2016年11月03日

読書探偵作文コンクール2016 最終選考会レポート&総評

 最終選考会のもようをお伝えします。

 当日は、1次選考を通過した14作品を熟読のうえ集まった最終選考委員が、みなさんが読んだ本を参照しながら、1作品ずつ検討していきました。それぞれの作品のよい点や惜しい点を挙げながら話し合いを重ねるなかで、評価の高かった作品が7つにしぼられ、そこから最優秀賞3作品、優秀賞3作品、ニャーロウ賞1作品がえらばれました。
 入賞された7作品については、後日、こちらのサイトで全文を掲載させていただく予定です。

 最終選考委員のみなさんから感想やアドバイスをいただきましたので、ご紹介します。ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。


大恵 貴子さん(小1)
読んだ本――『メグむじんとうにいく』(メグとモグのおはなし3) ヘレン・ニコル作 ヤン・ピエンコフスキー絵 ふしみみさを訳 偕成社
メグむじんとうにいく―メグとモグのおはなし
メグむじんとうにいく(メグとモグのおはなし3)

宮坂「本を読んだきっかけから、あらすじ、感想まで、読んでいない人を意識してしっかり書けていて、順序だてて紹介できていますね。文章にないところを想像して補っているところもいいと思います。登場人物たちのその後など、物語の世界をふくらませて楽しんでいるのが伝わってきました」
越前「表紙の絵がきっかけで読んだという正直な感じがいいと思いました。『ホーがすき』というタイトルがストレートで伝わりやすいですね。この本の楽しさが、どの段落からも伝わってきます。絵もかわいくていいですね。この本を読みたくなるような作文です」
ないとう「フクロウのホーの説明など、絵をよく見て文章で表現していると思います。絵本の世界にひたりきって楽しんでいるようすが伝わってきました」


相良 凜さん(小1) 
読んだ本――『ペットのきんぎょがおならをしたら……?』 マイケル・ローゼン作 トニー・ロス絵 ないとうふみこ訳 徳間書店
ペットのきんぎょが おならをしたら……?
ペットのきんぎょが おならをしたら……?

越前「金魚鉢の形という、独創的でこれまでになかった形式で感動しました。1ページ1ページは断片的な情報ですが、物語に強く興味をもたせてくれるような内容でいいですね」
ないとう「1ページ1ページが、本と対話した形になっていますね。驚くようなところもありましたし、こういうふうに受けとめたのかとおもしろく思ったところもありました。これだけのものを最後までていねいにつくりあげていることに感心しました」
宮坂「自由にのびのびと、思ったことを書いてつくっているという印象を受けました。発想がおもしろいし、細かいところまで工夫してありますね。本を読んでいない人にはわかりにくいかもしれないけれど、本のおもしろさが伝わってきました」


日 実生さん(小1)
読んだ本――『ひみつの花園』 フランシス・ホジソン・バーネット作 中村妙子訳 集英社
ひみつの花園 (子どものための世界文学の森 4)
ひみつの花園

ないとう「しっかりした作文です。登場人物の心情を考えて喜んでいて、感受性がすばらしいと思いました。自分の体験もおりまぜていますが、物語の感想にうまくとけこんでいます。全体に幸せな感じが伝わってきて、じんとしました」
宮坂「1年生とは思えないほど文章がしっかりしていますね。物語の登場人物に触発されて、自分も行動を起こしているところがすてきです。幸せ感が伝わってきました。物語をモチーフにした時計も、よくできていました」
越前「時計もよかったし、その感想文もよく書けています。時計をつくることで物語の理解を深めたり、お母さんと共同作業をしたりと、読書の理想的な形ではないかと思いました」


南 和奏さん(小1)
読んだ本――『むこう岸には』 マルタ・カラスコ作 宇野和美訳 ほるぷ出版
むこう岸には
むこう岸には

宮坂「書きだしが印象的で最初からひきこまれました。この本を読んでみたいと思わせる作文です。見た目がちがっても仲よくできるということを学んでいるところに、頼もしさを感じます。外国の人について知るという、翻訳書ならではの楽しみ方ができていると思いました。タイトルに本を読みおえたときの気持ちが凝縮されていますね」
越前「タイトルと書きだしがとてもいいです。短いけれどもすべて自分のことばで、自分の思いを語っていますね。ほのぼのとした気持ちになって、最後まで楽しく読めました」
ないとう「読みながらドキドキしている心の動きが感じられました。主人公と同じ心の動きを体験し、自分のこととして受けとめていることが、とてもよく伝わってきて感動しました」


あーちゃん さん(小2)
読んだ本――『ミランダの大ぼうけん』 ジェームズ・メイヒュー作 佐藤見果夢訳 評論社
ミランダの大ぼうけん (児童図書館・絵本の部屋)
ミランダの大ぼうけん

越前「手紙という形のよさを生かしていて、感動がストレートに伝わってきました。本を読んでいない人にとってもわかりやすい書き方をしています。作文につけてくれた気球の工作も本文とぴったり合っていて、とてもいいと思いました」
ないとう「文だけでなく、絵もよく読みこんでいますね。絵本の内容をよく伝えています。気球の工作の色彩感覚もすばらしいです」
宮坂「主人公のミランダといっしょに冒険してみたいという気持ちが手紙からあふれています。自分で地球儀を確認して実感したり、ミランダの気持ちを想像しているところもいいですね。"すごい" という言葉が多いので、違う言葉も使うともっとよかったかな」


森 小久良さん(小2)
読んだ本――『かえってきたクレヨン』 ドリュー・デイウォルト文 オリヴァー・ジェファーズ絵 中川ひろたか訳 WAVE出版
かえってきたクレヨン
かえってきたクレヨン

ないとう「大好きな絵本と同じ作者が書いていることに気づいたという、この本を見つけたきっかけがうれしいですね。1作目の『クレヨンからのおねがい!』も入れて、2冊合わせての感想としてもよかったかもしれません。最後につけてくれた絵が、この本の内容をうまく要約していると思います」
宮坂「絵本を楽しんだ様子、読んだ喜びが、今回の応募作のなかでもいちばんといえるくらい、よく伝わってきます。2作目についての作文なのに、1作目の内容についてが多くなっているのがちょっと気になりました」
越前「おもしろかったところがストレートに出ています。最後の絵を描くのにさくら色のクレヨンを選んだのは、自分の名前にかけたのかな。発想や色彩感覚もいいですね」


盛永 維さん(小3)
読んだ本――『グレイ・ラビットのおはなし』 アリソン・アトリー作 石井桃子/中川李枝子訳 岩波書店
グレイ・ラビットのおはなし (岩波少年文庫 (004))
グレイ・ラビットのおはなし

宮坂「本に出てくる知らない名前の植物に興味を持ち、深く調べていて、おもしろい読み方だと思いました。どんな植物か想像して、それから調べるところがいいですね。作者の意図まで考えていて、気になったことを追究する力があるのを感じました」
越前「自分の興味の対象をひたすら追いかけるという本の楽しみ方をしていて、それに対する言葉の力強さを感じました。しかも、読む人にわかりやすく伝えていると思います。翻訳書を楽しむという点では、これもひとつの読書の理想型ですね」
ないとう「切り口が新鮮だと思います。まさに行動する読書ですね。行動した結果、新しい洞察が生まれているのを感じます。植物のカタカナの名前からの想像に驚かされました」


吉村 琴里さん(小3)
読んだ本――『木のすきなケイトさん――砂漠を緑の町にかえたある女のひとのおはなし』 H・ジョゼフ・ホプキンス文 ジル・マケルマリー絵 池本佐恵子訳 BL出版
木のすきなケイトさん―砂漠を緑の町にかえたある女のひとのおはなし
木のすきなケイトさん――砂漠を緑の町にかえたある女のひとのおはなし

越前「読書をきっかけにいい経験をしましたね。"なぜなら" など、同じ言葉のくりかえしが気になりましたが、素直な思いが伝わってきました」
ないとう「テラリウムについて初めて知りました。話の内容が少しぼやけているように感じられたのですが、それは書きたいことを全部書いているからかもしれません。取捨選択すると、もっとよくまとまると思います」
宮坂「木が好きなケイトさんと本が好きな自分が似ているというのは、やや無理があるかなとも思いましたが、その好きなものがなかったらと想像してみたのはいいですね。これからもたくさん読んで、たくさん書いて、文章力を磨いてほしいです」


渡辺 彩也乃さん(小3)
読んだ本――『ポリーとはらぺこオオカミ』 キャサリン・ストー作 掛川恭子訳 岩波書店
ポリーとはらぺこオオカミ (せかいのどうわシリーズ)
ポリーとはらぺこオオカミ

ないとう「2次創作としてとてもよくできていると思います。笑いのポイントをおさえていますし、ピリッとわさびが効いているところもあって、セリフまわしもしゃれていますね。意外性があって驚かされ、センスを感じます」
宮坂「とてもおもしろい本なので、続きを書きたくなる気持ちがよくわかります。ユーモアがたっぷりなのに、詩的な描写もあり、オオカミの特徴もよく書けていますね。ポリーがあまり出てこないのが少し残念でした」
越前「2次創作であることがちょっとわかりにくいので、何らかの形で一言あるとよかったかもしれません。情景がビジュアルに浮かんでくるような書き方がわかっているなと思いました」


S・Nさん(小5)
読んだ本――『あのころはフリードリヒがいた』 ハンス・ペーター・リヒター作 上田真而子訳 岩波書店
あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))
あのころはフリードリヒがいた

宮坂「物語の内容を真剣に受けとめて考えている様子がひしひしと伝わってきました。『アンネの日記』を思い出したり、お父さんに意見を求めたり、自分のいじめ体験との関連性に気づいたりと、思考が広がっているのがわかります。「小さないじめが差別に近づく一歩」という言葉にははっとさせられ、最後の決心には頼もしさを感じました」
越前「人に読ませる文章の書き方がわかっていますね。年代を追って書いたり、「ぼく」にカギカッコをつけて読みやすくしたりと、大人レベルの工夫をしています。本に書かれている時代について学んだり、べつの本とつなげて考えたりするなど、読書体験としても理想型です」
ないとう「この本の「ぼく」のように、自分も差別する側に立ってしまうかもしれないと書きながらも、『アンネの日記』を思い出し、協力した人たちも命がけだったのだと気づけたのはすごいこと。本を読んで、これだけ思考を深め、想像することができれば、本当に世の中がよくなるだろうと思わせてくれる力があります」


須貝 綾さん(小5)
読んだ本――『小公女』 フランシス・ホジソン・バーネット作 脇明子訳 岩波書店
小公女 (岩波少年文庫)
小公女

越前「悪役(ミンチン先生)のことをちゃんと評価しているのがいい。本を紹介する姿勢がきちっとできている文章です。ただ最後のまとめが少し教科書的だったので、自分の言葉でもうひとひねりしてほしかったですね」
ないとう「楽しんで読んだことがわかります。おもしろいのは、殺風景な部屋が実際にすてきな部屋になる過程ではなく、それを空想するところが心に残ったと書いていること。ミンチン先生の育ち方がちがっていたらいい人になっていたかもしれないという発想がどこから生まれたのか、興味がわきました」
宮坂「読むきっかけが、題名を英訳すると「リトルプリンセス」だからというのがおもしろいですね。小公女と自分を比較したり、自分ならパンを全部食べると正直に書いたりしているのもよかったです。タイトルが「ほこりをもって生きる」なので、どういうところにほこりを感じたのかもう少し書いてほしいと思いました」


田中 愛麗さん(小5)
読んだ本――『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル作 脇明子訳 岩波書店
不思議の国のアリス (岩波少年文庫 (047))
不思議の国のアリス

ないとう「なぜ数学者が子どもの物語を書けるのかと驚いて、「普遍」というキーワードを使って自分なりに思考して謎を解こうとしたのがおもしろいです。田中さんにとって『アリス』のテーマは「ふつうなんてものはない」ということに思えたので、そちらをメインにして書いてもよかったかな」
宮坂「感想文の枠を超えて論文になっていますね。キャラクターの紹介からは物語の雰囲気まで伝わってきます。物語から発展させて、「ふつう」について考察しているのもよかったです。読者に語りかける明快な文体、傍点やダーシの使い方も上手。タイトルも作文の内容をきちんと伝えているし、出だしと結びもしっかり呼応しています」
越前「読者を想定して書く作品紹介としては今年いちばんの完成度で、プロのあとがきに近い。本だけでなく、あとがきや解説もたくさん読んでいることがわかります。登場人物紹介は、目のつけどころがよく、きらいなほうを先に紹介しているのもおもしろい。「ふつう」論は、アリスの物語の本質をついていますね」


冨本 真由さん(小5)
読んだ本――『ピトゥスの動物園』 サバスティア・スリバス作 宇野和美訳 あすなろ書房
ピトゥスの動物園
ピトゥスの動物園

宮坂「仲間と力を合わせてがんばるところに感動した気持ちがよく伝わってきました。50年前の本だと知っていたら読まなかったかもしれないと正直に書いていて好感が持てます。ただ、手紙形式とはいえ、どうして動物園を作ることになったのか触れてあるといいなと思いました」
越前「あなたの本はこれしか知らないのですが、という書きだしが正直でほほえましい。作者へのメッセージになっているからこそ、好きなキャラクターの説明が生き生きとしていると感じました。手紙形式にする必然性を感じる作文です」
ないとう「「私がビシッと言います」という表現が頼もしい。自分がどういう人なのか説明しなくても伝わってきました。あなたは子どもの気持ちをよく知っているから省略せず大切に書くことができたのですね、という部分は、まさにこの本の本質を言い当てていると思います」


内山 満里菜さん(小6)
読んだ本――「マジック・ツリーハウス」シリーズ全巻 メアリー・ポープ・オズボーン作 食野雅子訳 メディアファクトリー
マジック・ツリーハウス 第1巻恐竜の谷の大冒険 (マジック・ツリーハウス 1)
恐竜の谷の大冒険 (マジック・ツリーハウス 1)

越前「このコンクールを読書のきっかけにしてくれていて、理想的な作文です。「ファンタジー」と「リアル」といったカタカナの言葉づかいが的確で表現も豊か。作者の知識量を自分でも吸収し、ほかの人に読んでほしいとすすめる流れが自然で、このような作文に要約本をつける形式をとった理由がきちっとわかります」
ないとう「シリーズ全巻のまとめは作文の付録だけど、これは大変な労力。40巻もまとめる根気はすごい! 作文は心に残った一話とともにシリーズ全体の特徴が描かれ、すばらしい紹介文になっています。昔の人物が今の自分たちと同じ悩みをかかえていたことがわかり、歴史が好きになったというところは、作者が聞いたら泣いて喜びそうです」
宮坂「段落分けや接続詞の使い方などは少し気になりましたが、このシリーズが大好きだから広めたいと思い、これだけの分量の要約本と地図まで作ったのはすごいと思いました。歴史を学ぶ大切さに気づき、みんながこの本で学べば平和につながると考えているところもよかったです。タイトルにも思いがあふれています」

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【総評】

越前「今年もたくさんの人たちがおうぼしてくれて、かんしゃしています。どんなところに心を動かされたかを、自分のことばで力強く伝えること。そして、読む人がわかりやすいような書き方のくふうをすること。作文ではどちらも大切です。今回受賞した人たちの作文の多くは、その両方に気をくばったものでした。それができるようになるには、何よりまず、たくさん本を読むことです。大好きな本をどんどん見つけて、ぜひ来年もおうぼしてください」

ないとう「今年も、すばらしい作品を送ってくださって、ありがとうございました。笑ったり、うなずいたり、じんとしたりして、心から楽しみながら読むことができました。選考会の様子や、第1次選考委員からのコメントを読んでいただければわかると思うのですが、受賞したかしないか、1次選考を通ったか通らないかの差は、ほんとうに紙一重の場合も多いのです。わたし自身、全員に賞をあげたいと思いながら読んでいました。だから、選考からもれてもがっかりせず、来年も楽しい本をたくさん読んで、ぜひぜひまたすてきな作文を送ってくださいね。お待ちしています!」

宮坂「世界の本を旅する読書探偵のみなさん、今年もいろいろな作品をさがしだして、そのおもしろさをわたしたちに教えてくれて、ほんとうにありがとう! どんな登場人物がいたか、どんなできごとが書かれていたか、そのとき自分はどう思ったかなどが生き生きと伝わってくる作文ばかりでした。絵や工作はあくまで作文のおまけとして募集していますが、そのおまけからも熱い思いがあふれていたように思います。来年もわたしたちの心をズキュンと打ってくれる作文&おまけを楽しみにしています」

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 今年も心のこもった作文をよせてくださったみなさん、ありがとうございました。読書探偵作文コンクール事務局では、来年も同様のコンクールを開催する予定です。また、現在調整中ですが、ひょっとしたら中高生部門も開催されるかもしれません。そちらの情報もふくめて、今後も当サイトでおすすめの本やコンクールの情報を発信していきます。来年もまた、みなさんの心に響いた本のことを作文にして教えていただけたら、大変うれしく思います。