2013年06月28日

2011年「秋の読書探偵」作文コンクール最優秀賞作品


●小平采果さん(小3・神奈川県)
「ファーブル昆虫記」
 お読みになった本 『ファーブル昆虫記』(アンリ・ファーブル作/舟崎克彦訳/集英社)

●夏羽さん(小6・宮崎県)
「〜Sparkling Cyanide〜」
 お読みになった本 『忘られぬ死』(アガサ・クリスティー作/中村能三訳/早川書房)

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小平 采果

 わたしは夏休みに、『ファーブル昆虫記』を読みました。読みおわって、わたしは、ファーブルさんにお手紙を書きたくなりました。わたしもカブトムシをかっていたからです。わたしは、お友だちにもお手紙を書きたくなりました。その理由は、わたしの学校にも、虫が大きらいな人がいっぱいいるからです。二つの手紙を読んで下さい。


天国のファーブルさんへ

小平 采果

 わたしは、今年の八月まで、カブトムシをかっていました。そのカブトムシに不思ぎなことがおきたので、ファーブルさんにお手紙を書いています。
 わたしは、カブトムシをとう明のプラスチックのケースに入れてかっていました。ケースの中には、クヌギの土を入れてあります。その上には、ちぎってまるめた新聞紙をおいてあります。すみの方にはアルミホイルをおき、その上に、モモの切り身やみつをおいてあります。カブトムシはとても食いしんぼうでした。モモをたくさん食べ、みつをたっぷりとなめていました。食べるとき以外は、とてもしずかにくらしていました。
 ある日、地しんがおきました。カブトムシのケースが、グラグラとゆれました。カブトムシはケースの真ん中にいました。ケースがゆれると、右にうごき、左にうごき、さらに上に行き、おりて来て、また右に行き、つめでキーッ、キーッとプラスチックのケースをひっかいていました。
 その日から、カブトムシは、わたしがせなかを少しつついただけで、あわただしくうごきまわるようになりました。これまでしずかだったのに、きゅうにあわだたしくうごき始めたのはなんでだろうと思いました。そして、一週間後しんでしまいました。かわいそうでした。
 ファーブルさん、カブトムシは地しんがとてもこわかったのだと思います。日本ではよく地しんがおきます。地しんがおきた時にはどうすればよいでしょうか。どうやって、カブトムシを守ってあげればいいでしょうか。教えて下さい。


虫のきらいなお友だちへ

小平 采果

 虫のきらいなお友だちに虫がすきになる本をしょうかいします。それは『ファーブル昆虫記』です。箱を開けると色んな虫がとび出します。わたしのすきな四ひきの虫のしょうかいをします。
 一ぴき目の虫はサムライアリです。ファーブルがサムライアリにちょっかいを出します。新聞紙をかぶせたり、においのつよいハッカをおいたり、水をまいたりします。でもサムライアリは自分たちのにおいを見つけて自分のすにもどる事が出来るのです。
 二ひき目の虫は、カニグモのお母さんです。カニグモのお母さんは、自分のたまごを守るために、一ヶ月い上もえさを食べずにたまごの近くで見守ります。
 三びき目の虫はセミです。セミは、ないている時そばで大ほうを二回ほどうってもびくともしません。ただ、ジージーとないているばかりです。私はその様子をそうぞうするとおかしくてたまりません。
 四ひき目の虫は、タマオシコガネです。タマオシコガネはフンコロガシともよばれています。エジプト人は「スカラベ」神様の虫とよんでいます。わたしは、なぜエジプト人がかみ様の虫とよぶのか不思ぎでした。エジプト人にとっては、タマオシコガネは太ようをころがしているように見えるそうです。くさい動物のふんをどうして太ようとと言えるのか不思ぎでたまりません。
 こんなふうに、『ファーブル昆虫記』はおもしろい虫がいっぱい入ったびっくり箱です。虫のきらいなお友だちもきっとこの本を読んだら虫がすきになると思いますよ。

2011最優秀.jpg


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〜Sparkling Cyanide〜

夏羽

「アガサ・クリスティー」この名前を聞いて、ほとんどの人は名探偵ポアロやミス・マープルを想像するだろう。ポアロはユニークかつ聡明な人物である。彼はイスに座りご自慢の灰色の脳細胞を働かせ実に鮮やかに事件の謎を解いていくのである。これぞ探偵小説!!なのである。しかしこのあまりにも有名なアガサの作品の中に「ノン・シリーズ」というのがあるのをご存知だろうか。これは、全くの素人があらゆることに興味を持ち事件の謎を解いていくという物だ。もちろんポアロやマープルといった一流の名探偵は出てこない。しかしこの素人探偵がでてくるシリーズにはポアロ達には決してない独特の良さがある。それはイスに座りじっと考え謎を解いていくポアロ達とは対照的に「ノン・シリーズ」にでてくる若者は考えずに直感で行動しそれらを解決していく。それは実に心地が良くそう快である。その「ノン・シリーズ」の中でも私は「忘られぬ死」という作品が今は一番のお気に入りである。
 この作品は、美女ローズマリーが自分の誕生パーティで自ら毒を飲んでこの世を去ってしまう。その一年後に彼女を思い出し回想する六人の男女の間で再び事件が起こるという話である。私はこの作品の中に出てくるローズマリーという女性が、特別好きだ。完ぺきな美人である。彼女の生活はだれが見ても豪華絢爛・豪遊三昧なのだ。しかし、実際の彼女はちがう。表面では見せない弱さがある。自信に満ちあふれているようで実際はこれで良いのかと思い悩み、人に頼らずにはいられない人間なのだ。アガサの描く人物には“リアリティー”がある。誰しも人の心に潜む闇、言いかえれば人間らしさを小説の中の人物に置きかえて実に巧みに表現し、共感させる。容易にできることではない。しかし彼女はそれをいともたやすく自然に文章の中に組みこんでいく。ある人物の書評に「アガサは上手すぎる故に気づかれないのだ」とあったがその通りだと思う。
 この本の中では人間関係がとても複雑だ。しかしこの込み入った関係が実におもしろいのだ。読み進めていく度にその絡まった糸が一つ一つほどけていくのが私にはたまらない快感なのである。また次第にその中の世界に引きずりこまれ、失礼ではあるがあたかも自分がローズマリーであるかのように思えてくる。
 愛にはいろいろな形がある…どれもまちがいではないのだろう。
 この小説の結末は私にとっても「忘られぬ」ものとなるのだ。
 ローズマリーという人間がいかに多くの人の記憶に残る人物であったか、彼女という人間がいかに大切であったか、彼女にかくされた裏の真実の部分を彼女の死後、皆が理解することとなるのである。
 私にはクリスティーがこの本を何故「忘られぬ死」とつけたか分かる気がする。文の結末、
「彼女はもうここにはいないね。」
この何気ない一言は実はとても深く重いのだ。どれだけ大切であったか分からない彼女の死を受け入れ、その思いに区切りをつけるのだ。この一言に尽きるのだ。
 最高潮の盛り上がりを見せていたところから一気に最後、静寂がおとずれる。しかしこの動・静の描写が実にうまくこの本の最大の魅力である。心の底から熱いものが込み上げてくる。
「アガサ・クリスティー」…彼女はそうミステリーの女王なのである。トリックはもちろんのこと心理描写、人の心の変化を描く天才だ。彼女の作品はなるほど、そうだったのかと思えるところがよくある。しかしそれが彼女のうまさでありごく自然にその世界に引きこまれていき、その巧みなトリックに気がつけないのだ。
 この作品の好所は私自身どっぷりした恋愛小説が苦手なのだがこれはある意味恋愛小説でありながらとてもさわやかで心地がよいのである。クリスティーの作品の中に恋愛ものの小説があることを知った。まだ読んではいないが、この「忘られぬ死」を感じそれがどんなに素晴らしい作品であるか想像にかたくない。ぜひ読んでおきたい一冊だ。「春にして君を離れ」…またちがったアガサ・クリスティーに出会えるのを期待している。

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なお、この年のコンクールでは「中高生の部」があり、黒田國裕さん(中1)が最優秀賞に選ばれました。
お読みになった本は『オリエント急行殺人事件』(アガサ・クリスティー作/安藤由紀・各務三郎訳/岩崎書店)です。