2014年11月02日

読書探偵作文コンクール2014 最終選考会レポート&総評

 今年の最終選考会のもようをお伝えします。

 まずは第1次選考を通過した13作品を、低学年から順に1作品ずつ、最終選考委員全員で検討していきました。今年は同じ本やシリーズを読んで書かれた作品もありましたが、作文自体はバラエティに富み、それぞれ工夫のこらされたタイプのちがう作品だったので、「全部の作品に賞をあげたい」と選考委員の方がおっしゃるほど、受賞作を選ぶのは難航しました。
 そんな接戦の選考を通過して、見事受賞された7作品については、これから順次、こちらのサイトで全文を掲載させていただく予定です。

 最終選考にのこった13作品それぞれについて、選考委員3名からの感想やアドバイスを紹介します。

石田葵さん(小1)
読んだ本――『きょうはみんなでクマがりだ』 マイケル・ローゼン作 ヘレン・オクセンバリー絵 山口文生訳 評論社
きょうはみんなでクマがりだ (児童図書館・絵本の部屋)
きょうはみんなでクマがりだ

宮坂「もとの本をうまくアレンジしていますね。出だしに少し分かりにくさがありましたが、リズムがそろっていて、読んでいて楽しかったです」
越前「韻をふんでいて、絶妙のタイミングで擬声語や擬態語が入り、最後まで楽しく読めました。もとの本を読みたくなる、いい作文ですね」
ないとう「クマさんと友だちになるという急展開がおもしろいです。本の見返しのさびしいクマの後ろ姿が気になったのかな。もとの本をよく読みこんでいるのだろうな、と感じました」


田中思帆さん(小1) 
読んだ本――『ゆきのふるよる』 ニック・バトワース作 はやしまみ訳 金の星社
ゆきのふるよる (世界の絵本ライブラリー)
ゆきのふるよる

ないとう「物語の世界に入りこんだことがよくわかる作文です。読みながらニコニコしてしまいました」
宮坂「楽しい作文でした。わたしだったらどこで動物たちに寝てもらおうか、と考えたところがいいですね」
越前「本の雰囲気をよくとらえた、あたたかい感じのする作文。最後、自分にひきつけた話の締め方がうまいですね」


鈴木たからさん(小3)
読んだ本――『シャーロック=ホームズ全集(1)緋色の研究』 コナン・ドイル作 各務三郎訳 偕成社
緋色の研究 シャーロック=ホームズ全集 (1)
緋色の研究 シャーロック=ホームズ全集 (1)

ないとう「文章のあちこちから、翻訳書を読みこみ、言葉が血肉になっている感じが伝わってきました。ぜひシリーズ全巻を読破して、どんどん文章を書いてほしいです」
宮坂「シャーロック・ホームズへの愛があふれていて、立派なシャーロキアンですね。大好きなせりふや作者へのメッセージが書かれていたところもよかったです。将来本当にミステリー作家になるのでは、と思わせてくれる作文でした」
越前「『緋色の研究』の内容について一言も書かれていないけれど、それでもいいかと思わせる、作者と探偵への思いが一直線に書かれている作文。あらすじをまとめた作文とは対極にあり、印象に残りました。翻訳ミステリーの世界へようこそ!」


原口徠未さん(小3)
読んだ本――『ただいま! マラング村:タンザニアの男の子の話』 ハンナ・ショット作 佐々木田鶴子訳 徳間書店
ただいま! マラング村: タンザニアの男の子のお話 (児童書)
ただいま! マラング村: タンザニアの男の子のお話

越前「印象的なせりふから入る、導入部分がうまいですね。あらすじのまとめ方と感想の入れ方のバランスもいい。最後に自分とツソを比べてどう感じたのかが一言あるとよかったかな」
ないとう「物語に寄り添って読んでいることが伝わってきました。最後のQ&Aに自分も答えてみるという発想が、すごくいいです。読んでいて気持ちのいい作文でした」
宮坂「文章が上手で、冒頭からひきつけられました。この本を読んでタンザニアの現状を知ったとのこと、翻訳書を読むことで海外に目を開かれるというのはすばらしいですね」


森井亜希さん(小3)
読んだ本――『ジュディ・モードはごきげんななめ』 メーガン・マクドナルド作 宮坂宏美訳 小峰書店
ジュディ・モードはごきげんななめ (ジュディ・モードとなかまたち)
ジュディ・モードはごきげんななめ

宮坂「トイレのいたずらのシーンでこんなにいろいろ想像してくれたなんて、訳者としてうれしいです。楽しんで読んだことが伝わってきました。絵がとにかく上手ですね。吹き出しに書かれた予想、当たっていると思いました」
越前「短いけれどもとの本を読みたくなる作文でした。シリーズへの愛が伝わってきます。絵をカラーにしたり、吹き出しを自分でデザインしたりしているのもいいですね」
ないとう「作文で取り上げているエピソードはひとつだけですが、きっととても印象に残ったのでしょう。いたずらに対してはらはらする気持ちが伝わってきました。絵がいいですね」


内山満里菜さん(小4)
読んだ本――『アッホ夫婦』 ロアルド・ダール作 柳瀬尚紀訳 評論社
アッホ夫婦 (ロアルド・ダールコレクション 9)
アッホ夫婦

ないとう「よく読みこんでいますね。ダールのえぐさ、悪夢っぽさを感じて、それをおもしろがって、読み終えたときにほっとした、その感じが伝わってきました。短いけれどよくまとまっています」
宮坂「本を読み、作者に興味をもって、さらに伝記も読むという発展がすばらしい。ダールの本をきちんと批評できているところにも、頼もしさを感じました」
越前「本をきっかけに、その作者について調べる意欲に感心しました。興味のあることなら、少々難しくてもどんどん読んでいける、そのプロセスが作文に現れていて、読書の理想形だと思いました」


きたパタさん(小4) 
読んだ本――「ハリー・ポッター」シリーズ J・K・ローリング作 松岡佑子訳 静山社

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)
ハリー・ポッターと賢者の石

宮坂「スネイプへの愛情がいいですね。スネイプの説明もよく書けています。シリーズを読み通して、悪者が悪者ではないことにびっくりしたことが伝わってきました」
越前「悪役とされていた人物の正体がわかる、そこに焦点を当てたのはすごいことだと思います。もとの本を読みたくなるけれど、ネタバレにもなっていて、複雑な気持ちです。これからも壮大な物語を読んでいってもらいたい」
ないとう「タイトルを見てニマニマしてしまいました。ずっと悪者だと思っていた人物への驚きが、作文全体から伝わってきました。ハリーでもハーマイオニーでもロンでもなく、スネイプに焦点を当てたのがすばらしい」


杉浦伶奈さん(小4)
読んだ本――『ウエズレーの国』 ポール・フライシュマン作 ケビン・ホークス絵 千葉茂樹訳 あすなろ書房
ウエズレーの国
ウエズレーの国

越前「最初、もとの本のことはどこにいっちゃったのだろうと思っていたら、あとがきがついていて驚きました。期待感をあおる構成です。創作については、キャラクターがしっかりしていて、よく書けていました。なにもないところから、ここまでのものを生み出したのはすばらしい。荒削りな部分もありましたが、磨けば光りそうです」
ないとう「もとの本を下敷きにしながら、細かい設定まできちんと考えたうえで、物語にしているところがいいですね。想像力の豊かさが伝わってきました。昨年からの成長ぶりもすばらしい」
宮坂「創作、作文、そして図まで、力作ですね。1冊の絵本から、ここまで想像をふくらませるなんてすごい。こちらも想像をかきたてられる物語でした。文章としては読みにくいところもありましたが、創作力がすばらしいです」


ひびきさん(小4)
読んだ本――『つきのぼうや』 イブ・スパング・オルセン作 やまのうちきよこ訳 福音館書店
つきのぼうや (世界傑作絵本シリーズ・デンマークの絵本)
つきのぼうや

越前「もとの本への興味をかきたてられました。月の話なのに太陽が出ているなど、楽しいですね。もう少したくさん作ってほしかったです」
ないとう「カルタという形を思いついたことがすばらしいです。だ、ま、あ、を選んだのはどうしてでしょう? あ行がそろっていてもよかったかな」
宮坂「カルタを作るという発想は、ユニークで楽しいですね。読み札と絵が、もとの本の内容紹介にもなっていました。感想があるともっとおもしろかったかも」


遠藤ゆみかさん(小6)
読んだ本――『赤毛のアン』 モンゴメリ作 村岡花子訳 ポプラ社
赤毛のアン―シリーズ・赤毛のアン〈1〉 (ポプラポケット文庫)
赤毛のアン

ないとう「現代短歌になっているところが新鮮で、すばらしいです。特に最後の歌には本当に感心しました」
宮坂「本のなかで印象に残ったことが伝わってくる短歌です。『石板のかけら』が『思い出の数』になるところなど、詩的ですね」
越前「情景、特に色が目に焼きつくような短歌で、完璧です。視覚的効果をねらったかのようなすばらしさ。アンを読みたくなる歌でした」


菊池柚子さん(小6)
読んだ本――『赤毛のアン』 モンゴメリ作 村岡花子訳 講談社
赤毛のアン (新装版) (講談社青い鳥文庫)
赤毛のアン

宮坂「作文にあった大河原町はわたしのふるさとでもあるので、菊池さんの気持ちがよくわかりました。体言止めを効果的に使っていて、文章のリズムもいいですね。ぜひシリーズを全巻読破してもらいたいです」
越前「バランスよくまとまっているだけでなく、そこに情熱と愛情がこもっていることがすばらしい。アンも読みたくなるし、大河原町にも行ってみたくなる作文でした」
ないとう「ストーリーには踏み込んでいないものの、アンがどういう子かよく伝わってきました。一目千本桜に代わる名前の案を考えてほしかったな。むだなつなぎの言葉がなくて、文章のうまさに感心しました」


杉内雅奈さん(小6)
読んだ本――『ハリー・ポッターと死の秘宝』 J・K・ローリング作 松岡佑子訳 静山社
「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)
ハリー・ポッターと死の秘宝

越前「言葉が豊かで、文章のルールもしっかり守っている、本格的な創作ですね。過去形と現在形を使い分けて、うまく臨場感を出しています。普段からたくさん本を読んでいるのでしょう」
ないとう「自分のなかで蓄積されたハリーやハーマイオニーなどのキャラクターが投影されています。会話が生き生きしていて、文章のうまさに目をひかれました」
宮坂「おもしろい作品を読むと、続きを考えたくなりますね。楽しく書いたことが伝わってきました。最後は、え? それから? というところで終わってしまうので、先が気になりました」


匿名希望さん(小6)
読んだ本――『マザー・グースのうた』 堀内誠一絵 谷川俊太郎訳 草思社
マザー・グースのうた 第1集 おとこのこってなんでできてる おんなのこってなんでできてる
マザー・グースのうた 第1集

ないとう「祖母から母へ、母から娘へと本が受け継がれていくなんて、すてきですね。ナンセンスな世界を、借りてきた言葉で説明するのではなく、自分の心の動きをていねいに追って書いているところがすばらしいです」
宮坂「楽しんで読んだことがよくわかり、マザー・グースを知らない人にも魅力が伝わる作文です。読んだきっかけから、本の説明まで、過不足なく書かれていて、文章が上手だと思いました」
越前「全体的にあたたかい感じがしました。正攻法でがちっと書かれた作文で、とても分かりやすい。マザー・グースには毒や笑いもあるので、もう少しはじけたところがあってもよかったかな」

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【総評】

越前「今年もまた、翻訳書のおもしろさをさまざまな形でつたえてくれる数々の作文に出会えて、うれしく思いました。中には、ああ、この人はまちがいなくたくさん本を読んでいるな、翻訳書もいっぱい読んでいるな、とひと目でわかるような、豊かな表現がちりばめられた作文もいくつかありました。自分たちが訳した外国の本が、みなさんの血となり、肉となり、そして心となっていく過程を見ることができるのは、翻訳の仕事をしている者として、何よりうれしいことです。また来年もぜひおうぼしてください」

ないとう「今年もまた作文や、創作や、絵や、かるた、短歌、翻訳などなど、たくさんの作品を送ってくださってありがとうございました。心から楽しんで読ませていただきました。ひとつ強く感じるのは、どんな形の作品であれ、「この本が好き! おもしろさを伝えたい!」という強い思いが土台になっているものには、やはり自然に人の心を打つ力があるということです。だから今年出会った本を入り口に、またみなさんどんどんおもしろい本をさがしあてて、楽しく読書してくださいね。来年、またそのなかからよりすぐりの1冊のことを、いろんな形で教えてくれたらとってもうれしいです!」

宮坂「3つの最優秀賞のうちの2つが『赤毛のアン』について書かれたものになりましたが、もちろん、朝ドラの『花子とアン』が人気だったから……ではなくて、どちらもそれぞれにすばらしい内容だったからです。『ウエズレーの国』について書かれた、もうひとつの最優秀賞作品も、これまた選考委員をうならせる力作でした。その他の入選作、そして選外となった作品も、本のおもしろさが伝わってくるものばかりで、読んでいてほんとうに楽しかったです。これからもぜひ本に親しんで、自分の世界を広げていってもらえたらと思います」


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 (左から、宮坂さん、越前さん、ないとうさん)
 最終選考委員の方々、どうもありがとうございました。

 作文を書いてくださったみなさん、ありがとうございました! 今年もすばらしい作品がたくさん集まり、充実したコンクールとなりました。これからも、すばらしい本と出会ったときには、ぜひ作文を書いてみてください。5年生以下のみなさんには、来年も応募していただけたらうれしいです。こちらのサイトでもニャーロウとなかまたちが、これからもおすすめの本を紹介していきますので、参考にしてください。