2015年11月08日

読書探偵作文コンクール2015 最終選考会レポート&総評

 今年の最終選考会は11月2日、都内にて行われました。そのもようをお伝えいたします。

 当日は、第1次選考を通過したみなさんが読んだ本を用意し、時に本を参照しながら、最終選考委員全員で1作品ずつ検討していきました。例年より多い16作品が最終選考にのこりましたが、やはりすばらしい作品が多く、最終選考委員の方々も頭を悩ませたようです。今年は最優秀賞3作品、優秀賞3作品に加えて、ニャーロウ賞にも2作品がえらばれ、特に評価の高かった8作品が入賞となりました。
 見事受賞された8つの作品は、これから順次、こちらのサイトで掲載させていただく予定です。

 最終選考委員3名から、16作品に対する感想やアドバイス、そして今年のコンクールの総評をいただきましたので、ご紹介します。


壽恵村尚さん(小1)
読んだ本――『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』 トーベン・クールマン作 金原瑞人訳 ブロンズ新社
リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険
リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険

越前「語りかけが"だ"で終わる常体で、いきいきとしていて元気でよかったです。絵の説明がわかりやすいですね。話を読んで、すべてを自分のものにしていく過程がよくわかりました」
ないとう「熱を感じる作文で、お話に入りこんでいるのが伝わってきました。スティーブンソンなど難しい伝記を読んでいるのがすごいですね。それだけ深い興味があるからこその、心から出ている言葉に感心しました」
宮坂「1年生でこれだけの文章が書けることに感心しました。宇宙に鉄道をつくる夢がすばらしいですね。作者を銀河鉄道にしょうたいする、という終わりの言葉もよかったです」


田邉蕗帆さん(小1) 
読んだ本――『おおきな木』 シェル・シルヴァスタイン作 村上春樹訳 あすなろ書房
おおきな木
おおきな木

ないとう「お父さんとのゆるぎない信頼関係が感じられて感動しました。自分のことになぞらえながら、お話についてもよく書けていました。木に気持ちを寄せていることが伝わってきました」
宮坂「お父さんが読んだら感激して泣いてしまいそうな作文ですね。親子関係のすばらしさがひしひしと伝わってきました。お話のなかの木をお父さんにおきかえ、そこから想像をめぐらせて書いているところがよかったです」
越前「作者にあてたタイトルが中身と合っていないのが少し残念でした。木をお父さんととる解釈がおもしろいし深いですね。これから先、何度もこの本を読んでいくのではないかと感じました」


RTさん(小1)
読んだ本――『ラチとらいおん』 マレーク・ベロニカ作 とくながやすもと訳 福音館書店
ラチとらいおん (世界傑作絵本シリーズ―ハンガリーの絵本)
ラチとらいおん

宮坂「かわいい文章ですね。おすもうさんの話など、オリジナリティが感じられました。ひこうしになれるのが「48歳」というところには、何かリアリティも感じます。『まちがおもちゃに見える』というところは、じっさいに景色が浮かぶようでした」
越前「ほんとうに伝えたいことをいっきに伝えている、力強い書き方の作文でした。一生懸命考えているのがわかります」
ないとう「ほんとうに子どもらしい作文です。「おすもうさん」「48歳」など、ぱっと浮かんできたのでしょうね。イメージの豊かさを感じます。ユーモアがあっておもしろく読めました」


徳田百菜さん(小2)
読んだ本――『やかまし村の子どもたち』 アストリッド・リンドグレーン作 大塚勇三訳 岩波書店
やかまし村の子どもたち (岩波少年文庫(128))
やかまし村の子どもたち

越前「最初の段落でひきこまれました。自分の体験にひきつけてうまく書いています。楽しい学校生活を送っているのだろうと感じました」
ないとう「男の子には思いつきそうにない、女の子ならではの書き方がおもしろいですね。わたし自身、子どものときにいちばん好きだった本です。物語にあこがれる気持ちが伝わってきました」
宮坂「やかまし村の子どもたちと同じように、学校でにぎやかに過ごしているのでしょうね。遠い外国のことを身近に感じているのがいいですね」


村山遼さん(小2)
読んだ本――『空とぶじゅうたん』 マーシャ・ブラウン作 松岡享子訳 アリス館
空とぶじゅうたん―アラビアン・ナイトの物語より
空とぶじゅうたん

ないとう「絵をくわしく分析して言葉で表現していて、すばらしいと思いました。長いお話を、とても手際よくまとめていましたね。お話のなかで、とくに宝物に興味をもっていたことがよくわかりました」
宮坂「絵をよく見ているのに感心しました。絵の色から未来的ととらえているところは独創的ですし、その未来と昔のお話を結びつけたタイトルが秀逸です。お話を読んでみたくなるような紹介でした」
越前「心をひくタイトルですね。視覚表現から入る構成が抜群です。段落分けも明確で、段落ごとに言うべきことがはっきりしています。話もわかりやすくまとめられていました。言葉の使い方からも、本をたくさん読んでいるのを感じました」


盛永維さん(小2)
読んだ本――『バレエをおどりたかった馬』 ハーラル・ストルテンベルグ作 菱木晃子訳 福音館書店 
バレエをおどりたかった馬 (世界傑作童話シリーズ)
バレエをおどりたかった馬

宮坂「あらすじがしっかりまとめられていて、どんな物語なのかよくわかりました。バレエの専門用語について、わかりやすく説明されていたのもすばらしいです。馬の衣装や曲、踊りを、自分で想像しているのがいいですね。本を心から楽しんだことが伝わってきました」
越前「最初の段落でひきつけられますね。自分の知識に結びつけ、読み手にわかりやすく伝えています。視覚と聴覚をうまく表していてイメージしやすく、とても上手な作文です。最後の絵もかわいかったです」
ないとう「お話の大事なところをうまくとりあげて、あらすじを上手にまとめていました。自分の想像を細かく書いているだけでなく、その理由まで説明していて、まとまりのあるきちんとした文章に感心しました。「衣装」だけ、なぜか「イショー」とカタカナだったのがちょっとふしぎでした。「チュチュ」などと同じ外来語のように見えます。ひょっとして外来語だと思っていた?」


Y.Wさん(小2) 
読んだ本――『ラチとらいおん』 マレーク・ベロニカ作 とくながやすもと訳 福音館書店
ラチとらいおん (世界傑作絵本シリーズ―ハンガリーの絵本)
ラチとらいおん

越前「ラチを自分にひきつけているのがおもしろく、新鮮でした。よい助言で終わっているのがかわいらしかったですね」
ないとう「ビルがつみきみたい、というような比喩が使われていましたね。飛行機に乗るのが好きなんだなと感じました」
宮坂「自分も飛行士になりたいからか、ラチにも飛行士の夢をかなえてほしいという思いが強く伝わってくる作文でした。自分なりに考えた、頼もしいアドバイスもいいですね」


チョコマカロンさん(小3)
読んだ本――『プリンセス☆マジックルビー4 赤ずきんは正義のみかた!』 ジェニー・オールドフィールド作 田中亜希子訳 ポプラ社
プリンセス☆マジック ルビー(4) 赤ずきんは正義のみかた!
プリンセス☆マジック ルビー(4) 赤ずきんは正義のみかた!

ないとう「女の子らしいものがいっぱいで、あこがれや夢があることが伝わってきました。こまごまとしたところをよく考えていて、本を楽しんだことがよくわかります。髪の長い女の人がだれだかわからないままだったので、つづきが読みたくなりました」
宮坂「この本がとにかく好きで、自分でも似たようなお話をつくりたくなって、楽しんで書いたのでしょうね。ドキドキするような展開やいきいきした会話など、本の雰囲気がよく出ていました。もっとつづきを書いてほしいです」
越前「創作だということは、ひとこと書いてほしかったですね。読んでいて情景を思い描けるような書き方で、とても上手です。セリフと地の文のバランス、文体など、もとの本から読みとって学んでいるのがわかります」


まなさん(小3)
読んだ本――『ちいさなあなたへ』 アリスン・マギー作 ピーター・レイノルズ絵 なかがわちひろ訳 主婦の友社
ちいさなあなたへ (主婦の友はじめてブックシリーズ)
ちいさなあなたへ

宮坂「本を読んだことをきっかけに、お母さんとやりとりをして親子の貴重な時間を築いているのがすばらしいですね。お母さんの言葉に深い愛情が感じられました」
越前「読者に問いかけてたたみかける書き方など、作文としてのおもしろさはずばぬけています。家族の愛情が伝わってきます。ただ、もとの本がどういうお話なのか、わかりにくいところもありました」
ないとう「親子のやりとりがこまやかで、関係のすばらしさを感じました。1冊の本を読んで、ここまで対話をできるのがすばらしいですね」


塩谷仁さん(小4)
読んだ本――『長くつ下のピッピ』 アストリッド・リンドグレーン作 大塚勇三訳 岩波書店
長くつ下のピッピ (岩波少年文庫 (014))
長くつ下のピッピ

越前「難しい言葉を使いこなし、構成もしっかりしていて、読んでいて安心感がありました。ピッピの性格を語っているうちに、物語の全体像が伝わってくる。もとの本が読みたくなる、うまい作文です」
ないとう「とてもしっかり書かれている作文ですね。ピッピに大人っぽいアドバイスをする一方で、ピッピがものわかりのよい性格なら、お話はこんなにおもしろくなかっただろうとも書いてあり、ゆれる気持ちが感じられました」
宮坂「『ピッピの性格探検』というタイトルがまずおもしろいです。じっさい、論旨が明確な性格分析になっています。作者や本の位置づけを最初にびしっと紹介しているのもいいですね。最後の1文に、ピッピへの愛情も感じました」


原口徠未さん(小4)
読んだ本――『アベルの島』 ウィリアム・スタイグ作 麻生九美訳 評論社
アベルの島 (評論社の児童図書館・文学の部屋)
アベルの島

ないとう「これだけ書く筆力はすごい! 2つの物語のうち、「アマンダの奇跡」は奥さんの視点ですが、発想がすばらしいです。アマンダが生活を立て直す過程も、最後の1文も、小学生とは思えない。これは短編小説ですね」
宮坂「感想文の出だしから、読み手を引き込みます。作者の文体の分析までしていて、物語の紹介も上手。楽しんで読んだことが伝わってきます。徒競走の話はもう少し短くてもよいかな。強い思いと努力が大事という言葉には、はっとさせられました。これからもどんどん書いていける人だと思います」
越前「もとの本も読みたくなる、すばらしい感想文です。2つのオマージュは視点が異なり、1つはもとの本と対になる物語で、もう1つはもとの本のごく一部をヒントにして、まったく別の豊かな世界を作りあげている。こういうことは、なかなかできるものではありません。すでに自分の世界観をしっかり持っていますね」


内山満里菜さん(小5)
読んだ本――『リンゴの丘のベッツィー』 ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー作 多賀京子訳 徳間書店
リンゴの丘のベッツィー
リンゴの丘のベッツィー

宮坂「このコンクールが理想とするような読者で、翻訳者としてはうれしいかぎり! 作文は構成がしっかりしていて、出だしも工夫され、ストーリーのまとめもよく書けています。本人の望みどおり、英語の勉強もがんばって、外国暮らしもして、翻訳家になってほしいです」
越前「翻訳を仕事としている者として、うれしくたまらない作文でした。ストレートな思いがぐんぐん伝わってきます。もう少し本自体の具体的なおもしろさが伝わってくるとよかったかな」
ないとう「なによりも、『本を開けば、必ずおもしろい物語がある』と信じている気持ちがうれしいです。本を愛する気持ちを表明する力強い作文で、これは書かずにはいられなかったものだと思いました。いいものを読ませてもらいました」


臼杵裕晟さん(小6)
読んだ本――『奇人・変人・大天才』 マイク・ゴールドスミス作 小川みなみ訳 偕成社
奇人・変人・大天才 紀元前から19世紀: アルストテレス、ガリレオ、ニュートン、ファラデー、その一生と研究
奇人・変人・大天才 紀元前から19世紀

越前「骨太で力強い、読書好きな男の子らしい文章。『〈なぜ?〉ってすばらしい』というタイトルのつけ方もいいですね」
ないとう「それぞれの科学者の業績を上手に紹介していて、理解して読んでいることが伝わってきます。小さなことを見すごさない人になりたいという感想もまとまっています」
宮坂「本を読んで感動したことが素直に伝わってきました。ガリレオのように、小さな疑問を大きな発見につなげる人になってほしいです。本には大天才たちの人間くさい面も出てくるので、それも紹介すると、本の魅力がさらに伝わると思いました」


喜納天志さん(小6)
読んだ本――『帰ろう、シャドラック!』 ジョイ・カウリー作 大作道子訳 文研出版
帰ろう、シャドラック! (文研じゅべにーる)
帰ろう、シャドラック!

ないとう「本を読んで深く考えたことが伝わってきます。ただ、論理が少し整理されていなくて、まよっているところが感じられました。あと、あらすじの紹介にやや不正確なところがあったかな。たとえば『〜場面から始まります』ではなく、『〜場面が出てきます』などと表現を変えれば、まちがいを避けられますよ」
宮坂「憤りや怒りが伝わってくる作文でした。人間はひどいという思いが、自分に何ができるか考えることで昇華されているのがよかったと思います」
越前「力強くストレートな文章。ものすごく勉強していますね。本を読んで、自分のものにしているのが伝わってきます。もう少し、もとの本が読みたくなる書き方をしてもよかったですね」


野上日菜子さん(小6)
読んだ本――『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス作 高杉一郎訳 岩波書店
『秘密の花園』 バーネット作 土屋京子訳 光文社
『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル作 柳瀬尚紀訳 集英社
トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))
トムは真夜中の庭で

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)
秘密の花園

不思議の国のアリス―少年少女名作の森〈18〉
不思議の国のアリス

宮坂「大学生のミニ卒論のようです。ずばぬけた洞察力。小学生でよくここまで分析しましたね。2つの庭の共通点と相違点を説得力ある言葉で説明していて、文章のつなげ方も独創的です」
越前「これは論文ですね。客観化、抽象化ができています。あとは段落分けさえすれば。荒削りなところもあるとはいえ、将来性抜群です。最後のアリスはやや唐突ですが、『だれも起こさないでほしい』という表現は、実感としてわかる気がしました」
ないとう「このコンクールに、論文という新たなジャンルを作ってくれました。2つの庭が『内側に閉ざされた世界』と『外側に開かれている世界』であることなど、論理づけに感心しました。段落を使って論理づけをきわめていけば、すごい書き手になりそうです」


SAYUMIさん(小6)
読んだ本――『カレジの決断』 アイビーン・ワイマン作 瓜生知寿子訳 偕成社
カレジの決断
カレジの決断

越前「マララさんのわかりやすい話を導入に持ってくるのがすごい。構成も論旨も段落分けも完璧。もとの本を読みたくなるという意味でも最高。本のあとがきになりそうな文章です」
ないとう「本の紹介のしかたが上手ですね。大事なところをくみとって、あらすじに書いています。ジェイソンに心をよせて読んだことがわかります。ジェイソンがカレジの背中を押したという考察もいいですね。作者がこの本にこめた『相反する2つの想い』をくみとる咀嚼力もすばらしいです」
宮坂「あらすじが上手で、まるでひとつの物語を読んだような印象を受けました。作者が読者に何を言いたかったのかということをよく考えています。自分の思いをこめたラストの1文もすごくいいですね」

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【総評】

越前「またまた、今年もすばらしい作文をたくさん読ませてくれてありがとう。今回おしくも受賞できなかった作品のなかにも、すぐれたものが数多くありました。今年はじめてのことですが、将来この人は作家になれるのではないか、評論家になれるのではないか、翻訳家になれるのではないかと感じた人がいました。ぜひ、はば広い読書と、それをしっかり表現することをつづけて、夢を実現してください。来年もみなさんのおうぼを楽しみにしています」

ないとう「毎年、どの作品にもおおいに感銘を受けながら楽しく審査をするのですが、今年はとりわけレベルが高く、賞からもれた作品のなかにも、読みながらじーん としたものや、楽しくて笑ってしまったもの、ほーっと感心させられたものがいくつもありました。ですから、賞をとれなかったり、あるいは1次選考を通らなかったりしても、けっしてがっかりしないでください。
 最優秀賞を受賞した3作品をはじめとして、今年も、感想文、つづきのお話、絵入りの作文、評論などさまざまな形の作品が集まりました。また、わたし自身も、この審査をきっかけとして再読したり、あるいは初めて読んだりして感動した本がたくさんあります。これからもどうか、楽しい本をたくさん読んで、そのすばらしさをわたしたちに教えてください!」

宮坂「今年も読書探偵のみなさんにおもしろい本をたくさん教えていただきました。教え方はそれぞれで、絵をつけてくれた方もいましたし、読んだ本をもとに新たなお話を考えてくれた方、複数の本を比べて、同じところや違うところをまとめてくれた方もいました。どんな形でも、本を楽しみ、そこから何かを得たことが伝わってくる作文は、読む私たちにも喜びや学びを与えてくれます。おうぼしてくれたみなさん、本当にありがとう。来年はどんな作品が集まるか、今からとても楽しみです」

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 今年もバラエティに富んだすばらしい作品をお寄せくださったみなさん、ありがとうございました。
 読書探偵作文コンクール事務局では、来年もまたコンクールを開催する予定です。5年生以下のみなさんには、来年も応募していただけるとうれしいです。
 こちらのサイトでは、今後、今年のコンクールで読まれた本や、ニャーロウとなかまたちのおすすめ本などもご紹介していきますので、これから読む本をえらぶ際に、ぜひ参考にしてください。