2019年11月20日

読書探偵作文コンクール2019 最終選考会レポート&総評

 今年の最終選考会のもようをお伝えします。

 当日は3名の最終選考委員が、1次選考を通過した13作品を1作品ずつ検討していきました。話し合いを重ねた結果、最優秀賞3作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞1作品が選ばれました。
 入賞した7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載する予定です。
 最終選考委員のみなさんから、1次選考を通過した作品それぞれへの感想やアドバイスをいただきましたので、ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。


小八重 琴子さん(小1)
読んだ本――『詩ってなあに?』 ミーシャ・アーチャー作 石津ちひろ訳 BL出版

詩ってなあに

ないとう「そもそもが、詩とはなにかをテーマにした珍しい絵本なのですが、その内容をかみくだいて自分のものにしています。さらにそのあと詩を書いていて、その詩がすごくいい。詩というのは、ものごとをよく見ることからはじまるんだということがわかります。魚のキキくんへの愛情もつたわってきました」
宮坂「詩がいいですね。本をきっかけに詩について考え、自分でもつくってみたくなり、そして実際につくってみたようですが、言葉選びの感性がみずみずしく、くりかえしのリズムもよくて、とても楽しかったです。最後の「ほねは ひらがなの「へ」のかたち」などの言い回しも独特。キキくんはなんの魚なのだろうと、こちらも想像力をかきたてられました」
越前「最後の詩がすばらしい。リズムがよくて、音と映像の両方を感じさせる詩です。本を読んでなにか実践してみるというのは、よくあるパターンですが、すがすがしいくらい素直で一直線な文章で、余計なことが書かれていないところがすごくいいですね。箇条書きになっているところも、とてもよく要約できていて、本の内容を自分のものにしていると思います」


棚瀬 準三さん(小2)
読んだ本――『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』『アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険』『エジソン ネズミの海底大冒険』 トーベン・クールマン作 金原瑞人訳 ブロンズ新社

リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険 アームストロング: 宙飛ぶネズミの大冒険 エジソン ネズミの海底大冒険

宮坂「文体に独特のリズムがあり、読んでいて楽しい作文でした。体言止めや「〜したんだ」などの語尾が効果的に使われています。シリーズ3作とも、どんなところにわくわくしたのか理由を書き、そのあとに本の内容を説明するというパターンで統一もとれていますね。おまけの絵もかわいくて、乗り物が大好きなことがつたわってきました」
越前「体言止めや簡潔なリズムなど、読む側をひきつける書きかたができています。語りかける調子が心地よく、最後までいっきに読ませる作文でした。絵については、話とのつながりが見えないところがちょっと残念で、もう少し工夫があればもっとよかったですね」
ないとう「「またまた」の積み重ねなど、全体的に昔話のような書きかたをしているのは、たくさん読んだり読み聞かせをしてもらったりして、体のなかにリズムがしみこんでいるからなのかもしれませんね。長い3冊の本を手際よくまとめながら、自分の感情もうまく織りまぜていて、ページをめくっているときのドキドキ感がよくつたわってきました」


相良 杏さん(小2)
読んだ本――『すてきって なんだろう?』 アントネッラ・カペッティ文 メリッサ・カストリヨン絵 あべけんじろう、あべなお訳 きじとら出版

すてきって なんだろう?

越前「図式化してまとめるうまさを感じました。本の内容のまとめにもなっていながら、自分なりに読み取ったことをうまく合わせて結論をだすというつなぎかたが、とても楽しいです。右側の20歳のところにはわらいました。20歳のつぎが70歳というところもおもしろい。普段おじいちゃんおばあちゃんと楽しく遊んでいるのかな、と感じました」
ないとう「この絵本は文章量も多めで哲学的なところもあり、むずかしいかな?とも思うのですが、かわいい絵で図式化して自分なりにまとめた、その発想がいいですね。お酒のところはやはりおもしろい。自分の書きたいことを書いていることが感じられました。小学生にとっては、20歳から70歳までひとまとめになるのかな。絵もふくめて「すてき」ということが表されていてよかったです」
宮坂「「すてきマップ」というネーミングがいいですね。実際のマップのように、大事なポイントをはずさず、本のなかの「すてき」の意味をすっきりまとめています。自分にとっての「すてき」も年齢順に考えていて、その自由な発想に好感をもちました。最後に、主人公のいもむしの「すてき」について想像しているのもよかったです」


大恵 朱実さん(小2)
読んだ本――『もう、おおきいからなかないよ』 ケイト・クライス文 M・サラ・クライス絵 福本友美子訳 徳間書店

もう、おおきいからなかないよ

ないとう「素直な文章で、絵本の内容をそのまま自分のことに置き換えていることがつたわってくる作文です。子供にとって泣かなくなるということは、大きくなったな、と実感することなのでしょうね。でも、泣いてもいいんだよ、と言ってもらえることは、愛されていると感じることなのだと思います。幸せな親子関係がうかがえて、読んでいて心がほのぼのしました」
宮坂「赤ちゃんじゃないのだから泣きたくない、という気持ちがありながら、泣いてもいいというアドバイスをお母さんからもらったり、うれしくても泣くことがあると本やお母さんの話から知ったりしたことで、泣くことについて考えをめぐらせたことがつたわってきました。最後の言葉どおり、うれし涙の多い人生をおくってほしいなと思いました」
越前「自分の思いが正直に書かれていて、「生きている感」がつたわってくる素直な作文。わかりやすい言葉をつかっているところもよかったです。読んだ本との関係がちょっと見えづらい部分もありましたが、これだけ素直に、気持ちをストレートに書けている作文は、なかなかないと思います」


三原 真理愛さん(小3)
読んだ本――『おもちゃ屋へいったトムテ』 エルサ・ベスコフ作 菱木晃子訳 福音館書店

おもちゃ屋へいったトムテ (世界傑作童話シリーズ)

宮坂「この本との出会いを書いた冒頭部分が、物語で人形と少年が出会うシーンに似ていて、うまい書き出しだなと思いました。あらすじの紹介もわかりやすく、自分のおじいちゃんとのエピソードも丁寧に描かれています。助け合うことの大切さに気づけたのもよかったですね。ときどき勢いに走って文章がねじれているところもありましたが、締めの言葉にはしびれました」
越前「言葉がとても豊かで、気のきいた表現やむずかしい表現が多く使われています。普段からたくさん文を読み、たくさん書いていることがうかがえる作文でした。もう少し段落分けがしっかりできていたらなおよかったと思いますが、最後の部分もきれいにまとまっていて、工夫がありますね」
ないとう「大人びた文章が書けることに感心しました。自分の体験を織りまぜて書くかたちの感想文ですが、おじいちゃんの話が少し長いかな。でも、うまく本の内容とからめていて、とても生き生きと書かれていますね。自分で物語が書けそうなお子さんだなと思いました。これからもたくさん本を読んで、たくさん文を書いてほしいです」


蛭田 モモさん(小3)
読んだ本――『スガンさんのヤギ』 ドーデ作 ときありえ訳 西村書店

スガンさんのヤギ

越前「本の中身はよくわからないのですが、心地よく読める作文で、読んでいる人をひきつける力強さがあります。語りかけの形式がとてもうまくいっていて、「よかったね」「よかったの」の書き分けもおもしろい。形式がすごくいいですね」
ないとう「登場人物に対して詩のように呼びかけている作文で、新しい形式ですね。最後のところに衝撃を受けて、本を読みたくなりました。「よかったね」「よかったの」の書き分けに、巧まざるユーモアを感じます。もとの絵本は、このような形式ではないのですよね。自分なりの形にまとめているところがクリエイティブです」
宮坂「もとの本自体が、不穏な空気を感じさせる哲学的な話ですが、その雰囲気が作文からもつたわってきました。ヤギへの呼びかけの文章と作中の事実をのべる文章をくりかえすことで、内容もわかるようになっていて、形式も工夫されていますね。最後のヤギへの問いかけは、自分にも問いかけているようで、全身で作品を受けとめたことがわかりました。とても印象的です」


相良 凜さん(小4)
読んだ本――『名探偵テスとミナ 黒ネコの絵のひみつ』 ポーラ・ハリソン作 村上利佳訳 文響社

名探偵テスとミナ 黒ネコの絵のひみつ

ないとう「壁新聞タイプの作品ですが、すごくよくできています。下のほうに広告があったりして、細部もおもしろい。広告の口調まで書き分けているのですよね。インタビューもよく書けていますが、わたしは周囲の細かいところに目を奪われました。全体から「テスミナ」が大好きという気持ちがつたわってきます」
宮坂「新聞形式で物語の内容をつたえているのがユニークですね。主人公たちへのインタビューと犯人のコメントで、事件の内容がわかります。そのほかのおまけの部分も物語からヒントを得て書かれていて、作品を楽しみ、そこから想像をふくらませたことがよくつたわってきました」
越前「壁新聞タイプのものはこれまでにもありましたが、そのなかでもいちばんおもしろかったですね。もとの本を読みたくなりました。新聞づくりを楽しんでいるのがよくわかり、本はデジタルになっている時代ですが、手作りのアナログもいいなと改めて感じさせてくれました。新聞のすみっこには星座占いなどいろいろ書かれていて、細かい部分まで読みたくなります。本も新聞も読みたくなる楽しい作品」


大恵 貴子さん(小4)
読んだ本――『この計画はひみつです』 ジョナ・ウィンター作 さくまゆみこ訳 すずき出版

この計画はひみつです

宮坂「本を読んだきっかけ、内容、感じたことや考えたことが、要点をおさえた論理的な文章で書かれています。広島と長崎の原爆は種類がちがったことに着目するなど、考察がするどいですね。最後の戦争反対の主張は、とても頼もしく感じました。大事なことをすっきりと簡潔にまとめていて、強い思いがつたわってくる作文です」
越前「文章力がありますね。段落分けもうまく、いっきに読ませる作文です。自分の体験にひきつけていく構成はよくありますが、そこできちんと歯止めがかかり、自分のことばかりを述べずに本との関係を意識して最後まで書いているところがいいですね」
ないとう「出だしがいいですね。タイトルから想像した内容とちがっていたという衝撃がしっかりと書かれています。本の内容自体はそれほど書かれていませんが、あとがきまできちんと読んだことがよくわかります。しっかりした文章で書かれていますね。おばあちゃんのエピソードを読んで、身近な人から体験を聞くのは大事なことなのだなと思いました」


森 小久良さん(小5)
読んだ本――『囚われちゃったお姫さま』 パトリシア・C・リーデ作 田中亜希子訳 東京創元社

囚われちゃったお姫さま―魔法の森〈1〉 (sogen bookland)

越前「とてもいいですね。いちばんいいのは、しっかり力強く読み手に語りかけていることです。この本をおもしろいからぜひ読んでもらいたい、という姿勢が全体に貫かれている。読む側をひきつける構成力もあるし、パロディっぽいタイトルのつけかたも楽しいですね。おもしろいと思ったことを素直につたえています」
ないとう「本との出会いからはじまり、作文全体が物語になっていますね。読書を楽しむ女の子像が浮かびあがってきました。背表紙の絵まであって、物としての本のよさにもひきつけられたことがつたわってきます。本の内容に関しては、読まなきゃよくわからないところもありますが、それが逆に読みたい気持ちにもさせてくれます。どれかひとつのエピソードを選んで、くわしく説明してもよかったかもしれません」
宮坂「表現力が豊かで、その場面が実際に頭に浮かんでくる文章です。背表紙の題名が二行で書かれていることに気づくなど、観察眼もするどいですね。内容もよくまとまっていますし、これから読む人へのアドバイスまであるところもいい。自己満足で終わらずに、作文を読む人、本を読む人のことを意識していることに好感がもてました。タイトルもウィットに富んでいますね。この本を読みたいと思わせてくれる作文です」


Koharuさん(小5)
読んだ本――『火のくつと風のサンダル』 ウルズラ=ウェルフェル作 関楠生訳 童話館出版

火のくつと風のサンダル (子どもの文学―青い海シリーズ)

ないとう「お話が全体としてうったえていることをきちんとひろっていて、よく書けている作文です。「自分はそういう気持ちになれないと思う」という感想と自分が勇気を出した体験談が、ややぶれているように読めるので、遠慮しないで最初からがんばった話を書くと、読んでいる人にもよりつたわりやすくなりますよ。内容をしっかり読み取って書けているところがいいですね」
宮坂「結論をまずもってきて、そのあとで経緯を説明するというやり方がうまいですね。読み手をひきつけます。あらすじ、自分だったらという考え、自分の体験、と書いていく流れもスムーズで、締めの言葉も決まっています。完成度が高くて、見本的な作文だと思いました」
越前「段落分けや導入の仕方などがとてもよくできていて、読書感想文らしい作文です。ちょっと自分の話にいきすぎているところがあって、いいたいことを簡潔につたえきれていないように感じる部分もありましたが、まとめかたもとてもうまいですね」


鈴木 結菜さん(小5)
読んだ本――『ミオととなりのマーメイド1 人形になれるのはヒミツ。』 ミランダ・ジョーンズ作 浜崎絵梨訳 ポプラ社

ミオととなりのマーメイド 人魚になれるのはヒミツ。: 人魚になれるってヒミツだよ (ミオととなりのマーメイド 1)

宮坂「二次創作からはじまって、主人公への手紙、漫画の3部構成。この物語を楽しみつくしていることが感じられました。内容的にはわかりにくいところもありましたが、大好きという気持ちはよくつたわってきました。こんなに読者に愛されたら、作者も訳者もうれしいでしょうね。これからもどんどん書いて、文章力をつけてほしいと思います。今後に期待」
越前「粗削りだけど、圧倒的。作品の世界を徹底的に楽しんでいるのがわかります。内容はちょっとわかりにくかったけれど、作品への情熱を感じました。いちばんよく書けていたのは手紙だと思います。これから、自分の気持ちをほかの人につたえていく技術をどんどん学んでほしいですね」
ないとう「二次創作というのは、基本的にその話を読んだ人向けのものなので、多少わかりにくいのは仕方ないかなと思います。さんごの話は、完全にオリジナルなのですね。着眼点がいいですね。物語への圧倒的な情熱が感じられて、1冊の本をこれだけ楽しんでもらったら、作者も訳者も幸せだろうなと思いました」


富井 晴日さん(小6)
読んだ本――『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス作 高杉一郎訳 岩波書店

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

越前「構成がしっかりしていて、よく書けています。とくに要約がうまいですね。読んでいない人にも、とてもわかりやすく書かれています。きちんとテーマに着目して、細かいところまで深い読み取りができていることもつたわってくる作文でした」
ないとう「ロジカルに書かれています。いいなと思ったのは、自分の解釈の理由をきちんと書いているところ。簡単にまとめられる話ではないのですが、全体がよくわかり、まとめかたが上手ですね。欲をいえばもうひとつ突っ込んだところがほしかったかな。自分がおお!と思ったところを探しだして入れてみると、キラッと光る作文になると思います」
宮坂「きちんと順序だてて物語を紹介して、わかりやすくまとめていますね。作中からの引用がいくつかありましたが、ちょっと多すぎるかなと思う反面、説得力も生まれているように感じました。もう少し引用の使いかたを工夫すると、なおよくなるかもしれません。論文調の、しっかりと書かれた作文です」


盛永 維さん(小6)
読んだ本――『記憶の国の王女』 ロデリック・タウンリー作 布施由紀子訳 徳間書店

記憶の国の王女

ないとう「この本はちょっとメタフィクショナルで複雑なのですが、その構造をかなりうまくまとめていますね。ただ、相当ややこしい話なので、むずかしかったと思います。たとえば「シルヴィ」をすべて「シルヴィ姫」にするなど、ちょっとした工夫をすることで、読み手はストーリーを追いやすくなりますよ。でも、とてもよくまとまっているし、記憶というものについて、最後に自分の言葉でまとめているのもいいですね」
宮坂「ちょっとわかりにくいところもありましたが、とても複雑な物語をしっかり理解していることがつたわってきました。それぞれの登場人物について自分なりに分析して考え、それを最後の結論にもっていっているところなど、深く読みこんでいることがうかがえます。最後の一文もかっこいいですね」
越前「難解な世界観をかなりわかりやすく説明していて、小学生にしてはすごいと思います。後半は独特な視点で話が展開しますが、自分の話にひきつけすぎず、これから読む人に向けて書いているところがいいですね。自分語りはしていないのに、自分のことがにじみでている。作品を自分のものにしていることがつたわってきました」


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【総評】

越前 「今年も楽しい作文をたくさん読ませてもらいました。ありがとう。最優秀賞と優秀賞のあいだには、ほとんど差はなく、すばらしい作品ばかりです。学校で教わった形どおりに書くだけでなく、その本のおもしろさを伝えるためにいちばんふさわしい形で書く練習を、ぜひこれからもつづけていってください」

ないとう「作文、詩、二次創作、新聞形式のもの、リスト形式のもの、挿絵つき、マンガつき……。小学生部門は今年もバラエティ豊かな作品が集まり、じーんとしたり、声を出して笑ったりしながら楽しく拝読しました。最終的には、その本を読んで感動したり驚いたりした気持ち、この本のことをほかの人にも伝えたいという気持ちが強く伝わってくる作品が入賞を果たしました。でも一次審査を通過した作品はどれも粒ぞろいだったので、賞にもれたみなさんもどうかがっかりしないでくださいね。またすばらしい本と出会って、来年も読書探偵として活動してくださるのをお待ちしています!」

宮坂「感想文、二次創作、詩、手紙、新聞など、今年もいろんな形式で物語のおもしろさを伝えてくれていて、読むのがほんとうに楽しかったです。みなさん、さすが、おもしろい本をさがす「読書探偵」のなかまですね! ぜひまた次の一冊をもとめて、世界に通じる広大な読書の海に飛びこんでくれたらうれしいです。」
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 今年もすばらしい作品をおよせくださったみなさん、ありがとうございました。
 今後はこちらのサイトで、みなさんが読まれた本を順に紹介していく予定です。お楽しみに。
 また、中高生部門のサイトでも、コンクールの結果や入賞した作文の全文が公開される予定ですので、ぜひご覧ください。
 来年もたくさんのご応募をお待ちしております!