なお、選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。
読書探偵作文コンクール2021 最終選考結果発表!
(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎最優秀賞
川上 莉央さん(小5)
読んだ本――『星の王子さま』 サン=テグジュペリ作 三田誠広訳 講談社
星の王子さま
【受賞のことば】
ある日、家にいると、お母さんがにこにこしながら電話をしていました。
そして、
「おめでとう」
と言ってくれました。うれしかったです。
この作文を書く時は、こんな感じかなというのは分かるけど、その気持ちを言葉にできなくて何度も何度も読み返しました。なので、書けた時は達成感でいっぱいでした。また、このコンクールに応募してみたいと思っています。
【作品】
「かんじんなことは、目では見えない」
私は小学三年生の時にも『星の王子さま』を読んだことがあります。その時は絵がとてもかわいくて、どんなお話なんだろうと読みすすめましたが、読み終わったあとなんだか変な感じがしたのを覚えています。読んだのにどんなお話かよく分からない、楽しかったとか悲しかったとか、そういう感想も特にない不思議なお話でした。その後は一度も読んでいませんでしたが、私も五年生になったから、少しは分かるかもしれないと思い久しぶりに読んでみました。
今回読んでみて思ったことは、なにかを好きになること、大切に思う気持ちは、目には見えないけれど、とてもすてきなことなんだよということを、サン=テグジュペリは私達に伝えたいんじゃないかということです。
そして、その気持ちは、すぐに簡単につくられるものではなくて、話をしたり遊んだり、お世話をしたり、時にはケンカしたりしながら、一緒の時間をすごしていくなかで時間をかけて生まれてくるものなんじゃないかということです。その気持ちは人間に対してだけではなく、私が飼っていたペットが他の犬や猫とは全く違う特別な存在であると感じるのも、そこに私の気持ち、想いがあるからだと思います。他の人からみたら、たくさんいる人の中のひとり、たくさんいる動物の中の一匹にすぎなくても、私にとっては大切なかけがえのない存在になる、それが愛するということなんだと思います。うまく説明できないけれど、好きよりはもっと強い、深い気持ちだと感じました。
その愛する気持ちは、キツネが「自分に《なついて》くれたもののことは、いつまでたっても《なつかしい》はずだ。」と言っているように、姿かたちが変わっても、天国へ行ってしまっても、ずっと忘れることはないのだと思います。
今回約二年ぶりに『星の王子さま』を読んでも、よくわからなかったことがあります。それは、どうして王子さまは死んでしまったのかということです。しかも自ら毒ヘビにかまれることを望んでいます。キツネの「あんたはあんたの花に《つぐない》をしなければならない……。」という言葉がなんだかとても気になりますが、今の私にはどういうことか理解できませんでした。
またいつか私は『星の王子さま』を読むと思います。何年後になるかはわかりませんが、王子さまの死について理解できる日がきたらまたこの続きを書きたいと思います。
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◎最優秀賞
波多 美理愛さん(小5)
読んだ本――『木を植えた男』 ジャン・ジオノ作 寺岡襄訳 あすなろ書房
木を植えた男
【受賞のことば】
昨年の優秀賞に続き、今年は最優秀賞をいただき、おどろきと喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。この本をきっかけに、こ独ということやもくもくと一つのことを続ける意味について考え、今の自分と向き合うことができました。私は本を読んだり映画のDVDを観たりすることが何よりも大好きです。これからも外国の物語もたくさん読んで、色々なまなざしに出会いたいです。大人になって11才の私をふり返った時、最優秀賞をいただいたことがすてきな思い出として残っているはずです。
【作品】
「心の世界―『木を植えた男』を読んで」
不毛の地に木を植え続ける。ブフィエの信念だった。私は、このもくもくと、とほうもないことをやり続けながらも、たんたんとしているブフィエのすがたにひかれてしまう。何もできないと悲しむより、何かできることを実行していく、やりぬくしかない、そんな思いにさせられる。
一人息子をなくしたブフィエは何か世の中の役に立つことがしたいと思い、来る日も来る日も一人で木を植え続けた。第一次世界大戦の時も、第二次世界大戦の時も変わらずに。でもたった一人でどんぐりを植え付けたとしても、見わたす限りのこう野が一体どうなるというのか、私は思わず本に問いかけてしまった。ブフィエは家族を失って、こ独の世界に入ったと思う。もしかしたらその土地は、ブフィエの心の世界だったのかもしれない。あれた心の地に命の種を植えようとしていたのかもしれない。何万本もの木を植えたいという願いの中には、ブフィエの意思だけではなく、そうしなければいられなかった思いもあったのではないだろうか。
ブフィエは戦争中も木を植え続けた。一人のこ独な老人がせっせと続けた行いが、世界を変えていく。長い年月が過ぎこう野は木でいっぱいの豊かな土地になり、そこでくらす人はみんな幸せになった。一人ができることは限られているかもしれない。でも強い心を持ち続け、こつこつと最後までやり通せば、大きなことができると私の心は勇気づけられた。神のみわざのような行いは、あきっぽい私には想像もつかなかった。私は自分の思いにちゅう実に、そしてそれをやり通すなんてことは全然できない。勉強もピアノも体そうも、自ら進んでやることができない時もある。けれど、この本を読んで考え方が変わった。小さなことを積み上げていけば、いつかは大きなものとなる。ブフィエが不毛の地を木々でいっぱいにすることを思いついたように、私も何かに一生けん命取り組みたい。人の行動は、人の心が作り上げるのだと気づいた。
ブフィエはいつも一人でこ独に見えた。でも本当にそうだったのだろうか。こ独な心は、だれもがどこかで持っている感情だ。こ独には色々ある。人の中にいてもこ独を感じる時がある。悲しみの中のこ独もある。一人でいるこ独よりも、もっとつらいこ独もある。ブフィエは一人だったが、自分のやっていることに確信を持つことで、むしろこ独ではなかったのだと思う。だから私はこの本を読んでいても、不思議なくらい悲しみを感じることがなく、逆に力強さを感じることができたのだ。
逆境の中でも立ち向かっていく強い心は、試行さくごのくり返しの中で身に付いていった。失敗してもあきらめずに乗りこえていく力の大きさを知り、私はしばらくこの本からはなれることができなかった。
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◎最優秀賞
棚瀬 準三さん(小4)
読んだ本――『ぼくのあいぼうはカモノハシ』 ミヒャエル・エングラー作 はたさわゆうこ訳 徳間書店
ぼくのあいぼうはカモノハシ
【受賞のことば】
今年も最優秀賞に選ばれて、びっくりしました!とてもうれしいです。この本を読んで、カモノハシの特徴を調べてみました。調べてみたら、ほにゅう類なのに卵を産んだり、毒があったり、色々面白いことがわかって、しかもそれを作文に生かせたので、よかったと思います。ぼくは生きものが大好きなので、これからも面白い生きものの本をたくさん読みたいです。ありがとうございます。
【作品】
「ぼくらは無二の生きものだ」
カモノハシ(Platypus)は猫くらいの大きさをした、平らなくちばしが特徴のふしぎな生き物だ。
ほ乳類なのに卵を産み、くちばしと水かきをもつ。くちばしは、やわらかいかと思えば、電気センサーがついていて、真っ暗な水の中でも魚をしとめてしまう。
こともあろうに、オスの後ろ足からは毒まで出せてしまうという、まったくもって学者泣かせの生き物だ。
人間が乱かくしたことが原因で、今では、オーストラリアにしか生息していない。
「キュウウウ」
主人公のルフスが、かなしそうにないているシドニーと出会ったのは、サッカーの練習試合の後のこと。 シドニーは、人間の言葉がしゃべれる、おしゃべりでとっても変なカモノハシだ。
「カモノハシは幸運をもたらすといわれています。ぼくがいっしょなら、わるいことは、おこりません」
なんとあやしい、カモノハシ!
木にのぼりたいシドニーは、ルフスにつれていってとせがむ。とっても不安そうなルフスにシドニーは、「あぶない? いやいや、ぼくがついてます。カモノハシは木のぼり名人ですよ」「そもそも、コアラに木のぼりを教えたのはカモノハシですよ」なんて、むねをはっておきながら、最終的には、木からおりれなくなり、助けてくれたおとなりのベルガーさんに、「カモノハシもわるくないが、こんど木にのぼるときは、ヤギに教わるといいぞ」なんて、いわれる始末。
なんとたよりない、カモノハシ!
シドニーは、「カモノハシは作戦なんて立てませんから」といいつつ、この後もどんどんへんてこな作戦を立てていく。
例えば、「バスを手に入れましょう」とルフスにいって、いっしょにオーストラリアへ行こうとさそう。
ぼくが持っているおもちゃそっくりのバスを見て、「よくできた仕組みですね。考えだしたのは、まちがいなく、カモノハシでしょう」といっては、鼻高々。かと思えば、大あわてで走り出し、勝手に危険な行動にでる。
なんとおっちょこちょいな、カモノハシ!
そうはいっても、シドニーとルフスの関係は、すごくいい。たったひとりで心細かったシドニーが、ルフスにだかれて、「いい気持ち……あったかくて、オーストラリアにいるみたいだ」と思えたことや、「ぼくが、力になれると思う?」と自信がなかったルフスが、「なれるかどうかじゃないんだ。あなたしか、いないんです!」というシドニーの言葉にハッとして、「まだ子どもだけど、きっと力になれる。いっしょに世界の果てまでだって行けるはずだ」と、勇気がわいてきたところなんか、すごくいい。
シドニーは、カモノハシについての紹介をする時に、「ほんとうの名まえは、ちょっとちがうんです」「ほんとうは『美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの』といいます」といっていた。おっちょこちょいでたよりないシドニーだったけど、ルフスと出会ってはじめて、真のカモノハシ、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれたんじゃないかな。
もしかすると、だれもが、自分にぴったりのあいぼうと出会った時に、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれるのかもしれない。
ぼくも、ルフスとシドニーのような、『ぼくのあいぼうは〇〇』という本が書けるくらいの出会いをして、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になってみたくなった。
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最優秀賞を受賞なさった3人のかたには、賞状と5000円ぶんの図書カードをお送りします。
あらためて、おめでとうございます!