きていたみたいです。
 「いつもとは違う」本選び!おすすめします!
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◎優秀賞
波多 美理愛さん(小4)

読んだ本――『ファーブル昆虫記』 ジャン・アンリ・ファーブル作 奥本大三郎訳 集英社
ファーブル昆虫記 1 ふしぎなスカラベ
ファーブル昆虫記 1 ふしぎなスカラベ

【作品】
「ファーブルのまなざし『ファーブル昆虫記』を読んで」


 「フンコロガシ、おもしろいねぇ。不思議だねぇ。」
本を読む私のとなりで夕食を作っていた母に、不意に話しかけていました。いいえ、もしかしたらひとり言だったのかもしれません。私は本当は虫がきらいです。でも『ファーブル昆虫記』を読んでいると、フンコロガシもかわいらしいものに感じられてきました。
 これはたぶん、ファーブルのやさしいまなざしによるものではないでしょうか。ファーブルは、虫を愛するものとして見ていたのです。私は今までそんなふうに虫を見たことはありませんでした。フンはきたないものという思いこみがありました。でもファーブルは、フンコロガシについてどんどん調べていき、色々な習性を発見していきました。だから私はファーブルのような目を持つ人に出会い、
(そんなふうに自然を見れたらいいな。)
と、すっかりあこがれてしまったのです。
 ファーブルについてもっと知りたくなりインターネットで調べてみると、東京にファーブル昆虫館「虫の詩人の館」という資料館があると知り、早速行ってみることにしました。ファーブルが生まれた南フランス、サン・レオン村の家が本物のざい料でさいげんされていて、昆虫記に登場する昆虫の標本も見ることができました。資料館で昆虫を見ていくうちに、虫の種類は他の動物とはくらべものにならないほど多いことに気付きました。館長さんの説明の中に、「地球の主人公は虫たちかもしれません。」という言葉がありました。虫のいる場所には、虫をえさにする鳥や大きな動物も集まります。虫が住みやすい場所は、人間や動物にとっても住みやすい場所だということです。
 『ファーブル昆虫記』は、ファーブルという虫が好きな作者が、たくさんの虫を約六十年間も観察して書いたものです。道を歩いていても気付かずに通りすぎてしまいそうな小さな虫たちも、よく観察していくと色々なことがわかります。知りたがりだったファーブルが残した観察記録には、昆虫が生きていく知恵があちこちに書かれていました。すいこまれるように読んでいくと、大自然のひみつまでわかってしまいそうでした。
 自然界にはいくつのフンがあるのでしょうか。フンコロガシはそれを食べて、利用して、地球のそうじまでします。しかもこの仕事には、たくさんの生き物がさんかしています。フンも動物もみんなかい体されて、消化されていくのです。私もこの大きな自然の中で、ほかの生き物と共ぞんし合って生きているのだと深く考えさせられました。
 そこで私は、地球の未来のすがたを想ぞうしてみました。このまま二酸化炭素がふえ続けたら、三十年後はどうなるのかな。ひさんな未来も、明るい未来も、その中心にいるのは私達です。私達がこの地球のために何ができるか考えていくことこそが大切なのです。てのひらでそっとつかめるほどの小さな虫が、生物としての活動によって地球を守っています。私達はこんなにも大きくて、深いことを考える知恵もあります。私達にも何かできるはずです。たとえばゴミひろい。フンコロガシのような虫や植物が安心して生活できるようにするのも、りっぱなはたらきかけです。近くへ行く用事なら自転車を使ってみてはどうでしょう。いつもは見すごしてしまう草や花のにおいに気付けるかもしれません。
 考えられることは、全てとても小さなことばかりです。でも大切なのは、一人一人ができるだけの努力をすることです。それが合わされば大きな力になると信じることです。小さな虫にも、世界をすくう手助けができるのですから。ファーブルはかせが私達の知恵とアイディアを期待して、ほほ笑んでいるすがたが目にうかびました。
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◎優秀賞
三原 真理愛さん(小4)

読んだ本――『きのうのぼくにさようなら』 ポーラ・フォックス作 掛川恭子訳 あかね書房

【作品】
「本当の自分」


 ある日ガスが自分の部屋で本を読んでいると、
「ガス、リンゴをとってきてくれる?」
お母さんが言いました。
ガスがリンゴの木の方に向かうと、例の井戸の近くにリンゴが一つ落ちていました。ガスがそれを手に取ると、井戸の中から何やら音がしてきました。
「何だろう?」
ガスが井戸の中をのぞきこむと、底の方で何かが光っています。もっと見たいと思い身をのりだしたしゅんかん、ガスは井戸の中に落っこちてしまいました。
 痛む背中をさすりながら目を開けてみると、目の前に大きくきらきらとした岩がありました。そして不思議なことに落ちた痛みでゆがんでいるはずのガスの顔がその岩に映ると笑顔になっているのです。ガスは久しぶりに見た自分の笑顔になんだかはずかしい気持ちになりました。
 その日以来、ガスは学校から帰ると毎日その不思議な岩のところに行って遊ぶようになりました。岩に映るガスはいつも笑顔でいるので、ここにいるとどこかに忘れてしまった表情を取り戻したような気持ちになれたのでした。
 ところがある日、いつもと同じように岩の所に遊びに行くと、その中に笑顔の自分がいません。ガスがあわてて岩にふれたとたん、ガスはその岩の中に吸い込まれてしまいました。
 気がつくと、そこは学校の校庭でした。今はちょうど休み時間、みんながおしゃべりする声が聞こえてきます。
「やあ。ガス」
 と、後ろから誰かに話しかけられました。あわててふり向くと、そこには親友のチャーリーがいました。ガスはチャーリーと一緒に教室に入っていき、自分の席に着きました。隣は、そう、あのちょっといじわるなフロンダです。フロンダはいつも人の弱点を見つけては、そのことを周りのみんなにぺらぺらとしゃべるのです。
ガスも以前、
「あなたはいつも同じ顔。怒っているのか笑っているのかさっぱりわからない。まるでお面をかぶっているようね。」
とクラス全員の前で言われたことがあり、それ以来とっても苦手な相手なのです。
 そんなある日、フロンダがガスの前にやってきて、
「ねえ。ポアロっておっちょこちょいよね。この間だって平らな道で転んでいたわ。忘れ物も多いし、落とし物も多い。」
と話し始めました。ガスはいつもの無表情でだまりこみ、手の中でしょうどう石をころころと転がしていました。それでもフロンダは話し続けます。すると、手の中のしょうどう石がかすかに光ったと同時に、
「そうかもしれないけど、ポアロはいつも本を読んでいて、とても物知りだよ。」
ガスの口が勝手にしゃべったのです。フロンダはそんなガスの言葉にいっしゅんだまりましたが、その後続けてまた別の子の弱点の話を始めました。
「タートルってば食いしん坊よね。いつもみんなの給食までたいらげるわ。」
するとすぐ近くを通ったタートルの親友サムが、
「僕の親友をばかにするな。」
と言ってフロンダにつかみかかりました。すると
「サム、そこがあなたの弱点。すぐに人にケンカをしかける。」
とフロンダ言いました。
そこでガスが勇気をふりしぼって二人のケンカに入り込みました。
「たくさん食べるのは悪いことじゃないし、それにタートルは言葉をいっぱい知っているよ。そしてサムはみんなをたくさん笑わせてくれるじゃない。」
いつの間にかフロンダとガスの周りにみんなが集まってきていました。
そこでフロンダは、
「ガス今度はあなたの番よ。あなたその変な石をどんな時も手にもって転がしているわね。それにいつも無表情。何を考えているかわからないわ。お面みたい。」
と言い放ちました。
「でも、でもぼくは、、。」
ガスはそういったまま黙り込んでしまいました。すると、ポアロが
「ガスは人のいいところを見つけられるのだから何か言い返せるわよ。」
といいました。するとそれを聞いたサムが
「そう!それだ!人のいいところを見つけられるところ!それがガスのいい所だ。」
と叫びました。みんなはそれを聞くといっせいに歓声をあげました。ガスはみんなに
「やったね!」
と言われました。
そしてサムやタートルには、
「ありがとう」
と言われました。フロンダは何やら悔しそうに歯を食いしばっていましたが、そこでガスが言いました。
「フロンダ!君は走るのがとっても早いよね。君は運動会のヒーローだ。」
と。すると持っていたしょうどう石がガスの手の中で光りだし、その光はどんどん強くなってクラスのみんなの心の中に入っていきました。そのあまりのまぶしさにガスは目をつむってしまいました。
 少したちガスが目を開けると、そこはベットの上でした。窓の外では小鳥がさえずっています。
 夢だったんだ、、、
ガスは思いました。でもガスはもう昔のガスではありません。そうです、ガスは笑顔を取り戻したとともに自分に自信を持てるようになったのです。
 ガスは朝の心地よい空気を胸いっぱいに吸い込みました。そしてベットを整えると、今日もいつも通りいい匂いのするキッチンに降りていきました。

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◎ニャーロウ賞
鈴木 結菜さん(小6)

読んだ本――『チーズはどこへ消えた?』 スペンサー・ジョンソン作 門田美鈴訳 扶桑社
チーズはどこへ消えた?
チーズはどこへ消えた?

【作品】
「私達のチーズと可能性」


 きれい事だ。最初そう思った。
「進んですばやく変わり再びそれを楽しもう!」
楽しむ。一回すばやく切りかえて変わることは、果たしてそんなに簡単にできるのだろうか。変化はいつ起きるか分からない。もう起きているのかもしれない。変化にすばやく対応すれば、私も変われるのだろうか。未来をおそれず考え、感じたことだけを信じれば、新しいチーズが見つかるだろうか。変化を怖がってはいけない。
 きっとだめだ。私が新しいチーズを探しにいっても、きっとスニッフのようにはできない。すぐに事態には気づけなかっただろうし、行動もできないだろう。だから、スカリーでもなかった。自分からチーズを探しにいったホーでもない。どちらかというとヘムに近いと思う。ずっとチーズ・ステーションから動けない。いや、動こうとしないのだ。変化が怖いから。自分が慣れ親しんだこの場所から動こうとしない。変化するための可能性を先延ばしにするだろう。
 今の私が言えることじゃないけど、私は変わりたい。多分、ずっと暗く険しい道のりだろうけど。新しいチーズを探しに、スニッフやスカリーのように次はできるようにしたい。誰にだって変わるチャンスはある。だから作者は最後にこれを書いたのだろう。
「チーズと一緒に前進しそれを楽しもう!」チーズは置いておけばいつかくさるだろうし、食べればなくなる。それは、当たり前のことだが、それに気がつけなかったホーとヘムはきっと選たくをまちがえた。自分達がチーズを探しに旅をしていた時の方がワクワクしてたんじゃない?本にも書いてあった。
「自分のチーズが大事であればあるほどそれにしがみつきたがる」
それはまさにホーの過去であり、ホーの意思なのだろう。だからホーはそれを書いた。そう私は思っている。
 では、どうすればホーのようにまちがわない道を選んでいけるのだろうか。ホーは勇かんだ。恐怖を乗りこえ、幸せを手に入れたのだから。どうすれば変化に気づけるのだろうか。
「新しい方向に進めば新しいチーズがみつかる」
新しい方向に進めば、私の新しいチーズと出会え、考え方や未来が変わるのではないのだろうか。そう考えると、不安なんてなくなってしまうのではないのだろうか。
「新しいチーズをみつけることができそれを楽しむことができるとわかれば人は進路を変える」
新しい道を見つけ、楽しむことができたらホー達のように変われるのではないのだろうか。そう私は思っている。だって、道がいくつあったって困りはしないだろう。大切なのは、その道をどう歩くかじゃないのだろうか。そうでしょ?ホー。
 もちろん古いチーズは永遠に新しいチーズにはもどらない。いわゆる過去と未来だろう。きっとホーは、自分がもっと早く変化に気づいていれば、ヘムも一緒に動いて一緒に新しいチーズを探しにいってくれたかもしれない、と思っているのではないのだろうか。過ぎた過去は取りもどせないし、つもるのは後悔だけ。
 ねぇホー。君はさ、泣かなかったの?自分がどれだけがんばってもチーズは見つからないとか思わなかった?ヘムだってきっと泣いてたんじゃないのだろうか。自分だって変わりたいとは思うけど、変われない自分が悔しい、とか。もしも、チーズにそんなことを変えるほどの力があったなら、悔しいなんて思わなかったら、きっと前の二人にもどるだろう。ずっと、同じ迷路の中をさまよっているのだろう。
「チーズがないままでいるより迷路に出て探したほうが安全だ」
そう書いてある。人が怖いと思っているものは、決してそれほど難しいものではない。自分ができないほど難しくない。なんにせよ、難しくしているのは自分なのだから。自分の心の中に残っている恐怖の方がきっと大きいのだから。怖いのはいやだし、嫌いだが自分を強くしてくれる。だからきっと一番怖いのは何も怖くなくなることだと私は思う。何も怖くなければ、チーズがなくなった絶望感にも気づかないだろう。
 最後に言わせてほしい。自分の人生を変えることができるのは自分だ。自分の思う正しい道を選べばいい。この手には、たくさんの味方がいる。私達のチーズは、変化の先にあり恐怖の先にある。それが私たちの選ぶ新しいチーズの無限の可能性だ。

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◎ニャーロウ賞
小八重 琴子さん(小2)

読んだ本――『コッケモーモー!』 ジュリエット・ダラス=コンテ作  アリソン・バートレット絵 たなかあきこ訳 徳間書店
コッケモーモー!
コッケモーモー!

【作品】
「よーく考えてみる」


 「コッケモーモー!」という絵本を読みました。なき方がわからなくなったおんどりが、「コッケモーモー!」とか「コッケガーガー!」とか、おかしななき方になってしまいます。声にだして読むと、音がおもしろくて楽しいお話です。
 だけど、自分のなき方がわからなくなるなんて、このおんどりはすごくわすれんぼうみたいです。
 …と思っていたら、わたしの頭の中で、声がしました。
  そうかな。そうかな。ほんとにそうかな。
 これは…、読書たんてい、ワンゴローの声です。この声がきこえたら、もう一回よーく考えてみないといけません。
 もしかしたら、このおんどりは、ずっとさみしかったのかも。めうしも、あひるも、ぶたも、同じしゅるいのなかまがいるけど、おんどりは一羽だけです。いつも、ほかのどうぶつたちのことばっかり考えて、なかまになりたいと思っていたら、みんなとそっくりのなき方になっちゃったのかも。
 でも、おんどりがきつねをおいはらったら、みんながほめてくれました。それからは、「コッケコッコー!」となきました。うれしくて自しんがついて、また自分らしくなけるようになったのかな。
 だから、わすれんぼうじゃなくて、なかまがほしかったおんどりなのかもしれません。
  そうかな。そうかな。ほんとにそうかな。
 うん、そうだと思うよ!

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 優秀賞を受賞なさったかたには賞状と1000円ぶんの図書カードを、ニャーロウ賞を受賞なさったかたにはニャーロウからの賞状とプレゼントをお送りします。
 あらためて、おめでとうございます!

読書探偵作文コンクール2020 最優秀賞 全文掲載

 最優秀賞を受賞なさった棚瀬準三さん、根來彩季さんの受賞のことばと作品全文をご紹介いたします。
 なお、選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。 
読書探偵作文コンクール2020 最終選考結果発表!

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎最優秀賞
棚瀬 準三さん(小3)

読んだ本――『もぐらのバイオリン』 デイビッド・マクフェイル作 野中ともそ訳 ポプラ社
もぐらのバイオリン
もぐらのバイオリン

【受賞のことば】
 前回はゆうしゅう賞でうれしかったけど、今回はもっとすごい最ゆうしゅう賞をもらえて、とてもびっくりしました。本を何回も何回も読んで、読むたびに新しいことがわかったのが面白かったです。ぼくは生き物や音楽が大好きなので、大好きなことを文章で伝えられたのが良かったと思います。これからも楽しい本をたくさん読みたいです。

【作品】
「もぐらがかなでる音色」


 キツネやリスが歩く草むらの下には、もぐらの家があった。もぐらは、ひとりきりでくらしていた。
 ある夜、テレビから流れるバイオリンの音色に心をゆさぶられたもぐらは、自分でバイオリンをひいてみたくなった。
 注文したバイオリンが届いてからの毎日は、ひたすられん習をくり返す日々。どんなにおそろしい音にも、ひっかくようなひどい音にもめげず、もぐらはひき続けた。
 すると、だんだん音が出せるようになり、曲がひけるようになっていった。うでがめきめきと上達したころには、何年もの月日が過ぎていた。
 それでも、バイオリンがひけるようになったもぐらは、今までにないほど幸せだった。夜にひく曲を口ずさみながら、昼間にトンネルをほるのだった。

 ぼくはもぐらが大すきで、もぐらの本をたくさん読んできた。バイオリンも大すきで、三歳から習っている。
 だから、この本と出会った時はうれしくて、「わぁ。もぐらがバイオリンをひいている。おもしろい!」と思わず声をあげていた。
 もぐらがバイオリンをひきたくなった理由が、ぼくといっしょなのもうれしかった。ぼくも、「バイオリンの音って、きれいだな。ひいてみたいな」と思ったのがきっかけだった。
 れん習を繰り返しているところも、ぼくといっしょだった。ぼくも、「かならず毎日れん習するぞ!」とちかってから、どんな日もかかさずに、短い日は三十分、長い日は三時間ほど、バイオリンにふれてきた。そのかいあって、どんどん新しい曲がひけるようになってきた。
 ただ、ぼくには先生がついている。けれど、もぐらの先生は自分自身だ。ひとりきりでれん習しなきゃいけないのに、あきらめずにがんばって続けて、どんどん上手になっていて、本当にすごい。
 初めて読んだ時、ぼくは、もぐらの世界は地面の下だけで、地面の上で起きている出来事は、もぐらのゆめだと思っていた。
 けれど、何回か読むと、もぐらの世界は、上の世界ともつながっているんじゃないかと思うようになった。
 十何回か読むと、もぐらの家に根をはる木がだんだん成長していることや、地上の鳥が、バイオリンの音のひどさにびっくりしていること、木の上にいた小鳥たちが戦争でにげてしまったことなんかの、細かいところに気が付いた。
 そして、「もぐらのゆうごはんは、からあげかな。こんな生活をして、太っちゃったのかな」「テレビにうつっている、へんな持ち方のバイオリニストはだれかな」と、今まで考えつかなかったことを想像した。
 何十回か読むと、イラストの音ぷが何かの曲を表しているような気がしてきた。そこで五線ふを書き起こしてみたら、二十ページからは、ブラームスの交きょう曲第一番。二十六ページからは、ベートーヴェンの交きょう曲第六番『田園』三十ページからは、ベートーヴェンの交きょう曲第九番第四楽章『かんきの歌』がかくれていた!
 もぐらのバイオリンの音がひどい最初のころは、五線ふがかい読できないくらいグニャグニャだということにも気付いた。ただのイラストだと思っていた五線ふが、もぐらのバイオリンの上達ぐあいを表していたのだ。
 この本は、文章を中心に読むと、バイオリンと出合ったもぐらが幸せになっていく様子がわかる。イラストの五線ふをたどると、バイオリンの音色が美しく変化していく様子がわかる。さらに、イラストを中心に読むと、音楽がかなでる「きせき」がわかる。
 バイオリンは、自分で音を作り、歌うようにひくことができる。そのかわり、自分の心が表れやすくもある。もしも、ギコギコした音がでてしまった時には、ひき方の見直しだけじゃなく、自分の心と向き合う必要があるのだ。
 もぐらは、バイオリンの技術をみがくだけじゃなく、いつも自分の心と向き合っていた。だから、美しい音色が人々の心に届き、怒りや悲しみをとかすことができたんだ。
 よく見ると、もぐらがかなでる音色をききながら、木の根っこまで、だんだんハートがたになっていた。
 ぼくは、もぐらに教えてあげたくなった。
「きみは、ばかなんかじゃないよ。きみがかなでた音楽があまりにも美しいから、人間は戦争をやめたんだ。きみと、きみの音色が、世界を変えたんだよ」

「カナヘビのバイオリン」
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◎最優秀賞
根來 彩季さん(小3)

読んだ本――『3びきのくま』 トルストイ作 バスネツォフ絵 おがさわらとよき訳 福音館書店
『三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話)』 石井桃子編・訳 J・D・バトン絵 福音館書店
3びきのくま イギリスとアイルランドの昔話
3びきのくま    イギリスとアイルランドの昔話

【受賞のことば】
 算数好きなわたしは、自由に考えることが好きです。今回の作文でも、算数の問題を解くように想像したとおりに書いてみました。がんばったところは、時代から時代への変化をクマたちにもえいきょうさせ、関係をつなぐところでした。最優秀賞と聞いたときは、家族とともにおどろきでいっぱいでした。将来は理系に進みたいわたしですが、ことばをもっとうまく使えるように、たくさんの本を読んでいきたいです。

【作品】
「三びきの熊の大旅行」


 私は二つの「三びきのクマ」を読みました。すると、書かれた国がちがうのに、どちらもクマが三びきと、人間が一人でてきます。私はふしぎに思いました。
 そこで、二つの話をくらべてみました。
 ロシアの話では、くまは親子で、女の子が家にしのびこみ、スープをのんでしまいます。また、イギリスの話では、クマは親子とは書いておらず、悪いおばあさんがクマの家にしのびこみます。そして、おかゆをたべてしまいます。女の子も悪いおばあさんもさいごににげだしますが、どうなったかは分かりません。
 そこで考えてみました。3びきのくまと女の子は、ロシアから船でイギリスに行ったのではないでしょうか。
 するといろいろなストーリーが頭にうかんできました。ロシアの親子のくまがイギリスに行ったあと、ミシュートカには子どもが三びきうまれました。またロシアの女の子はイギリスににげて、年をとって小さいおばあさんになりました。そして、クマの三兄弟の家にしのびこみ、この時も、みつかってにげだしたのです。
 このように、ロシアとイギリスのお話はつながっているように思いました。すると私の頭にはお話のつづきがもくもくとわいてきたのです。

 それから、十年の月日がたちました。

 『三びきの熊』
 イギリスの小さいおばあさんは、むすこに会うために日本にやってきました。そのころには、小さいおばあさんは、いい人になっていました。そして、もっと小さいおばあさんになりました。ぐうぜん日本にきていたクマも年をとっていました。
 もっと小さいおばあさんは、イギリスでにげだしてから、三兄弟のクマとは会っておらず、クマも、もっと小さいおばあさんもおたがいのかおをわすれかけていました。
 ある日、もっと小さいおばあさんが森にさん歩に出かけていると、年をとった三兄弟のクマに会いました。三兄弟のクマはもっと小さいおばあさんがいい人になったことを知り、もっと小さいおばあさんをゆるしました。そして、家にあんないし、やわらかくて食べやすいフワフワたまごオムライスをごちそうしてくれました。
 また何年かがすぎていきました。
 もっと小さいおばあさんが、へやでゆっくりお茶をのんでいると、まごから電話がかかってきました。アメリカの家に来ていっしょにすまないか、というのです。もっと小さいおばあさんはアメリカにも行ってみたい、と思いました。そしてすぐにアメリカ行きのひこうきにのりこみました。ひこうきにはぐうぜん年をとった三兄弟のクマのむすこたちものっていました。三びきとも、かっこいいぼうしをかぶっています。ならんですわった、もっと小さいおばあさんは、クマたちに昔の話をたくさんきかせました。
 しばらくすると、アメリカに着きました。
 もっと小さいおばあさんは、まごに会った後、その家でしあわせにくらしました。もっと小さいおばあさんは、もっともっと小さい100才おばあさんになっていました。
 ある日、100才おばあさんが森を一人でさん歩していると、としをとった三兄弟のクマのまごに会いました。すると、家にあんないされ、こんどは、トロトロのチョコレート入りカレーライスをごちそうしてくれたのです。100才おばあさんはしあわせな気持ちになって、まごのクマ一ぴきと、歩きながら話しているとかぎがおちているのに気づきました。目の前にはおしろの形をした家がたっています。
 100才おばあさんはおそるおそるかぎで戸をあけました。すると、そこには女神さまが立っていました。女神さまは100才おばあさんがやさしくなったことをほめ、小さい女の子にすがたをかえました。そして、まごのクマ一ぴきといっしょに、ロシアの森の中までつれていってくれました。
 もしかすると、ロシアの女の子は100才おばあさんのうまれかわりで、ミシュートカは三兄弟のクマのまごのクマだったのかもしれません……

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 最優秀賞を受賞なさったおふたりには、賞状と5000円ぶんの図書カードをお送りします。
 あらためて、おめでとうございます!

2020年12月30日

読書探偵作文コンクール2020 最終選考会レポート&総評

 最終選考会のもようをお伝えします。

 今年はWeb会議ツールを使用して、オンラインで選考会をおこないました。例年どおり3名の最終選考委員が、1次選考を通過した13作品を1作品ずつ検討していき、話し合いを重ねた結果、最優秀賞2作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞2作品が選ばれました。
 入賞した7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載する予定です。
 最終選考委員のみなさんから、1次選考を通過した作品それぞれへの感想やアドバイスをいただきましたので、ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。


小八重 琴子さん(小2)
読んだ本――『コッケモーモー!』 ジュリエット・ダラス=コンテ作  アリソン・バートレット絵 たなかあきこ訳 徳間書店

コッケモーモー!

ないとう「ユニークな発想だなと思いました。コッケモーモーは何度も読み聞かせで自分でも使っていますが、ほかの動物の声で鳴くのが、寂しくて友達になりたかったからだっていう発想を今までしたことがなかったので、なるほどそういう読み方もあるなぁと新鮮な気持ちがしました。絵でつけてくれたワンゴローが可愛くて、細かく色々考えてくれているのが素晴らしいです」
宮坂「ただ楽しかったで終わらないで、本当に鳴き方を忘れただけなのかなって一歩踏み込んで考えたところが素晴らしいなぁと思いました。感想文でありながらも、オリジナルキャラクターが入ってきたりして、創作ものを読んでいるみたいな不思議な味わいがありました。終わり方もすごく決まっていて、とても楽しかったです」
越前「ニャーロウのライバルが現れたという感じがしました。独特のタイミングでサプライズのように絵が出てきて、キャラクターに問いかけていくことで本の読み方が深まっていく、理想の読み方ができています。ブロッコリーのしおりがなんだかよくわからないけど楽しそうです」


中橋 彩希さん(小2)
読んだ本――『時計つくりのジョニー』 エドワード・アーディゾーニ作 あべきみこ訳 こぐま社

時計つくりのジョニー

宮坂「ジョニーの気持ちについて思いをめぐらせているようすが、主人公への手紙という形で素直に伝わってきました。最後にスザンナにプレゼントをあげたほうがいいというアドバイスがとてもリアルで、プレゼントのデザインも素敵でした。文章がしっかり書けていて読みやすかったです」
越前「登場人物に語りかけている形式で、本を楽しんで読んだのがわかります。つづけざまに質問が出てくるくらいに深く読み込んできていますね。その結果として、この本を読みたい気持ちにさせる作文になっていると思います」
ないとう「わたし自身この本を読んでみて、まわりの大人たちがひどいことに憤慨したのですが、中橋さんの作文からは、ジョニーが自分で工夫をしたり学んだりして、ひとりで時計をつくりあげていくその過程に心を打たれたのだということが直球で伝わってきました。子どもらしい本の読み方、子どもの本の楽しさを改めて感じました」


棚瀬 準三さん(小3)
読んだ本――『もぐらのバイオリン』 デイビッド・マクフェイル作 野中ともそ訳 ポプラ社

もぐらのバイオリン

越前「まず、点の打ち方がとってもうまく、ひじょうにわかりやすくなっていること、それから、豊かな言葉が使われていることに感心しました。あらすじ、自分の感想のあとに、客観的な分析に移り、まとめと読者へのメッセージで終わるという理想の構成で、完成度の高い作文だと思いました。カナヘビの作文はそれ自体で楽しく、大人びた完成度の高さとかわいい感じが混じっていて楽しかったです」
ないとう「いやーこれはもう本当にすごかったです。何度も何度も絵本を読んだことと、自分が教わってるバイオリンとが、幸福につながった作文なのかなと思いました。音符から曲を読みとったところもすごいです。ここまで読み込んでもらったら本当にこの絵本も本望というか、そういう意味でも素晴らしい作文だなと思います」
宮坂「もぐらが好きでバイオリンも習っているとのことなので、まさにドンピシャの本だったでしょうね。何十回も読んだという言葉に実感がこもっていました。読み進めるたびに発見があったこともわかり、洞察力の鋭さにも驚かされました。音楽はすばらしいと思わせるラストもよかったです。カナヘビの郵便箱の絵に学名をつけたのは、モグラのポストに名前があったからかな。細かいところもよく見ているなと感心しました」


根來 彩季さん(小3)
読んだ本――『3びきのくま』 トルストイ作 バスネツォフ絵 おがさわらとよき訳 福音館書店
『三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話)』 石井桃子編・訳 J・D・バトン絵 福音館書店

3びきのくま イギリスとアイルランドの昔話

ないとう「二次創作の形として新しいなあと思いました。昔からよく知られているお話をもとに、3びきのくまと女の子が点々と各地を旅した挙句、おばあさんが生まれ変わるという、ネヴァー・エンディング3びきのくまみたいな奇想天外なお話になっています。ファンタジーを超えてSFの世界に入れるんじゃないかみたいな、新鮮な気持ちがしました。描写の豊かさにも感心しました」
宮坂「似ているふたつの物語に気がついて、比べてみたり、つながりを考えたりしているところが素晴らしいです。ロシアのお話の女の子とクマたちがイギリスへ行って、イギリスのお話のおばあさんとクマになったのでは、というのはなかなか思いつかないユニークな発想だと思いました。想像をふくらませていろいろ考えていて、このお話を楽しんで読んだのがわかりました」
越前「このコンクールを10年やっていて、こういうのははじめてではないかというくらい新鮮でした。似た作品の比較から二次創作に発展し、さらにそこから元の作品にもどっていくという壮大な世界観をつくってくれたことに感動しました。細かいところに作り手としての気づかいが感じられて、物語を読むのも書くのも好きなのだろうというのがわかります。インターナショナルな展開もいい。壮大な物語をつくってくれてありがとうといいたいです」


藤掛 七緒さん(小3)
読んだ本――『宇宙について知っておくべき100のこと』 竹内薫訳・監修 小学館

宇宙について知っておくべき100のこと

宮坂「宇宙についての本から発想を飛ばして、宇宙旅行に行く物語を書いてくれていて、本を心から楽しんで読んだことが伝わってきました。宇宙だけれど「ぐるなび」があったりクレーンゲームがあったり、自分が日常的に興味があるものが入っているのがおもしろいです」
越前「科学系の本をもとに創作をしていて、楽しくてしかたがなくて書いたのが伝わってきます。まずそうな宇宙食も、おいしいのではないかと感じるほどのいきおいがあります。こういういきおいのある作文は小学生ならではで、とにかく楽しかったです」
ないとう「思わず吹き出すようなところがあって、お笑いのセンスがあるというか、いろいろ頭の中にネタが詰まってるんじゃなかろうかと思わせるところがありました。不思議なところもあり、おもしろかったです」


佐藤 菜乃香さん(小4)
読んだ本――『モモ』 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳 岩波書店

モモ

越前「最初の段落で、自分の実体験から語っていて、読者をひきつけていますね。感想というよりも、分析や批評の段階に入っている作文です。時間と心の関係などについて、自分なりの分析、批評をしていて、本を読むということについて高いレベルにあることがわかります。いい作文です」
ないとう「時間と心の関係についての難しいことを、自分の頭の中で考えて順序立ててよく書いてます。本のなかの一節を取って引用しているわけではなくて、全体で書かれていることを自分の言葉で要約して書いていて、本当にすごいなと思いました。モモとほかの人との関係について、自分の考えの変遷を書いて、結論に落とし込んでいるのも見事です」
宮坂「モモもまわりの人の時間をうばっているのではないかという疑問から、自分の経験を思いだして時間と心の関係に気がつき、心の持ちようによっては時間はうばわれたことにならないという結論に導いていく。その流れが論理的で説得力がありました。ここまで時間について深く考えられるのがすごい。お世話になっているお医者さんのエピソードなども楽しかったです」


詩人 さん(小4)
読んだ本――『ホットケーキできあがり!』 エリック・カール作 アーサー・ビナード訳 偕成社

ホットケーキできあがり!

ないとう「絵本の中身を詩にするというのもなかなか新しい形でユニークだなと思います。「あの黄金の輝き」というところ、絵本の中からとったのではなくて自前の表現なので、素晴らしいなと思いました」
宮坂「絵本の内容を詩にするという発想がおもしろいですね。オリジナルの表現を入れているのもいいです。詩が好きとのことなので、本の内容を詩にするだけでなく、オリジナルの詩もどんどん書いていってほしいです」
越前「とてもリズムのいい詩ですね。ほんとうに詩が好きなんだなとわかります。けっしょうという終わり方も、いいことばの使い方ができていて、美的センスを感じます。いちごジャムをあえて赤いジャムと書いて考えさせるところなど、文学、創作の手法を学んでいる過程にあるのだなと思われるので、これからもいい作品を書いてもらいたいです」


中込 恵楠さん(小4)
読んだ本――『こちらゆかいな窓ふき会社』 ロアルド・ダール作 清水達也・清水奈緒子訳 評論社

こちらゆかいな窓ふき会社

宮坂「構成がしっかりしていますね。身近な新型コロナの話題からスタートして読者の興味をひき、お菓子のことから本の紹介にはいり、あらすじや感想までしっかり書けています。いまのきびしい世の中で、想像して楽しむことの大切さを伝えてくれる作文です。お菓子とサッカーがすきなんだろうな、お兄ちゃんは野球をやっているのかな、などと想像しました。兄弟の仲のよさまで伝わってきました」
越前「タイトルのつけかたがとてもいいですね。どんな作文なのかな、と思わせます。本の内容から想像する楽しさへとつなげていく流れに、構成の巧みさを感じました。お菓子への強い思いがガンガンつたわってきて、そこが最終的にこの本を読みたくなる力になっています」
ないとう「やはり、導入がすごくいい。本の内容紹介もきちんとできていて、お菓子への想像も羽ばたいていて、とてもおもしろく読みました。毎年思うのですが、ダールの作品は、子どもの想像をすごくかきたてる力があるのかな。足が速くなるベースボールガム、いいですね。本当に「想ぞうするって、ゆかいだ」というまとめかたそのものです」


波多 美理愛さん(小4)
読んだ本――『ファーブル昆虫記』 ジャン・アンリ・ファーブル作 奥本大三郎訳 集英社

ファーブル昆虫記 1 ふしぎなスカラベ

越前「直球勝負の作文ですね。とてもまとまりがよくて、すがすがしい。会話からはいって読者の興味をひいたうえで、説明につなげていく書き出しもうまいです。ファーブルが書いたことをしっかり咀嚼して、自分のものにして、最後にメッセージを発していくという三段階がしっかり踏めている作文です」
ないとう「本当は虫がきらいだといいながら、ファーブルの資料館まで見にいっているんですね。すごく幸せな読書だなと思いました。本を読み、それが行動につながり、自分のなかでフィードバックが行われて考えが変わっていくようすが、よくわかりました。読書と生活の融合という感じで、いいなあと思います」
宮坂「文章がしっかりしていて、書き出しにも工夫が感じられます。本から興味がひろがり、資料館にまで行くという行動力もすごいですね。きらいだった虫への考えが大きく変わり、虫が暮らしやすい自然環境を維持することが自分たちの未来にとっても大切だと気づいた過程が、作文からよく伝わってきました。環境維持のための具体案を挙げてくれていますが、本当に行動にうつしてくれそうです」


三原 真理愛さん(小4)
読んだ本――『きのうのぼくにさようなら』 ポーラ・フォックス作 掛川恭子訳 あかね書房

ないとう「これは二次創作ですが、もとの本よりもこちらのほうがいきいきしていて、いいくらい。晶洞石が象徴することも読み取ってうまくお話のなかにいかしているし、とてもよく書けていると思いました。最後にいじわるな子をほめて終わるという決着のつけかた、終わりかたもいいですね」
宮坂「原作は1968年に書かれていて、けっこうわかりにくいところもある本です。読んでもやもやした部分を、創作をとおして自分のなかではっきりさせたのかな、と感じました。本のなかのモチーフを自分なりに消化して、オリジナルのストーリーにしているのが素晴らしいです。最後のキッチンのシーンから家庭のあたたかさも感じられました」
越前「もとの本を踏み台としたうえに、新しい世界をしっかり築いていますね。この話だけを読んでもわかりやすく、言いたいことを正確につたえる技術をもっていると思います。味わいのある絵の表紙もとてもいい。全体になつかしくあたたかな感じがあり、「友だちへ」というメッセージから、読者としての友だちを意識していることも伝わってきました」


坂田 史さん(小5)
読んだ本――『もし大作曲家と友だちになれたら…』 スティーブン・イッサーリス作 板倉克子訳 音楽之友社

もし大作曲家と友だちになれたら…

宮坂「字が小さくて文章量も多い本なので、本当に音楽の好きな子じゃないと読めないだろうなと思いました。ピアノを習っているとのことで、作曲家たちのエピソードを楽しく読んだことが伝わってきました。印象に残った作曲家のエピソードがうまく紹介されていて、この本を読んでみたいと思わせる作文です。これからも、コロナ禍で癒しになったというピアノと読書をつづけてほしいと思います」 
越前「モーツァルトとモーツァルト以外の作曲家のちがいが簡潔に書かれているところなど、わかりやすいですね。もとの本の魅力がもう少し伝わってくるとよかったけれど、自分のことや社会情勢との比較も、短いなりにうまくバランスがとれていて、よく書けています」
ないとう「もっぱら作曲家の性格に注目しているところがおもしろいです。ずっと音楽とつきあいながら、またこの本を読み返してみると、注目する部分も変わっていくんじゃないかな。きっと、性格以上のことも読み取っていくことになるのではないかと思います」


鈴木 結菜さん(小6)
読んだ本――『チーズはどこへ消えた?』 スペンサー・ジョンソン作 門田美鈴訳 扶桑社

チーズはどこへ消えた?

越前「否定からはじまる書き出しがおもしろいですね。短い文の積み重ねから、テンポよく本にのめりこんでいくさまがリアルに感じられました。構成も理想的で、深く読み込んでいることがわかります。この本の編集者に読んでもらいたくなる作文。まんがもふくめて、もとの本を読みたくなるような紹介文になっています」
ないとう「ベストセラーになった本ですね。はじめ「きれいごとだ」と思ったところから、チーズを探しにいくネズミに心を寄せて、最後の結論にいたる、その考えの転換点がどこにあったのかを書いてくれたら、さらによかったのではないかと思います」
宮坂「本の批判からスタートして、本に出てくるキーワードを作文にとりこみながら素直に感想を書いているところが、とてもいいですね。「一番怖いのは何も怖くなくなることだ」という深い考察もあって、感心しました」


森 小久良さん(小6)
読んだ本――『月の光を飲んだ少女』 ケリー・バーンヒル作 佐藤見果夢訳 評論社

月の光を飲んだ少女

ないとう「本を探すエピソードからはじまるのは、楽しいですね。この本はいろんな登場人物の視点から語られるエピソードが順繰りにでてきて、けっこうむずかしい話なので、よく読みこなしたなと思います。ただ、この本をまったく知らない人が作文を読んだとき、やはりちょっとわかりにくいかな。固有名詞をたくさん登場させるより、ざっくりとこの物語の世界のなりたちを説明していくのがいいように思います。でも、とても熱量の高い作文で、全体をよく把握していると思いました」
宮坂「いろんな人の視点がはいってくる複雑な話なので、あらすじをまとめるのがむずかしかったと思いますが、登場人物の紹介、舞台設定の説明、印象に残った言葉などがきちんとまとめられていました。本の選びかたの話もおもしろかったです。締めもうまくて、普段からよく本を読んでいるからこそ書ける感想文だと感じました」
越前「本の選びかたという外枠と本の内容自体との二重構造になっていますね。あらすじは確かに少しわかりにくいけれど、読みどころはちゃんと伝わってきました。本そのものより本選びの新しいアドバイスみたいなところを書いているのが、ちょっと変わっていて、おもしろい作文です」


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【総評】

越前 「もうこのコンクールの選考委員を10年やっていますが、今年はこれまでに読んだことのない新しいタイプの作文をいくつも読ませてもらえて、とてもおどろいています。本を読むこと、特に外国の本を読むことと、それをきっかけに自分のことばで何かを書くことで、みなさんの世界はまちがいなくひろがっていき、想像する力も観察する力もどんどん身につきます。来年も楽しみにしています。」

ないとう「今年もまた、絵つきのものをふくめた感想文、詩、絵物語、二次創作などなどバラエティ豊かな作文が集まりました。何より、自分の目と自分の好みでさがしあてた本を紹介しようという気持ちが強く伝わってくる作文が多くて、とてもうれしかったです。
毎年いうのですが、賞に入るかどうかは、最終的には「運」のようなところもあります。入選できなかったみなさんも、二次審査に残れなかったみなさんも、がっかりなさらずに。みなさんの熱意は、しっかり伝わっていますよ。来年もまた、自分の大好きな1冊をさがしあてて、それぞれの得意な形でその本のことを教えてください。お待ちしています!」

宮坂「ウィルスの大流行という大変な状況の中、今年もたくさん応募してくださり、本当にありがとうございました。感想文、手紙、詩、創作、絵、図、マンガなど、入賞作かどうかにかかわらず、みなさんの楽しい作品の数々に元気をもらいました。実際に外国に行くことがむずかしくても、本で世界を旅することは可能です。来年も読書探偵のみなさんからの「読書の旅」の報告を待っています!」
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 今年もすばらしい作品をおよせくださったみなさん、ありがとうございました。
 今後はこちらのサイトで、みなさんが読まれた本を順に紹介していく予定です。お楽しみに。
 また、中高生部門のサイトでも、コンクールの結果や入賞した作文の全文が公開される予定ですので、ぜひご覧ください。
 来年もたくさんのご応募をお待ちしております!