2018年11月28日

読書探偵作文コンクール2018 最終選考会レポート&総評

 最終選考会のもようをお伝えします。

 当日は3名の最終選考委員が、1次選考を通過した13作品を1作品ずつ検討していきました。みなさんが読んだ本を参照しながら話し合いを重ねた結果、今年は最優秀賞3作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞1作品が選ばれました。
 入賞した7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載する予定です。
 最終選考委員のみなさんから、1次選考を通過した作品への感想やアドバイスをいただきましたので、ご紹介します。ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。


相良 杏さん(小1)
読んだ本――『なずず このっぺ?』 カーソン・エリス作 アーサー・ビナード訳 フレーベル館
なずず このっぺ?
なずず このっぺ?

宮坂「アーサー・ビナードさんが虫語訳、自分が日本語訳という発想がおもしろいです。意味も通っているし、言葉の統一も取れているし、すばらしい翻訳だと思いました。用語集や、自分で考えた虫語や、虫語で書かれた感想も楽しく、想像力の豊かさに驚かされました」
越前「誰もやりそうにないことをやっているすごさがありますね。まったく新しいものが来たのがうれしいです。翻訳を翻訳するという、翻訳書のコンクールとしては理想的な作文だと思いますし、翻訳とは何かということを考えさせられます。この絵本を隅から隅まで楽しんでいるのを感じました」
ないとう「最初に作文だけを読んだときにはよくわからなかったのですが、その後に絵本を読んで納得しました。きっと何度もこの絵本を読んでいるのでしょうね。自分なりの解釈がお見事で、この絵本を見てみたいという気持ちをかきたててくれる作文です」


小峰 眞子さん(小2)
読んだ本――『いじめっこ』 ローラ・ヴァッカロ・シーガー作 なかがわちひろ訳 あすなろ書房
いじめっこ
いじめっこ

越前「低学年の作文では〈です・ます〉を使うことが多い中、〈だ・である〉で書いていますが、そのリズムが力強くて、読んでいて心地よかったです。ちょっとした詩のようにも感じられました。段落の構成のしかたもうまくて、全体的に言葉の力を感じる作文です」
ないとう「シンプルな絵本ですが、絵の中の牛の大きさやヤギのセリフに注目するなど、自分なりに読み解いていますね。そもそもいちばん大きい牛がだれかにいじめられていたのではないかと、思いをはせているところがすばらしいです。本の向こうに書かれていることまで読み取っているのを感じました」
宮坂「絵も字もよく見ていることに感心しました。牛の体が小さくなるときに「シュルシュルシュル」という独特な表現を使っているところや、文章をきちんと推敲しているところもいいですね。同じ作者の別の本も読みたいという気持ちがうれしかったです」


寺川 太一さん(小2)
読んだ本――『たんけんクラブ シークレットスリー』 ミルドレッド・マイリック作 小宮由訳 大日本図書
たんけんクラブ シークレットスリー
たんけんクラブ シークレットスリー

ないとう「本を楽しんだことが伝わってくる、生き生きとした作文です。自分の体験がわき出てくるように書かれていて、無理に入れたのではなく、本の内容とうまくからみ合っているのを感じます。最後に、お父さんからおそわった暗号が出てきますが、誰も知らない言葉でメッセージを書くというのはやっぱり魅力的なんですね。息子さんからこんなにほめられて、お父さんは幸せだと思います」
宮坂「タイトルからも、この本を読んでワクワクし、自分も探検がしたくなったという気持ちがよく伝わってきます。近所の女の子がくれるローマ字の手紙、きゅうりのサラダ、コサックダンスなどの話題から、太一さん自身にも興味がわきました。審査員たちにつきつけている暗号も楽しいです」
越前「!!の入ったタイトルにふさわしい作文で、楽しんで書いているのがわかります。暗号もおもしろかったです。本と暗号が好きなことはよくわかるのですが、もう少し本の内容が書かれているともっといいですね」


三原 真理愛さん(小2)
読んだ本――『ふしぎなガーデン』 ピーター・ブラウン作 千葉茂樹訳 ブロンズ新社
ふしぎなガーデン
ふしぎなガーデン

宮坂「絵をよく見ていますね。「まっくらくらな町」「大大大人気」など、言葉の使い方がおもしろくて、読んでいて楽しい作文です。育てたトマトを家族に食べてもらったときのうれしさも伝わってきましたし、自分の住む町への思いなどはたのもしく感じました。「ふしぎ」という言葉にひかれてこの絵本を手に取ったそうですが、これからもおもしろそうなタイトルの本にどんどんチャレンジしてほしいです」
越前「リズムがよく、擬声語や擬態語がうまく使われていると思います。自分の体験と本の内容のバランスがいいですね。自分の体験が裏付けになり、読んだ人がより本を読みたくなるような作文です。絵を見て読み取る感性のすばらしさも感じました」
ないとう「ミニトマトが「11個」という細かい数字を覚えているところに、育てたものに対する愛情の強さを感じます。「足をにょきにょきはえさせ」など、絵本自体にはない擬人化された表現もおもしろくて、よかったです」


りんりんさん(小3)
読んだ本――『魔法のスリッパ』 ディック・キング=スミス作 三原泉訳 あすなろ書房
魔法のスリッパ
魔法のスリッパ

越前「スロゲットさんの魅力が、第1から第4までにわけてよく書かれています。自分の体験への導入が自然で、言葉遣いなどから、本をたくさん読んでいることが感じられました。分析のしかたもおもしろいです」
ないとう「なぜスリッパがスロゲットさんにしか力を発揮しないのかという疑問に対して、自分なりに考えて答えを出しているところがいいですね。自分が大事に使っているものとして、ふでばこのことを書きたかったのでしょう。話がやや飛んでいますが、「少しまほうがかかっているのかもしれません」という結びの言葉はしゃれていますね」
宮坂「印象に残ったところを整理して、具体的にあげているのがよかったです。自分が魔法のスリッパを持っていたらどうするかと考えて素直な気持ちを書いているところもいいですね。10個のふでばこのエピソードがおもしろくて、もっとくわしく知りたくなりました」


森島 大賀さん(小3)
読んだ本――『魔法のスリッパ』 ディック・キング=スミス作 三原泉訳 あすなろ書房
魔法のスリッパ
魔法のスリッパ

ないとう「どういう話なのかということが、よく書かれています。ただ説明的に書くだけではなく、「スロゲット様」のようなおもしろい表現もところどころにあるのがいいですね。分析が優れていて、スリッパを燃やしたことに対して自分なりに読み解き、結論を出しているのがよかったです。全体のまとまりもよくできています」
宮坂「スロゲットさんの優しさに的を絞って書いていて、とてもわかりやすかったです。いいことをしたスロゲットさんに素直に感動している気持ちが、ストレートに伝わってきました。作者の言いたかったことまで考えているのがすばらしいです」
越前「読書を豊かな体験にしてそれを人に伝えるということができていて、文章を書き慣れているのを感じました。本の内容と自分の感想が筋道立てて語られていて、評論の一歩手前と言えるくらいの書き方ができているのがすばらしく、まとめ方もきれいです。1冊の本を自分の血や肉にしていく吸収力を持っていると思います」


佐藤 彩花さん(小4)
読んだ本――『魔女がいっぱい』 ロアルド・ダール作 清水達也、鶴見敏訳 評論社
魔女がいっぱい
魔女がいっぱい

宮坂「ダールの作品をたくさん読んでいるようですね。その魅力が整理して説明されていて、よく分析できていると思いました。悪役がひどいいじめにあうのが爽快という感想が正直でおもしろかったです。作文から、お母さんとの仲の良さもうかがえました。「ぼく」は、かぎ括弧でくくったほうが物語の主人公を指していることがわかりやすいと思います」
越前「ダールの作品の特徴をよくとらえています。実体験に関して言うと、自分にひきつけて書かれていていいところもある反面、入れなくてもいいところもあるように思いました。ひとりの作家を追いかけるのも読書の楽しみ方のひとつですね。こういう作文をどんどん書いてほしいです」
ないとう「ダール作品は人気で、毎年応募があります。わたしは彩花さんのお母さんと同じで、ときどきぎょっとしてしまうところがあるのですが、この作文を読んだら、大人の常識を壊すようなダールの魅力がよくわかって、子どもたちに人気があることに納得しました。悪役が魅力的という書きにくそうなことがしっかり書かれているのもいいですね。本を読んでみたくなる作文です」


蒋 鈴音さん(小4)
読んだ本――「シャーロック・ホームズ全集」 コナン=ドイル作 各務三郎訳 偕成社
シャーロック・ホームズ全集
シャーロック・ホームズ全集

越前「登場人物の名前がおもしろいですね。どんな秘密が隠されているんだろうと、読んでいて興味がわきました。ミステリーが好きで、物語をとても楽しんでいることがわかります。できれば、途中に出てくる暗号の答えも教えてほしかったです」
ないとう「色々な発想が頭の中にわいてきていることや、書くのが好きなことがうかがえました。思いついたことを全部書くのではなく、創作ノートのようなものを作って書くことを取捨選択すると、もっと整理されて読者に伝わりやすい文章になりそうです」
宮坂「シャーロック・ホームズに触発されて、想像をふくらませ、探偵団の物語を楽しんで書いていることが伝わってきました。ストーリーが奇想天外でおもしろかったです。ネーミングや、絵文字を使っているのもユニークですね」


溝口 怜果さん(小4)
読んだ本――『あなたが生まれるまで』 ジェニファー・デイビス作 槙朝子訳 小学館
あなたが生まれるまで
あなたが生まれるまで

ないとう「お母さんに対する感謝が素直につづられた作文で、これを読んだらお母さんはうれしいだろうなあと思いました。エピソードがとてもほほえましかったです」
宮坂「お母さんのことが大好きな気持ちが伝わってきて、ほのぼのとしました。自分が生まれたときのことをお母さんと話している様子がうかがえます。正直な気持ちがつづられているのがいいですね」
越前「文章全体に勢いがあって、読む人に伝える書き方ができていると思います。作者への質問も的確です。本の中身についてはあまり書かれていませんが、本を読んでみたくなりました。絵からもいろいろと考えさせられて、おもしろかったです」


盛永 維さん(小5)
読んだ本――『のっぽのサラ』 パトリシア・マクラクラン作 金原瑞人訳 徳間書店
のっぽのサラ
のっぽのサラ

宮坂「あらすじがすっきりとわかりやすく、いつの時代の話かということも紹介されていて、この本を知らない人をきちんと意識して書いているのを感じます。色や手ざわり、音やにおい、味を表す言葉から想像をふくらませるという視点がおもしろく、そこから登場人物の感情を読み取っているところがユニークです。細かいところまでひとつひとつよく見ていることに感心しました」
越前「続けて応募してくれていますが、今回は色やにおいなどを切り口に物語を味わっていて、新しいことに取り組むすばらしさや1年間の成長を感じました。読む人を意識してわかりやすく説明しているところや、中途半端に自分の話を出さないところもよかったです。感想から評論へ一歩踏み込もうとしているように思います」
ないとう「最初に読むときはストーリーを中心に追うと思うのですが、色がクローズアップされていることに気づいていて、本を何度か読み返してまとめた作文なのではと思いました。毎回発想や表現がユニークな作文を書いてくれていましたが、今回はそうではない方向に行っていて、おとなしめではあるものの、むしろ成長を感じます。構成などを吟味しながら書いたことが伝わってきました」


八木 遼乃輔さん(小5)
読んだ本――『床下の小人たち』 メアリー・ノートン作 林容吉訳 岩波書店
『ニルスのふしぎな旅』 セルマ・ラーゲルレーフ作 山室静訳 講談社
床下の小人たち
床下の小人たち  
ニルスのふしぎな旅
ニルスのふしぎな旅

越前「上から見ることと、下から見ることという視点に注目して、2つの作品を比較するという発想がすばらしいですね。言葉の豊かさから、本をたくさん読んでいて、読書が身についているのを感じました。文体論にも踏み込んでいることに、レベルの高さを感じます」
ないとう「ニルスとアリエッティを比べることを思いついたのがすばらしいです。2つの話が交錯しないままなのがやや残念ですが、それぞれの話を上手に紹介できていると思います。書き間違いと思われるところがあったり、段落分けを工夫できそうなところがあったりするので、作文を読み直してこれらを直すと、もっと自分の考えも整理されて評論になりそうです」
宮坂「2つの作品の比較が斬新でおもしろかったです。同じ小人の話でも視点がまったく違うことに気づかされました。全体的に文章が上手ですし、ニルスが成長の物語でアリエッティが家族愛の物語であるという自分なりの分析もいいですね。アリエッティの物語のメイおばさんの口調に対する評価が的を射ていて、観察眼があるなあと感心しました」


矢代 千佳さん(小5)
読んだ本――『クローディアの秘密』 E・L・カニグズバーグ作 松永ふみ子訳 岩波書店
クローディアの秘密
クローディアの秘密

ないとう「秘密が大きなテーマですが、なかなか読み取るのが難しい本だと思うので、中に書かれていることをよく読み取ってまとめていることに感心しました。『遠い山脈』という別の本の例がやや唐突なので、もう少しその本の内容がわかるように書くともっとよかったと思います」
宮坂「出だしの工夫がいいですね。興味をひかれます。あらすじがすっきりまとまっていますし、疑問点に対して自分なりの答えを出しているのもよかったです。秘密が持つ力に注目し、それについて考えているところに、物語を深く読めているのを感じました」
越前「導入のしかたがうまいと思います。秘密を持つというと悪いことのような気がするのに、その魅力に注目する発想がおもしろいです。単なる感想にとどまらず、疑問をぶつけたり、他の本と比較をしていたりするのが読書の幅の広がりにつながりそうで、読んでいて気持ちがいい作文でした」


伊井 悠馬さん(小6)
読んだ本――『ギリシアの神々の物語』 ロジャー・ランスリン・グリーン作 山本まつよ訳 子ども文庫の会
『超おもしろ環境クイズ』 スティーブ・スキッドモア作 浅野万里子訳 金の星社
ギリシアの神々の物語              
ギリシアの神々の物語
超おもしろ環境クイズ
超おもしろ環境クイズ

宮坂「2冊の本を読んで、組み合わせて創作するという発想が斬新ですね。ストーリーがよく考えられていて、空想とはいえ、問題意識を高め、解決方法を自分なりに考えているところがよかったです。文章もしっかり書けていると思います」
越前「やや強引なところもありますが、読書の喜びとともに、知識を獲得する喜びを伝えてくれている作文だと思います。読者に元の作品との関係がわかるようにしてもらえるともっとよかったですね。中身については、それぞれの神々にしっかり対応していると思いましたし、納得できることばかりでした。これを深めた小説を将来書いてほしいくらいです」
ないとう「わたしもギリシア神話は大好きなのですが、もっと暗いイメージを持っていて、こういう発想がなかったのでびっくりしました。導入がかっこよくて、まるで映画のスターウォーズのような壮大なイメージがわきました。やや都合がよすぎるところとおもしろいところと、両方ありますが、何より楽しんで書いている感じが伝わってきます」

______________________________
【総評】

越前「今年もみなさんが力いっぱい書いてくれた作文を読み、紹介された本を何冊も読みたくなりました。どうもありがとう。本を読むことで世界がひろがり、書くことでさらにひろがっていきます。このコンクールでは、学校で教わった形にとらわれず、目の前にある本のおもしろさを思いきりわたしたちに伝えてください」

ないとう「今年もたくさんのすばらしい作文をありがとうございました。どの作品からも「本を読んで楽しかった!」という気持ちが、しっかり伝わってきました。また、同じ作者のべつの作品を読みたい、同じテーマの作品を読みたいと書いてくれた人もいて、とてもうれしかったです。そうやって、いろいろな方向へ興味が広がっていくのは、まさに読書の楽しみですね。来年もまた、みなさんの大好きな1冊を紹介してください」

宮坂「今年も審査になやみました。どれが入賞してもおかしくないくらい、すばらしい作文ばかりだったので! 感想文、創作、翻訳、評論など、形式もバラエティゆたかでした。読んでいると、紹介された本だけでなく、作文を書いたみなさんにもとても興味がわいてきます。来年はどんな子がどんなふうに外国の本のおもしろさを伝えてくれるでしょう? 今から楽しみにしています」
______________________________

最終選考会_books.jpg

 力のこもった作品をおよせくださったみなさん、ありがとうございました。
 今後こちらのサイトでは、みなさんが読まれた本を順に紹介していく予定です。おもしろそうだな、と思った本があったら、ぜひ読んでみてください。
 そして、来年もたくさんのご応募をお待ちしております。6年生のみなさんは、どうぞ中高生部門のサイトもご覧くださいね。