2018年12月01日

読書探偵作文コンクール2018 最優秀賞 全文掲載

 最優秀賞を受賞なさった盛永維さん、八木遼乃輔さん、小峰眞子さんの受賞のことばと作品全文をご紹介いたします。
 なお、最終選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。 
読書探偵作文コンクール2018 最終選考結果発表

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)
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◎最優秀賞
盛永 維さん(小5)

読んだ本――『のっぽのサラ』パトリシア・マクラクラン作 金原瑞人訳 徳間書店
のっぽのサラ
のっぽのサラ

【受賞のことば】
 今回の受賞は、昨年の授賞式で選考委員の先生方や他の受賞者とふれあう機会があって、他の人の本の楽しみ方を知ることができたからだと思います。この作文で五感を使って、本には書かれていない登場人物の感情を感じることができたことが私の新しい本の楽しみ方です。これからも、いろいろな本の楽しみ方を見つけ、想像をふくらませながら外国の本を読んでいきたいです。本当にありがとうございました。

【作品】
「家族をつなぐ色」

 盛永 維

 この本は「のっぽのサラ」という本だ。大草原に住む、パパ、ママ、アンナの家族に弟のケイレブが生まれる。しかし、ケイレブが生まれた時にママは死んでしまう。ママが死んで何年かたった時、パパは新しいママになってくれる人を新聞の広告で募集した。そこで海のあるメイン州からやってきたサラは、歌を歌うことが好きで、シチューを作るのが得意だ。灰色のアザラシちゃんというネコも連れてきたが、故郷の海がこいしくてたまらない。だが、みんなのことが大好きになっていき、やがてパパと結婚してみんなは家族になる。
 この物語は、まだ自動車よりも馬車が多く走るような昔の話で、私には白黒の世界しかイメージできなかった。でも、読み進めていくと色や手ざわり、音やにおい、味を感じることができた。
 たとえば、サラが初めてアンナ達のところへやってくる場面だ。手紙のやりとりはしたが、アンナ達は自分のママになるかもしれない人がどんな人か気になって、本当にママになってくれるか不安に思っていた。そしていよいよ遠くから馬車に乗ってやってきた、サラの頭には黄色い帽子。サラのこの帽子の黄色は周りを明るくしてくれるサラらしい色。待っていたアンナやケイレブにとってはたまらなくうれしく、安心する色だったと思う。アザラシちゃんの灰色は、冬の海のような灰色で、なんでも見のがさないすきとおった目も黄色。アンナ達がアザラシちゃんをすぐに好きになったのもよく分かる。
 サラはアンナ達にお土産を持ってきた。それは、小さな貝がらと毎日海に洗われた白いつるつるした石だ。貝に耳をあてるとアンナやケイレブには波の音が聞こえ、すきとおったきれいな海が見えてくるようだ。サラはその音を聞くと安心するし、少しさみしくもなる。つるつるした白い石を見ているとザブーンという海の音が聞こえてくるよう。サラに帰ってきてもいいんだよとサラをアンナ達から引きはなそうとしているようにも思える。
 嵐の場面では暗く、冷たい。しかし、みんなでねむる干し草のベッドは少しチクチクしているが、フカフカしていてあたたかく感じる。
 サラが家にやってくると、草原はあたたかく家族を包みこみ、みんなを安心させる。初めて食べるサラのシチューは、アンナがママに作ってもらった、そして今までアンナがていねいに作っていたママのやさしい味とは違っていた。でも、やさしいにおいがしてて元気の出る味で、モクモクと何杯でも食べてしまいそう。
 サラが町から色えん筆を買ってきてくれる場面では、アンナとケイレブはサラが海をこいしくなって帰ってしまったのではないかと不安になる。サラが海の灰色、緑、青を買ってきたのは、きっとサラがいろいろな見方で海を見ていたからだと思う。灰色は、暗くさみしい冬の海の色。緑は、深い緑でみんなを包みこんでくれる海の色。青は、きらきらかがやくすきとおった海の色。青だけではなくいろいろな海の色をさがすことのできるサラの心は、広くきれいなのだろうと思う。サラはきっと、アンナとケイレブに一方的な見方ではなく、いろいろな物の見方のできる心の広くきれいな子に育ってほしいと思っているのだろう。アンナとケイレブもその思いがとどいてサラのことがさらに好きになり、ママになってほしいと感じて家族になったのだと思う。
 普段のように書いてあることだけを読むだけではなく、色や手ざわり、音やにおい、味をあらわす言葉から想像をふくらませていくと、本に書いてある登場人物の感情だけではなく、他の感情を感じることができ、登場人物のとった行動につなげることもできた。これからも、このような本の楽しみ方で外国の本をたくさん読んで新しい世界を感じたい。

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最優秀賞
八木 遼乃輔さん (小5)

読んだ本――『床下の小人たち』メアリー・ノートン作 林容吉訳 岩波書店
『ニルスのふしぎな旅』セルマ・ラーゲルレーフ作 山室静訳 講談社
床下の小人たち
床下の小人たち
ニルスのふしぎな旅
ニルスのふしぎな旅

【受賞のことば】
 入選することができて、とてもうれしい。予想外の結果で今も驚いています。ニルスとアリエッティのはなしは、小人の冒険とふだんの生活を書いたものでも結果は全然ちがう。でも、その違いを比べることで、ニルスとアリエッティの本を見る視点が変わり、別の意味でおもしろさを発見できた。気になったところは読み返してみる。すると頭の中で映像のように思い出せるのはとても楽しい。

【作品】
「ニルスとアリエッティ」

 八木 遼乃輔

 ニルスの視点は上空から地上を見下す視点である。いたずらっ子のニルスは家畜をいじめてばかりいたので妖精のトムテに魔法をかけられ、小人にされる。ここから彼の冒険が始まる。おかげでガチョウのモルテンの背中に乗って上空から自分がふだんくらしている場所を眺めることができるようになった。ガンの群れにも出会った。このあたりから、上から下を見ることが多くなり、たくさんの動物と話すことになる。その中には悪賢い動物もいた。特にキツネのずる公はガンを食べようとして色々なわなをしかける。ニルスは助けようとするが、自分自身が小人なので、力がなく、かなわない。それでもあきらめずに知えを使い、なんとか友達になったガンを救うことができた。彼は自信がついた。実はこうやって危機に立ち向かっていくうちに、人生経験を積み、また空を飛びながら旅をすることで、ニルスの視点は広がっていき、自分が行った昔のおろかな行いを反省して、人間として成長していく。たとえば、スモーランドの北部のあれ地にある農家でめウシのおかげでねる場所を確保できたとき、ヨルバイザーのさとう工場で一緒だったオーサとマッツ兄弟の小屋にいたずらをして火をつけたことを後悔して、できれば彼らに心からおわびをしたいと考える。さらに、その農場では一人ぐらしで病気のおばあさんが死んでいくのをぐう然見かける。とてもこわかった。けれども、おばあさんが一人ぼっちでさびしく一生を終えたのをめウシから聞いて、考えを変え、彼女をできるだけなぐさめてやろうと讃美歌の本を出して小さい声で歌ったのです。そして彼は自分の両親のことを思い出し、彼らにめいわくばかりかけてきたことを反省した。スカンセン公園では、キツネのずる公もつかまって飼われていた。彼はニルスたちにめいわくなことばかりしてきた。それでもネズミ退治のためにキツネを使う計画を聞いたニルスはキツネに訳を話して、島に行く方がキツネのためになると説得したのだ。
 一方、小人のアリエッティの家族は床下でくらしている。床下に住むアリエッティにとって、彼女の視点は下から上を見上げるものだ。アリエッティの家族は小人の生活に必要な物を地上にいる人間の家から持ってきている。上に住む人間とは自分達の生活必じゅ品を借りてくる存在であり、絶対に関係をもってはいけない禁断の存在なのだ。人間に見つかったら、住み場所を変えなければならない。さほど人間をおそれている彼女の視点はきょうふの視点とも言える。このお話は子供から大人への成長物語ではないが、アリエッティには自分の両親や家の危機を自分なりに救おうとする家族愛がある。両親の言いつけにも関わらず、病気療養のために上の家にやってきた男の子と友達になるのも、そのためだ。その男の子からアリエッティは小人の家族用の家具を提供してもらったが、逆にそれがあだになり、人間に見つかってしまう。とうとう、長年住んでいた地下から引っこすはめになった。しかも彼女たちはネズミとり屋にけむりを吹きこまれいぶし出されてしまい、間一ぱつのところをこの物語の語り手であるメイおばさんの弟の機転に救われて、あやうくにげ出したのだ。
 両親の言うことを聞かない、やんちゃぼうずのニルスの物語がハッピーエンドに終わったのと比べると、両親に協力して自分達のくらしをより楽しいものにしようと努力したアリエッティの物語は反対の結果を招いたわけだ。それでもアリエッティのお話がぼくに暗い感じを与えなかったのはなぜでしょうか。それはこの語り手であるメイおばさんのちょっと人をつきはなしたような、それでいてユーモアを交えた語り口調である。例えば、アリエッティの家族がどうやって次の住まいと予定していたアナグマの巣への道が分かったかたずねられると、「ガス管のおかげさ。管を埋めるとき、ほりだした土がちゃんとおさまらないで、そこだけ地面がちがって見えるもん」といった具合である。きっとアリエッティ一家は新しい住まいで、本能のまかせるままに、借りぐらしを楽しんでいるにちがいない。

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◎最優秀賞
小峰 眞子さん(小2)

読んだ本――『いじめっこ』ローラ・ヴァッカロ・シーガー作 なかがわちひろ訳 あすなろ書房
いじめっこ
いじめっこ

【受賞のことば】
 ある日の夕方、ことみちゃんとあそんでいると中で、家に入ると、ママは電話をしていて、パパが、「すごいことになっているよ」としらせてくれました。とてもびっくりしました。
 つぎの日から、いろいろな人に、「おめでとう」「すごいね」と言われて、うれしくなりました。なによりもうれしかったのは、わたしの大すきな人たちが、え顔になってくれたことです。これからも、がんばります!

【作品】
「いじめっこにはならないで」

 こみね まこ

 小さいうしが、大きいうしとけんかをした。小さいうしは、大きいうしに、
「あっちいけ!」
といわれた。
 いやなきもちになった小さいうしは、ちっちゃい子をいじめればいいんだと思って、うさぎや、とりや、かめに、
「ちび!」とか、
「ぐず!」とか、
「ぶた!」とか、
いって、いじめはじめた。
 いやなきもちは、どんどんふくらんで、小さいうしの体も、どんどん大きくなっていった。
 ところが、やぎに、
「いじめっこ!」
といわれた小さなうしは、ハッと、われにかえり、体が、シュルシュルシュルと、ちっちゃくなっていった。そして、
「ごめん。」
と、みんなに、あやまり、なかなおりをした。

 小さいうしは、大きいうしのまねをして、いじめっこになったのだけれど、わたしは、大きいうしも、だれかにいじめられて、まねをしたのかな?と、思った。いやなきもちは、めにはみえないけれど、どんどん大きくなっていってしまうもの。
 だから、じぶんがされていやなことは、だれにもやっちゃ、いけないんだよ。

 この本は、文がみじかくて、文字が大きくて、よみやすかった。
 やぎのせりふが、「めえ〜」の文字だけ、めだっていることに、きづいたとき、すごくおもしろかった。
 いまから、としょかんに、おなじさくしゃの本を、さがしにいってくるね。

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 最優秀賞を受賞なさった3人のかたには、来春開催を予定している授賞式で、賞状と5000円ぶんの図書カードを贈呈いたします。
 あらためて、おめでとうございます!