2021年01月17日

読書探偵作文コンクール2020 最優秀賞 全文掲載

 最優秀賞を受賞なさった棚瀬準三さん、根來彩季さんの受賞のことばと作品全文をご紹介いたします。
 なお、選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。 
読書探偵作文コンクール2020 最終選考結果発表!

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎最優秀賞
棚瀬 準三さん(小3)

読んだ本――『もぐらのバイオリン』 デイビッド・マクフェイル作 野中ともそ訳 ポプラ社
もぐらのバイオリン
もぐらのバイオリン

【受賞のことば】
 前回はゆうしゅう賞でうれしかったけど、今回はもっとすごい最ゆうしゅう賞をもらえて、とてもびっくりしました。本を何回も何回も読んで、読むたびに新しいことがわかったのが面白かったです。ぼくは生き物や音楽が大好きなので、大好きなことを文章で伝えられたのが良かったと思います。これからも楽しい本をたくさん読みたいです。

【作品】
「もぐらがかなでる音色」


 キツネやリスが歩く草むらの下には、もぐらの家があった。もぐらは、ひとりきりでくらしていた。
 ある夜、テレビから流れるバイオリンの音色に心をゆさぶられたもぐらは、自分でバイオリンをひいてみたくなった。
 注文したバイオリンが届いてからの毎日は、ひたすられん習をくり返す日々。どんなにおそろしい音にも、ひっかくようなひどい音にもめげず、もぐらはひき続けた。
 すると、だんだん音が出せるようになり、曲がひけるようになっていった。うでがめきめきと上達したころには、何年もの月日が過ぎていた。
 それでも、バイオリンがひけるようになったもぐらは、今までにないほど幸せだった。夜にひく曲を口ずさみながら、昼間にトンネルをほるのだった。

 ぼくはもぐらが大すきで、もぐらの本をたくさん読んできた。バイオリンも大すきで、三歳から習っている。
 だから、この本と出会った時はうれしくて、「わぁ。もぐらがバイオリンをひいている。おもしろい!」と思わず声をあげていた。
 もぐらがバイオリンをひきたくなった理由が、ぼくといっしょなのもうれしかった。ぼくも、「バイオリンの音って、きれいだな。ひいてみたいな」と思ったのがきっかけだった。
 れん習を繰り返しているところも、ぼくといっしょだった。ぼくも、「かならず毎日れん習するぞ!」とちかってから、どんな日もかかさずに、短い日は三十分、長い日は三時間ほど、バイオリンにふれてきた。そのかいあって、どんどん新しい曲がひけるようになってきた。
 ただ、ぼくには先生がついている。けれど、もぐらの先生は自分自身だ。ひとりきりでれん習しなきゃいけないのに、あきらめずにがんばって続けて、どんどん上手になっていて、本当にすごい。
 初めて読んだ時、ぼくは、もぐらの世界は地面の下だけで、地面の上で起きている出来事は、もぐらのゆめだと思っていた。
 けれど、何回か読むと、もぐらの世界は、上の世界ともつながっているんじゃないかと思うようになった。
 十何回か読むと、もぐらの家に根をはる木がだんだん成長していることや、地上の鳥が、バイオリンの音のひどさにびっくりしていること、木の上にいた小鳥たちが戦争でにげてしまったことなんかの、細かいところに気が付いた。
 そして、「もぐらのゆうごはんは、からあげかな。こんな生活をして、太っちゃったのかな」「テレビにうつっている、へんな持ち方のバイオリニストはだれかな」と、今まで考えつかなかったことを想像した。
 何十回か読むと、イラストの音ぷが何かの曲を表しているような気がしてきた。そこで五線ふを書き起こしてみたら、二十ページからは、ブラームスの交きょう曲第一番。二十六ページからは、ベートーヴェンの交きょう曲第六番『田園』三十ページからは、ベートーヴェンの交きょう曲第九番第四楽章『かんきの歌』がかくれていた!
 もぐらのバイオリンの音がひどい最初のころは、五線ふがかい読できないくらいグニャグニャだということにも気付いた。ただのイラストだと思っていた五線ふが、もぐらのバイオリンの上達ぐあいを表していたのだ。
 この本は、文章を中心に読むと、バイオリンと出合ったもぐらが幸せになっていく様子がわかる。イラストの五線ふをたどると、バイオリンの音色が美しく変化していく様子がわかる。さらに、イラストを中心に読むと、音楽がかなでる「きせき」がわかる。
 バイオリンは、自分で音を作り、歌うようにひくことができる。そのかわり、自分の心が表れやすくもある。もしも、ギコギコした音がでてしまった時には、ひき方の見直しだけじゃなく、自分の心と向き合う必要があるのだ。
 もぐらは、バイオリンの技術をみがくだけじゃなく、いつも自分の心と向き合っていた。だから、美しい音色が人々の心に届き、怒りや悲しみをとかすことができたんだ。
 よく見ると、もぐらがかなでる音色をききながら、木の根っこまで、だんだんハートがたになっていた。
 ぼくは、もぐらに教えてあげたくなった。
「きみは、ばかなんかじゃないよ。きみがかなでた音楽があまりにも美しいから、人間は戦争をやめたんだ。きみと、きみの音色が、世界を変えたんだよ」

「カナヘビのバイオリン」
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◎最優秀賞
根來 彩季さん(小3)

読んだ本――『3びきのくま』 トルストイ作 バスネツォフ絵 おがさわらとよき訳 福音館書店
『三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話)』 石井桃子編・訳 J・D・バトン絵 福音館書店
3びきのくま イギリスとアイルランドの昔話
3びきのくま    イギリスとアイルランドの昔話

【受賞のことば】
 算数好きなわたしは、自由に考えることが好きです。今回の作文でも、算数の問題を解くように想像したとおりに書いてみました。がんばったところは、時代から時代への変化をクマたちにもえいきょうさせ、関係をつなぐところでした。最優秀賞と聞いたときは、家族とともにおどろきでいっぱいでした。将来は理系に進みたいわたしですが、ことばをもっとうまく使えるように、たくさんの本を読んでいきたいです。

【作品】
「三びきの熊の大旅行」


 私は二つの「三びきのクマ」を読みました。すると、書かれた国がちがうのに、どちらもクマが三びきと、人間が一人でてきます。私はふしぎに思いました。
 そこで、二つの話をくらべてみました。
 ロシアの話では、くまは親子で、女の子が家にしのびこみ、スープをのんでしまいます。また、イギリスの話では、クマは親子とは書いておらず、悪いおばあさんがクマの家にしのびこみます。そして、おかゆをたべてしまいます。女の子も悪いおばあさんもさいごににげだしますが、どうなったかは分かりません。
 そこで考えてみました。3びきのくまと女の子は、ロシアから船でイギリスに行ったのではないでしょうか。
 するといろいろなストーリーが頭にうかんできました。ロシアの親子のくまがイギリスに行ったあと、ミシュートカには子どもが三びきうまれました。またロシアの女の子はイギリスににげて、年をとって小さいおばあさんになりました。そして、クマの三兄弟の家にしのびこみ、この時も、みつかってにげだしたのです。
 このように、ロシアとイギリスのお話はつながっているように思いました。すると私の頭にはお話のつづきがもくもくとわいてきたのです。

 それから、十年の月日がたちました。

 『三びきの熊』
 イギリスの小さいおばあさんは、むすこに会うために日本にやってきました。そのころには、小さいおばあさんは、いい人になっていました。そして、もっと小さいおばあさんになりました。ぐうぜん日本にきていたクマも年をとっていました。
 もっと小さいおばあさんは、イギリスでにげだしてから、三兄弟のクマとは会っておらず、クマも、もっと小さいおばあさんもおたがいのかおをわすれかけていました。
 ある日、もっと小さいおばあさんが森にさん歩に出かけていると、年をとった三兄弟のクマに会いました。三兄弟のクマはもっと小さいおばあさんがいい人になったことを知り、もっと小さいおばあさんをゆるしました。そして、家にあんないし、やわらかくて食べやすいフワフワたまごオムライスをごちそうしてくれました。
 また何年かがすぎていきました。
 もっと小さいおばあさんが、へやでゆっくりお茶をのんでいると、まごから電話がかかってきました。アメリカの家に来ていっしょにすまないか、というのです。もっと小さいおばあさんはアメリカにも行ってみたい、と思いました。そしてすぐにアメリカ行きのひこうきにのりこみました。ひこうきにはぐうぜん年をとった三兄弟のクマのむすこたちものっていました。三びきとも、かっこいいぼうしをかぶっています。ならんですわった、もっと小さいおばあさんは、クマたちに昔の話をたくさんきかせました。
 しばらくすると、アメリカに着きました。
 もっと小さいおばあさんは、まごに会った後、その家でしあわせにくらしました。もっと小さいおばあさんは、もっともっと小さい100才おばあさんになっていました。
 ある日、100才おばあさんが森を一人でさん歩していると、としをとった三兄弟のクマのまごに会いました。すると、家にあんないされ、こんどは、トロトロのチョコレート入りカレーライスをごちそうしてくれたのです。100才おばあさんはしあわせな気持ちになって、まごのクマ一ぴきと、歩きながら話しているとかぎがおちているのに気づきました。目の前にはおしろの形をした家がたっています。
 100才おばあさんはおそるおそるかぎで戸をあけました。すると、そこには女神さまが立っていました。女神さまは100才おばあさんがやさしくなったことをほめ、小さい女の子にすがたをかえました。そして、まごのクマ一ぴきといっしょに、ロシアの森の中までつれていってくれました。
 もしかすると、ロシアの女の子は100才おばあさんのうまれかわりで、ミシュートカは三兄弟のクマのまごのクマだったのかもしれません……

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 最優秀賞を受賞なさったおふたりには、賞状と5000円ぶんの図書カードをお送りします。
 あらためて、おめでとうございます!