2020年12月30日

読書探偵作文コンクール2020 最終選考会レポート&総評

 最終選考会のもようをお伝えします。

 今年はWeb会議ツールを使用して、オンラインで選考会をおこないました。例年どおり3名の最終選考委員が、1次選考を通過した13作品を1作品ずつ検討していき、話し合いを重ねた結果、最優秀賞2作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞2作品が選ばれました。
 入賞した7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載する予定です。
 最終選考委員のみなさんから、1次選考を通過した作品それぞれへの感想やアドバイスをいただきましたので、ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。


小八重 琴子さん(小2)
読んだ本――『コッケモーモー!』 ジュリエット・ダラス=コンテ作  アリソン・バートレット絵 たなかあきこ訳 徳間書店

コッケモーモー!

ないとう「ユニークな発想だなと思いました。コッケモーモーは何度も読み聞かせで自分でも使っていますが、ほかの動物の声で鳴くのが、寂しくて友達になりたかったからだっていう発想を今までしたことがなかったので、なるほどそういう読み方もあるなぁと新鮮な気持ちがしました。絵でつけてくれたワンゴローが可愛くて、細かく色々考えてくれているのが素晴らしいです」
宮坂「ただ楽しかったで終わらないで、本当に鳴き方を忘れただけなのかなって一歩踏み込んで考えたところが素晴らしいなぁと思いました。感想文でありながらも、オリジナルキャラクターが入ってきたりして、創作ものを読んでいるみたいな不思議な味わいがありました。終わり方もすごく決まっていて、とても楽しかったです」
越前「ニャーロウのライバルが現れたという感じがしました。独特のタイミングでサプライズのように絵が出てきて、キャラクターに問いかけていくことで本の読み方が深まっていく、理想の読み方ができています。ブロッコリーのしおりがなんだかよくわからないけど楽しそうです」


中橋 彩希さん(小2)
読んだ本――『時計つくりのジョニー』 エドワード・アーディゾーニ作 あべきみこ訳 こぐま社

時計つくりのジョニー

宮坂「ジョニーの気持ちについて思いをめぐらせているようすが、主人公への手紙という形で素直に伝わってきました。最後にスザンナにプレゼントをあげたほうがいいというアドバイスがとてもリアルで、プレゼントのデザインも素敵でした。文章がしっかり書けていて読みやすかったです」
越前「登場人物に語りかけている形式で、本を楽しんで読んだのがわかります。つづけざまに質問が出てくるくらいに深く読み込んできていますね。その結果として、この本を読みたい気持ちにさせる作文になっていると思います」
ないとう「わたし自身この本を読んでみて、まわりの大人たちがひどいことに憤慨したのですが、中橋さんの作文からは、ジョニーが自分で工夫をしたり学んだりして、ひとりで時計をつくりあげていくその過程に心を打たれたのだということが直球で伝わってきました。子どもらしい本の読み方、子どもの本の楽しさを改めて感じました」


棚瀬 準三さん(小3)
読んだ本――『もぐらのバイオリン』 デイビッド・マクフェイル作 野中ともそ訳 ポプラ社

もぐらのバイオリン

越前「まず、点の打ち方がとってもうまく、ひじょうにわかりやすくなっていること、それから、豊かな言葉が使われていることに感心しました。あらすじ、自分の感想のあとに、客観的な分析に移り、まとめと読者へのメッセージで終わるという理想の構成で、完成度の高い作文だと思いました。カナヘビの作文はそれ自体で楽しく、大人びた完成度の高さとかわいい感じが混じっていて楽しかったです」
ないとう「いやーこれはもう本当にすごかったです。何度も何度も絵本を読んだことと、自分が教わってるバイオリンとが、幸福につながった作文なのかなと思いました。音符から曲を読みとったところもすごいです。ここまで読み込んでもらったら本当にこの絵本も本望というか、そういう意味でも素晴らしい作文だなと思います」
宮坂「もぐらが好きでバイオリンも習っているとのことなので、まさにドンピシャの本だったでしょうね。何十回も読んだという言葉に実感がこもっていました。読み進めるたびに発見があったこともわかり、洞察力の鋭さにも驚かされました。音楽はすばらしいと思わせるラストもよかったです。カナヘビの郵便箱の絵に学名をつけたのは、モグラのポストに名前があったからかな。細かいところもよく見ているなと感心しました」


根來 彩季さん(小3)
読んだ本――『3びきのくま』 トルストイ作 バスネツォフ絵 おがさわらとよき訳 福音館書店
『三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話)』 石井桃子編・訳 J・D・バトン絵 福音館書店

3びきのくま イギリスとアイルランドの昔話

ないとう「二次創作の形として新しいなあと思いました。昔からよく知られているお話をもとに、3びきのくまと女の子が点々と各地を旅した挙句、おばあさんが生まれ変わるという、ネヴァー・エンディング3びきのくまみたいな奇想天外なお話になっています。ファンタジーを超えてSFの世界に入れるんじゃないかみたいな、新鮮な気持ちがしました。描写の豊かさにも感心しました」
宮坂「似ているふたつの物語に気がついて、比べてみたり、つながりを考えたりしているところが素晴らしいです。ロシアのお話の女の子とクマたちがイギリスへ行って、イギリスのお話のおばあさんとクマになったのでは、というのはなかなか思いつかないユニークな発想だと思いました。想像をふくらませていろいろ考えていて、このお話を楽しんで読んだのがわかりました」
越前「このコンクールを10年やっていて、こういうのははじめてではないかというくらい新鮮でした。似た作品の比較から二次創作に発展し、さらにそこから元の作品にもどっていくという壮大な世界観をつくってくれたことに感動しました。細かいところに作り手としての気づかいが感じられて、物語を読むのも書くのも好きなのだろうというのがわかります。インターナショナルな展開もいい。壮大な物語をつくってくれてありがとうといいたいです」


藤掛 七緒さん(小3)
読んだ本――『宇宙について知っておくべき100のこと』 竹内薫訳・監修 小学館

宇宙について知っておくべき100のこと

宮坂「宇宙についての本から発想を飛ばして、宇宙旅行に行く物語を書いてくれていて、本を心から楽しんで読んだことが伝わってきました。宇宙だけれど「ぐるなび」があったりクレーンゲームがあったり、自分が日常的に興味があるものが入っているのがおもしろいです」
越前「科学系の本をもとに創作をしていて、楽しくてしかたがなくて書いたのが伝わってきます。まずそうな宇宙食も、おいしいのではないかと感じるほどのいきおいがあります。こういういきおいのある作文は小学生ならではで、とにかく楽しかったです」
ないとう「思わず吹き出すようなところがあって、お笑いのセンスがあるというか、いろいろ頭の中にネタが詰まってるんじゃなかろうかと思わせるところがありました。不思議なところもあり、おもしろかったです」


佐藤 菜乃香さん(小4)
読んだ本――『モモ』 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳 岩波書店

モモ

越前「最初の段落で、自分の実体験から語っていて、読者をひきつけていますね。感想というよりも、分析や批評の段階に入っている作文です。時間と心の関係などについて、自分なりの分析、批評をしていて、本を読むということについて高いレベルにあることがわかります。いい作文です」
ないとう「時間と心の関係についての難しいことを、自分の頭の中で考えて順序立ててよく書いてます。本のなかの一節を取って引用しているわけではなくて、全体で書かれていることを自分の言葉で要約して書いていて、本当にすごいなと思いました。モモとほかの人との関係について、自分の考えの変遷を書いて、結論に落とし込んでいるのも見事です」
宮坂「モモもまわりの人の時間をうばっているのではないかという疑問から、自分の経験を思いだして時間と心の関係に気がつき、心の持ちようによっては時間はうばわれたことにならないという結論に導いていく。その流れが論理的で説得力がありました。ここまで時間について深く考えられるのがすごい。お世話になっているお医者さんのエピソードなども楽しかったです」


詩人 さん(小4)
読んだ本――『ホットケーキできあがり!』 エリック・カール作 アーサー・ビナード訳 偕成社

ホットケーキできあがり!

ないとう「絵本の中身を詩にするというのもなかなか新しい形でユニークだなと思います。「あの黄金の輝き」というところ、絵本の中からとったのではなくて自前の表現なので、素晴らしいなと思いました」
宮坂「絵本の内容を詩にするという発想がおもしろいですね。オリジナルの表現を入れているのもいいです。詩が好きとのことなので、本の内容を詩にするだけでなく、オリジナルの詩もどんどん書いていってほしいです」
越前「とてもリズムのいい詩ですね。ほんとうに詩が好きなんだなとわかります。けっしょうという終わり方も、いいことばの使い方ができていて、美的センスを感じます。いちごジャムをあえて赤いジャムと書いて考えさせるところなど、文学、創作の手法を学んでいる過程にあるのだなと思われるので、これからもいい作品を書いてもらいたいです」


中込 恵楠さん(小4)
読んだ本――『こちらゆかいな窓ふき会社』 ロアルド・ダール作 清水達也・清水奈緒子訳 評論社

こちらゆかいな窓ふき会社

宮坂「構成がしっかりしていますね。身近な新型コロナの話題からスタートして読者の興味をひき、お菓子のことから本の紹介にはいり、あらすじや感想までしっかり書けています。いまのきびしい世の中で、想像して楽しむことの大切さを伝えてくれる作文です。お菓子とサッカーがすきなんだろうな、お兄ちゃんは野球をやっているのかな、などと想像しました。兄弟の仲のよさまで伝わってきました」
越前「タイトルのつけかたがとてもいいですね。どんな作文なのかな、と思わせます。本の内容から想像する楽しさへとつなげていく流れに、構成の巧みさを感じました。お菓子への強い思いがガンガンつたわってきて、そこが最終的にこの本を読みたくなる力になっています」
ないとう「やはり、導入がすごくいい。本の内容紹介もきちんとできていて、お菓子への想像も羽ばたいていて、とてもおもしろく読みました。毎年思うのですが、ダールの作品は、子どもの想像をすごくかきたてる力があるのかな。足が速くなるベースボールガム、いいですね。本当に「想ぞうするって、ゆかいだ」というまとめかたそのものです」


波多 美理愛さん(小4)
読んだ本――『ファーブル昆虫記』 ジャン・アンリ・ファーブル作 奥本大三郎訳 集英社

ファーブル昆虫記 1 ふしぎなスカラベ

越前「直球勝負の作文ですね。とてもまとまりがよくて、すがすがしい。会話からはいって読者の興味をひいたうえで、説明につなげていく書き出しもうまいです。ファーブルが書いたことをしっかり咀嚼して、自分のものにして、最後にメッセージを発していくという三段階がしっかり踏めている作文です」
ないとう「本当は虫がきらいだといいながら、ファーブルの資料館まで見にいっているんですね。すごく幸せな読書だなと思いました。本を読み、それが行動につながり、自分のなかでフィードバックが行われて考えが変わっていくようすが、よくわかりました。読書と生活の融合という感じで、いいなあと思います」
宮坂「文章がしっかりしていて、書き出しにも工夫が感じられます。本から興味がひろがり、資料館にまで行くという行動力もすごいですね。きらいだった虫への考えが大きく変わり、虫が暮らしやすい自然環境を維持することが自分たちの未来にとっても大切だと気づいた過程が、作文からよく伝わってきました。環境維持のための具体案を挙げてくれていますが、本当に行動にうつしてくれそうです」


三原 真理愛さん(小4)
読んだ本――『きのうのぼくにさようなら』 ポーラ・フォックス作 掛川恭子訳 あかね書房

ないとう「これは二次創作ですが、もとの本よりもこちらのほうがいきいきしていて、いいくらい。晶洞石が象徴することも読み取ってうまくお話のなかにいかしているし、とてもよく書けていると思いました。最後にいじわるな子をほめて終わるという決着のつけかた、終わりかたもいいですね」
宮坂「原作は1968年に書かれていて、けっこうわかりにくいところもある本です。読んでもやもやした部分を、創作をとおして自分のなかではっきりさせたのかな、と感じました。本のなかのモチーフを自分なりに消化して、オリジナルのストーリーにしているのが素晴らしいです。最後のキッチンのシーンから家庭のあたたかさも感じられました」
越前「もとの本を踏み台としたうえに、新しい世界をしっかり築いていますね。この話だけを読んでもわかりやすく、言いたいことを正確につたえる技術をもっていると思います。味わいのある絵の表紙もとてもいい。全体になつかしくあたたかな感じがあり、「友だちへ」というメッセージから、読者としての友だちを意識していることも伝わってきました」


坂田 史さん(小5)
読んだ本――『もし大作曲家と友だちになれたら…』 スティーブン・イッサーリス作 板倉克子訳 音楽之友社

もし大作曲家と友だちになれたら…

宮坂「字が小さくて文章量も多い本なので、本当に音楽の好きな子じゃないと読めないだろうなと思いました。ピアノを習っているとのことで、作曲家たちのエピソードを楽しく読んだことが伝わってきました。印象に残った作曲家のエピソードがうまく紹介されていて、この本を読んでみたいと思わせる作文です。これからも、コロナ禍で癒しになったというピアノと読書をつづけてほしいと思います」 
越前「モーツァルトとモーツァルト以外の作曲家のちがいが簡潔に書かれているところなど、わかりやすいですね。もとの本の魅力がもう少し伝わってくるとよかったけれど、自分のことや社会情勢との比較も、短いなりにうまくバランスがとれていて、よく書けています」
ないとう「もっぱら作曲家の性格に注目しているところがおもしろいです。ずっと音楽とつきあいながら、またこの本を読み返してみると、注目する部分も変わっていくんじゃないかな。きっと、性格以上のことも読み取っていくことになるのではないかと思います」


鈴木 結菜さん(小6)
読んだ本――『チーズはどこへ消えた?』 スペンサー・ジョンソン作 門田美鈴訳 扶桑社

チーズはどこへ消えた?

越前「否定からはじまる書き出しがおもしろいですね。短い文の積み重ねから、テンポよく本にのめりこんでいくさまがリアルに感じられました。構成も理想的で、深く読み込んでいることがわかります。この本の編集者に読んでもらいたくなる作文。まんがもふくめて、もとの本を読みたくなるような紹介文になっています」
ないとう「ベストセラーになった本ですね。はじめ「きれいごとだ」と思ったところから、チーズを探しにいくネズミに心を寄せて、最後の結論にいたる、その考えの転換点がどこにあったのかを書いてくれたら、さらによかったのではないかと思います」
宮坂「本の批判からスタートして、本に出てくるキーワードを作文にとりこみながら素直に感想を書いているところが、とてもいいですね。「一番怖いのは何も怖くなくなることだ」という深い考察もあって、感心しました」


森 小久良さん(小6)
読んだ本――『月の光を飲んだ少女』 ケリー・バーンヒル作 佐藤見果夢訳 評論社

月の光を飲んだ少女

ないとう「本を探すエピソードからはじまるのは、楽しいですね。この本はいろんな登場人物の視点から語られるエピソードが順繰りにでてきて、けっこうむずかしい話なので、よく読みこなしたなと思います。ただ、この本をまったく知らない人が作文を読んだとき、やはりちょっとわかりにくいかな。固有名詞をたくさん登場させるより、ざっくりとこの物語の世界のなりたちを説明していくのがいいように思います。でも、とても熱量の高い作文で、全体をよく把握していると思いました」
宮坂「いろんな人の視点がはいってくる複雑な話なので、あらすじをまとめるのがむずかしかったと思いますが、登場人物の紹介、舞台設定の説明、印象に残った言葉などがきちんとまとめられていました。本の選びかたの話もおもしろかったです。締めもうまくて、普段からよく本を読んでいるからこそ書ける感想文だと感じました」
越前「本の選びかたという外枠と本の内容自体との二重構造になっていますね。あらすじは確かに少しわかりにくいけれど、読みどころはちゃんと伝わってきました。本そのものより本選びの新しいアドバイスみたいなところを書いているのが、ちょっと変わっていて、おもしろい作文です」


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【総評】

越前 「もうこのコンクールの選考委員を10年やっていますが、今年はこれまでに読んだことのない新しいタイプの作文をいくつも読ませてもらえて、とてもおどろいています。本を読むこと、特に外国の本を読むことと、それをきっかけに自分のことばで何かを書くことで、みなさんの世界はまちがいなくひろがっていき、想像する力も観察する力もどんどん身につきます。来年も楽しみにしています。」

ないとう「今年もまた、絵つきのものをふくめた感想文、詩、絵物語、二次創作などなどバラエティ豊かな作文が集まりました。何より、自分の目と自分の好みでさがしあてた本を紹介しようという気持ちが強く伝わってくる作文が多くて、とてもうれしかったです。
毎年いうのですが、賞に入るかどうかは、最終的には「運」のようなところもあります。入選できなかったみなさんも、二次審査に残れなかったみなさんも、がっかりなさらずに。みなさんの熱意は、しっかり伝わっていますよ。来年もまた、自分の大好きな1冊をさがしあてて、それぞれの得意な形でその本のことを教えてください。お待ちしています!」

宮坂「ウィルスの大流行という大変な状況の中、今年もたくさん応募してくださり、本当にありがとうございました。感想文、手紙、詩、創作、絵、図、マンガなど、入賞作かどうかにかかわらず、みなさんの楽しい作品の数々に元気をもらいました。実際に外国に行くことがむずかしくても、本で世界を旅することは可能です。来年も読書探偵のみなさんからの「読書の旅」の報告を待っています!」
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 今年もすばらしい作品をおよせくださったみなさん、ありがとうございました。
 今後はこちらのサイトで、みなさんが読まれた本を順に紹介していく予定です。お楽しみに。
 また、中高生部門のサイトでも、コンクールの結果や入賞した作文の全文が公開される予定ですので、ぜひご覧ください。
 来年もたくさんのご応募をお待ちしております!