2015年11月19日

読書探偵作文コンクール2015 最優秀賞 全文掲載

 最優秀賞を受賞なさった野上日菜子さん、SAYUMIさん、原口徠未さんの受賞のことばと作品全文をご紹介いたします。
 なお、最終選考結果につきましては、以下の記事をご覧ください。
読書探偵作文コンクール2015 最終選考結果発表!
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◎最優秀賞
野上日菜子さん(小6) 
読んだ本――『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス作 高杉一郎訳 岩波書店
『秘密の花園』 バーネット作 土屋京子訳 光文社
『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル作 柳瀬尚紀訳 集英社
トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))
トムは真夜中の庭で

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)
秘密の花園

不思議の国のアリス―少年少女名作の森〈18〉
不思議の国のアリス

【受賞のことば】
 すばらしい賞をいただいて、ただ驚いています。『トムは真夜中の庭で』も『秘密の花園』も、主人公たちと喜んだり悲しんだりしながら、ページをめくっていきました。同じように庭をめぐるおはなしでも両方とも楽しんで読むことができたのに、ずいぶんと風景がちがうとも思いました。それを自分で考えて、行ったり来たりしながらまとめることができました。

【作品】
二つの庭

野上日菜子

「真夜中の庭」のトムにとっての庭は弟と一緒に夏休みを過ごせない悔しさをまぎらわせてくれるものであった。ところがその庭は子供の頃に両親を早くに失くした家主のバーソロミュー夫人のこ独をいやしてくれる場所であった。二人をつなぐ庭は二人が毎晩見る夢の中にある。片やメアリーが発見する「秘密の花園」の庭は実際に存在する。十年以上も閉ざされていた庭を子供たちがよみがえらせるのである。この二つの物語に共通するのは子供の純真な気持ちである。彼らは友情や家族愛を求めている。一直線に心のおもむくままに自分の楽しみに向かって進んでいく態度である。彼らは毎日退屈で絶望していたが、庭のおかげで、生きていく希望が見え始める。
 しかし主人公たちを取り巻く世界は正反対である。「真夜中の庭」では、それはトムとハティ(バーソロミュー夫人)の二人で完結している、丸く内側に閉ざされた世界である。庭には子どものハティが引き取られたメルバン家の人々や園丁、女中などもいるが、ハティ以外はトムの存在に気づかない。「秘密の花園」は逆に庭が伯父さんや周囲の使用人たちにも明るい影響を与える、大きく外に開かれている世界である。トムは両親の言いつけを聞く、素直な子であった。だから一人で叔母さん夫婦の家に泊まることを承諾したのだ。この素直さが彼を完成されたすばらしい庭へと導く。それに比べると、メアリーも従兄のコリンも、両親に愛された記憶がないため、回りの大人に反抗することが好きな存在である。よって、彼らが自分たちで努力して生き返らせようとする荒れた庭は、必然的に彼らを取り囲む大人たちを巻き込むことになる。「真夜中の庭」で流れる時間はある意味で残酷であり、登場人物が喜びや悲しみを共有しながらゆっくりと時がすぎていく「秘密の花園」とは大違いである。人は自分の意志に関係なく成長していく。いつまでも子供の時代に留まっていることはできない。夢の中の庭では、時間が不規則に変化し、トムはハティが自分の目の前で毎日だんだんと大人になっていくことに気づいているが、それをハティに打ち明けることができない。お話の最後でトムは夢の庭が見つからなくなり、現実の世界に押し戻される。六才のトムと年老いたハティがお互いを認め合い、抱き合う場面は、感動的であるよりも、怖い感じがする。
 アリスがうさぎの穴に落ちて、ネズミが通れるほどの小さな扉からのぞいた庭は、見たこともない美しい庭だった。だから私の庭も、三月うさぎや帽子屋といっしょにお茶をのんだり、ハートの女王とおにごっこをしたりする庭でありたい。そしてだれも私のことを起こさないでほしい。 以上 

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◎最優秀賞
SAYUMIさん(小6)
読んだ本――『カレジの決断』 アイビーン・ワイマン作 瓜生知寿子訳 偕成社
カレジの決断
カレジの決断

【受賞のことば】
『カレジの決断』は、古いしきたりにしばられていた一人の女の子が新たな道を歩むために自立していくお話です。私は、あと半年で中学一年生になります。だから自立をテーマに書かれたこの本の主人公のカレジと、自分を重ねる事でわいてくる様々な思いを言葉にできたらと思ってこの作文を書きました。

【作品】
女の子の勇気

SAYUMI

 二〇一四年。パキスタンのマララ・ユスフザイさんはノーベル平和賞を受賞されました。その演説に世界中が共感し、教育の大切さを改めて世界中が学び、教育を受けたくても受けられない女の子達の存在を知ったと思います。へんけんに屈せず自分の意見をつき通すのは自分の身にも危険が迫る事につながるのに全ての女の子に教育をと訴え、行動を起こしています。大事なのはただ心の奥底で願うだけではなく、行動に移す事だと考え、彼女は勇気を出して立ち上がったのです。
 この本にもそんなマララさんのように自分の心に秘めていた望みを行動に移した勇気ある少女がいます。名前はカレジ。しきたりの厳しいアーミッシュに生まれたカレジは豊かな自然に囲まれあたたかい農家の家族の元で育ちました。勉強することが好きで今通っている中学校を卒業した後も高校で学びたいという願いを密かにいだいています。物語はカレジの悩みから始まります。同い歳の友達はもう結婚して子供も生まれている。でも私は結婚のための花よめ修行をするよりも高校でもっと学びたいとカレジは思っていました。そこで父母に高校に進むことを相談し、高校に進む事はしきたりに反すると怒る父を説得し一年間のみという条件つきで高校進学を許されます。高校では仲良くなった友達もでき農場の外には別の世界があることを知ったカレジに一通の手紙が届きます。送り主はいとこのジェシカでアーミッシュ教を離脱し都会で暮らしているカレジの伯父の娘でした。ジェシカと文通し、見た事のない都会の暮らしぶりを聞きアーミッシュのしきたりに疑問をもつようになります。
 そんな中、カレジの弟ジェイソンが亡くなりました。持病が急に悪化したのです。苦しむジェイソンに何とかしてあげたいと思ったカレジですが、家族の父親は祈るだけで何もせずジェイソンは一向によくなりませんでした。悩んだ末にカレジは家族に秘密で二人だけで都会の病院にいき手術したのですが、もう間に合いませんでした。
 この件でアーミッシュの人々とはもう生きていけないと感じたカレジは伯父さんのすすめで一人で都会に行くことを決意し家族の誰も見送りに来てくれなくても強い心でむかえの車にむかって歩いていくのでした。
 この物語にはたくさんの人物が登場します。それぞれ個性があり読んでいて好きな登場人物もたくさんいましたが特にお気に入りの人はカレジの弟ジェイソンです。生まれた時からせきついが丈夫でなく一人では何もできなかったのにカレジと納屋で遊んだり、時にはお手伝いもしたりと、更に自分の可能性を広げようとします。体に障害をもって生まれたジェイソンはただそれをなげくのではなく、そんな自分にもできることを見つけようとカレジと共に挑戦し続けます。最後は亡くなってしまいましたが挑戦したことは何もできなかったジェイソンの自信にもなったことと思います。
 頑張るジェイソンに挑戦する勇気をもらったカレジは、とうとう生まれ育った故郷を離れ都会で暮らすことを決意します。家族は怒ってだれも見送りに来てはくれなかったけれど自分で決意した事は悔やまずむかえに来たジェシカと伯父さんの車にむかって歩いていくシーンが印象に残りました。
 この本をかいたアイビーン・ワイマンさんは実在するアーミッシュの人々を取材した時に家族と地域社会のきずなを大切にし、質素な暮らしの中に幸せを見い出すことに感銘を受けたためアーミッシュに関する本をかこうと決めたそうです。部屋のかべには何一つはらず、身にまとうものにもかざりをつけない暮らしは私はできるだけしたくないけれど不必要なものは持たず知恵を働かせる事で心豊かにのびのびと生きるのは本来の人間の姿だと思います。でも最近ではカレジのように都会に出てしまう若い人も多いそうです。そんな現状をふまえきっと作者は文明が進んだ暮らしもいいけれど古来の人間の暮らしにもそれなりに良さがあり、なくしてはいけない、でも自分で考えてとった行動なら負い目を感じることはないし、自立することも悪いことではないという、相反する二つの想いをこの本に込めたのだと思います。カレジのような若者への励ましになるはずです。
 私もカレジのようにいつか自立するときが来るけれど、その時は今までお世話してくれた人達に見守られている中で自立をむかえたいです。そして外の世界を知るだけでなく、自分が生まれ育った場所を愛し、理解を深めて、旅立ちたいです。

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◎最優秀賞
原口徠未さん(小4)
読んだ本――『アベルの島』 ウィリアム・スタイグ作 麻生九美訳 評論社
アベルの島 (評論社の児童図書館・文学の部屋)
アベルの島

【受賞のことば】
 私の作品が、最優秀賞をもらえるなんて思ってもいなかったので、とてもうれしいです。
 私は、『アベルの島』を読みながらアマンダが生活する姿を想像していました。そして、楽しみながらアマンダの物語を完成させました。
 この本を作ったウィリアム・スタイグさんと、麻生九美さんに、心から感謝したいと思います。

【作品】
強い思いを持ちつづけたアベル

原口徠未

「とうとう、ドアが開く音がしました。それから、はっと息をのむ音。そして、ひめい。」
 みなさんは、この文章を読んで、どんな場面を想像しますか。まるで、ホラー映画でおばけが出てきたような場面みたいではありませんか。
 私は、この場面を読んだとき、よろこびとうれしさと、おどろきと、とにかく幸せな気持ちでいっぱいになりました。なぜなら、一年間たった一人で無人島でくらし、そこから脱出してきた主人公、アベラード・ハッサム・ディ・キリコ・フリントが、愛する奥さんと再会する感動の場面だからです。
 この本の作者のウィリアムスタイグさんのみりょくは、表現の面白さです。つらいことは楽しく、幸せなことはおそろしいことのように、おおげさに書いて楽しませてくれます。
 この物語のはじまりは、不幸の連続です。
 お金持ちで一度も働いたことのない貴族ネズミのアベルが、ピクニックの途中、嵐にまきこまれ川に落ちて流され、無人島にたどり着きます。島でアベルは、一生懸命脱出の方法を考えますが、すべて失敗します。
 しかし、アベルの生活はつらく、苦しいことだけではありません。たとえば、ときどき家族や友達のことを思い出して、木や石や土などで、すばらしいできばえの彫刻を作っていました。また、『クマの国』という長いながい物語の本を一章づつ大切に読んでいました。それに、毎日、懐中時計のネジを回して、「コチコチ」というすてきな音を聞いてうっとりしたりしていました。
 さんざんな目にあって、一人ぼっちで無人島でくらすアベルは、とてもかわいそうなはずなのに、私は物語を読んでいて、無人島のくらしをしてみたいと思ってしまいました。
 しかし、アベルもつらく悲しいときがあります。そんなときアベルは、星にはなしかけます。
「ぼく、どうしたらいいんだろう?」すると星は、「思ったようにやれば、それでいいのさ」と、答えます。その言葉は、アベルを、勇気付けてくれました。アベルは、愛する奥さんのもとに絶対帰るという強い思いを持ちつづけ、ついに脱出に成功することができたのです。
 私もアベルと同じように、強い思いを持って願いをかなえたことがあります。それは、四年生の徒競走で一位をとったことです。これまで私は一位をとったことが一度もありませんでした。いつもいつもくやしい気持ちでした。だから今年は、一位をとるためにひみつのとっくんをしました。それは、昼休み一人で、五十メートル走のラインにそって走ることです。しかし、ただ走るのではありません。手や足の動きに工夫をするのです。手は、後ろにふりすぎないこと。足は、つまさきだけで、すばやく走ることです。でも始めはなかなかうまく走れませんでした。そんなとき、もう少し工夫すればできるようになると信じて、毎日練習をつづけました。走ることはあまりとくいではなかったけれど、どうしたらはやく走れるかを考えるのが楽しくて、練習はまったくつらくはなかったです。はやくはしって一位をとれたことを想像すると、わくわくしてげんきがでてきました。一位でゴールしたとき、もう、むねが「ドキドキ」して、いままであじわったことのないぐらいうれしかったです。
 願いをかなえるためには、強い思いが必要です。強い思いがあれば努力しつづけることができます。
 私も、スタイグさんのように子どもたちに、絶対あきらめない強い思いを持つこと、夢をかなえるための工夫を楽しむ物語を書いてみたいです。その夢をかなえるために私は、本をたくさん読んで、物語を書きつづけたいです。

アマンダの奇跡
原口徠未

 アマンダは、アベルが、こう水で流されてから一週間、ベッドで泣き暮らしました。アマンダは、一週間も泣いたので、その間飲まず食わずで今にも死にそうでした。そして、アマンダはふと、我にかえりました。
 まず、お風呂に入ることにしました。そして、部屋にそうじきをかけました。その次に、歯をみがいて、顔を洗って、すてきなドレスをきました。朝食は、自分でつくった温かいコーヒーに、ホットドック、ポテトサラダを食べました。食べ終わったら、帽子をかぶり、上等なバッグを持ち、町へお散歩に、行きました。
 アマンダは、外のしんせんな空気をいっぱいすいました。すると、心が柔らかくなりました。
 家に帰ったアマンダは、昼ごはんのじゅんびをします。昼ごはんは、ふわふわのオムライスを食べました。こうしてアマンダは、アベルがいなくても、いつものように、ごはんをつくって、そうじをして、毎日さん歩に出かけることができました。
 アマンダは、毎晩アベルの夢をみました。その夢は、遊園地に行ったり、森にピクニックに出かける夢です。アマンダは、夢の中では楽しいのですが、朝起きるとさびしくなります。でも、アベルがこころの中にいてくれるので、気持ちを切り替えて、きちんと生活を送るのです。
 アマンダは、一年間、毎日、そうじなどをする他にも、本を読んでいました。アマンダの読んでる本は、本屋さんで買った『ねこの島』です。物語のないようは、一匹の野良ねこが洪水でながされ、無人島にたどりつき、一匹で生きていくという物語です。アマンダは少しづつ読み続けます。ねこが、無人島についた場面を読んだ時、アマンダは、「アベルももしかしたら無人島についたかもしれない。」と思いました。ねこがどうなるか気になりましたが、がまんしてすこしづつ読みました。ねこは、一人ぼっちで可哀想なときもありました。 アマンダは、ねこが帰ってこられると信じたい気持ちと、そんなにうまくいくはずないという気持ちがありました。読むのが辛くなって、一度読むのをやめてしまったときがありました。けれど、最後にハッピーエンドになるかもしれないという気持ちが強くなったので、また読みつづけました。
 そして、ついによみ終わりました。ねこは、無事に家族のもとに帰ってこられました。アマンダは、ハッピーエンドでうれしくなりました。それを公園で友だちにはなしました。すると、友だちは「アベルもそうなるといいね」と言ってくれました。アマンダは心から、アベルが帰ってくるといいなと思いました。
 そうしたら、その夜アベルが帰ってきたのです。アマンダは、うれしくて「わ〜!」とさけんでしまいました。信じられません。奇跡中の奇跡です。そして、アベルは一年間の無人島の話をしました。アマンダは、それと似ている『ねこの島』という本を読んでいたことを話しました。二人は目を丸くして、大変おどろきました。でも、大変うれしかったのです。
 次の日から、またいつものくらしにもどりました。なぜなら、なんでもない日が一番幸せだからです。

カブ森の虫の王さま
原口徠未

 ある夏の朝。日がのぼり始め、まだうす暗く、すずしい風がふいています。
 カブ森は、コナラの木が多く生え、カブトムシがたくさん住んでいます。豊かなカブ森の中心には、コナラの木に囲まれた、「コナラ広場」がありました。
 切りかぶの上で、カブトムシの王さまは、良い次の王が決まるだろうかの心配をしています。
「次の王は、しっかりしているだろうか。」ざわざわしている、いろいろな色のこん虫たちを見ながらそう思いました。
 次の王は、七色に色わけされたこん虫の中の、リーダーの中から決まります。
 赤のリーダーは、ホシベニカミキリです。ホシベニカミキリは、すぐにおこるので、よくちがうこん虫のリーダーとけんかをします。
 やさしいだいだい色のリーダー、テイオウゼミは、ホシベニカミキリのけんかを止めようとします。
 黄色のリーダー、ヨナクニサンは、弱虫なので、ちょっとしたことですぐ泣きます。
 緑のリーダー、コノハムシは、はずかしがりやなので、ときどきしか、姿を見せません。
 青リーダー、メネウスモルフォチョウは、羽がきれいなことをいつも自まんしています。
 アオハダトンボは、あいいろのリーダーで、メネウスモルフォチョウとちがい、きれいなあいいろの自分の体を自まんしません。しかも、しっかり者です。
 むらさきリーダー、オオセンチコガネは、あわてんぼうなので、今日来る予定なのに、昨日来てしまいました。
 みんなせいかくはちがうけれど、今日にかぎっては、きんちょうしながらも、自分の体や羽を大きく見せようとして、羽をふるえて見せたり、体をピカピカにしたりちゃんとしました。
 みんな、次のリーダーは、ぜったい自分になると信じていたので、赤リーダーのホシベニカミキリが、「次の王は、ぜったい自分だ」とはっきりと言うのを聞いたリーダーたちは、つぎつぎと言い争い、最後にはけんかになってしまいました。
 あきれたカブトムシの王さまは、けんかを止めようとしました。すると、急に辺りが静かになて、においも変ったような気がしました。不思議に思い、空を見上げると、大変なことに、雨だったのです。
 こん虫は雨がきらいなので、急いでカブトムシの王さまの、木の穴の家にかけこみました。しかし、けんかをしていたリーダーたちが、にげおくれてしまい、洪水になった雨に流されてしまいました。木の穴まで水が入ってきたので、カブトムシの王さまとたくさんの虫達も、いっしょに流されてしまいました。
 コナラ広場を越え、カブ森も越え、さらに流され、さっぱりわからなくなりました。そして、どんどん虫たちは力が無くなり、気を失ってしまいました。虫達が気づいたころには、先に目をさました、リーダーたちが力を合わせて、かん病してくれていました。ところが、みんな生きているのがきせきなぐらいで、このままではもとのところにもどれません。しかたなく、近くにあった太い木の根元に集まってねむることにしました。けれど、川の流れる音はうるさいし、寒くて、こわくて、なかなかねむれません。だから、石と石をなりあわせてきつつきをよび、軽くて丈夫そうな枝に穴を開けてもらいました。虫達はそこで、コノハムシをふとんにして、気持ちよくねむることができました。
 朝になりました。元いた場所とはちがっていました。虫達は、木の枝の穴から出て、辺りを見わたしました。「コナラの木がたくさんある…切りかぶも…」「あっ」虫達はいっせいに声をあげました。そして、喜び合いました。そうです。ここはカブ森のコナラ広場だったのです。もどってきました。カブトムシの王さまは、なぜもどってこられたのか考えてみました。答えは一つしかありません。夜にまた雨がふり、虫達が休んでいた木が流されてここまできたのです。もう、みんな、喜びやうれしさなどで、次の王さまなんかどうでもいいように思います。王さまはみんなが仲よく、協力し合えるようになったので、王をきめるのをやめることにしました。
 雨が上がった空には、にじがうれしそうにかがやいています。

(注:原口徠未さんは本の感想文のほかに、その本をもとに創作した物語をふたつ応募されました。選考委員の協議の結果、感想文だけでも最優秀賞に値するものの、物語も完成度が高く、3編あわせてひとつの作品になっていることから、今回は特別に3編まとめての受賞となりました。――読書探偵作文コンクール事務局)

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 最優秀賞を受賞なさった3人のかたには賞状と5000円ぶんの図書カードをお送りいたします。
 あらためて、おめでとうございます!